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Hotel for the Birds, by Thomas Schütte

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9/14、9/15と、スマートグリッド関連セミナーに参加してきました。

9/14のセミナーは分散型発電新聞社主催。東急大岡山駅前に最近できた東京工業大学 蔵前会館で行われたものです。タイトルは『スマートグリッドとは何か(デマンドサイド・サービス)』で、プログラムは以下のとおり:

① 「SAPにおけるスマートグリッドへの取り組み ~SAPのAMIソリューションと海外事例~」講師:SAPジャパン 松尾康男 公益産業担当部長

② 「スマートエネルギーネットワーク -廃熱有効活用の観点からー」講師:エネルギーアドバンス 渡辺健一郎 常務取締役

③ 「スマートグリッドをめぐる最新の動向について」講師:学習院大学 桑原鉄也 特別客員教授

④ 「スマートグリッドと排出権・環境価値の関係」講師:スマートエナジー 大串卓矢 代表取締役

⑤ パネルディスカッション 司会:ユニバーサルエネルギー研究所 金田武司 代表取締役社長

スマートグリッド「関連」のセミナーには違いはないのですが、①は、SAP社のMDM(メータデータ管理=スマートメータリング)製品、②は、東京ガスの子会社であるエネルギーアドバンス社のオンサイトエネルギーサービス/地域エネルギーサービス(=熱供給サービス)、④は排出権取引の紹介でした。

良く言えば、「少し遠くからスマートグリッドとは何か、その意義を含めて考えて見ましょう」ということかも知れませんが、悪く言うと、隔靴掻痒。セミナー副タイトルである:デマンドサイド・サービスという観点から見ても、少々ピントのぼけたセミナー構成であった気がします。

パネルディスカッションも、事前打ち合わせなしということで、司会の金田氏としては、「日本でのスマートグリッドのあり方と、将来展望」という形で、講演者から一定の方向性の結論を導き出そうとされていましたが、講演者のバックグラウンドに広がりがありすぎて、必ずしも総意形成にはいたらなかった感があります。大型ウィンドファームやメガソーラーではなく、一般家庭への太陽光発電大量導入に如何に対応するかが日本版スマートグリッドではないかという一応の結論に対して、「太陽光発電が増えるから仕方なくスマートグリッドということでもないでしょう」というフロアからのツッコミもあり、セミナー受講感想としては残念ながら「やや不満」レベル。

最近スマートグリッド関連のセミナーは数多くあるので、分散型発電新聞社が主催する限りは、「スマートグリッドにおける分散型発電の位置づけと、今後の展望、日本での展開」といった、主催者の思い入れがまずあって、それにフィットする講演者からセミナーを構成していただければよかったのではないかと思います。

9/15のセミナーは、NEDO主催の『スマートグリッドワークショップ2009 in JAPAN』。場所は、東京ビッグサイト会議棟レセプションホールA&Bぶち抜きの大会場で、非常に大規模のセミナーでした。プログラムは下記のとおり:

<第一部 スマートグリッドの現状と課題>
1-1) 「スマートグリッドとは ―その目的とシステム概念―」 講師:東京大学大学院 横山明彦 新領域創成科学研究科教授
1-2) 「日本の送配電網の現状と将来」講師: 電力中央研究所 栗原郁夫 システム技術研究所長
1-3) 「我が国における これまでの取り組み」講師:NEDO 市村知也 新エネルギー技術開発部長

<第二部 スマートグリッドを巡る国際標準化について>
2-1) 「国際的な動向」講師:九州大学 合田忠弘 システム情報科学研究院 教授
2-2) 「日本における国際標準化に向けた取り組み」講師:経産省 中西宏典 産業技術環境局基準認証政策課長

<第三部 スマートグリッド日米共同プロジェクト>
3-1)「挨拶」 米国ニューメキシコ州 Danielle Duran 経済開発局国際貿易室部長
3-2) 「NM州グリーングリッドイニシアチブの紹介」講師:米国ニューメキシコ州 Thomas J. Bowles 知事科学補佐官
3-3) 「NM州におけるNEDO実証プロジェクトの紹介」講師:NEDO新エネルギー技術開発部 諸住哲 主任研究員
 

こちらのセミナーは、開催趣旨がはっきりしていて、以下の3点です。
1) スマートグリッドをめぐるこうした最新の動きも踏まえ、その現状と課題、国際標準化を巡る動向及び我が国としての取組の方向、将来展望等について意見交換する
2) 平成21年度より開始予定の米国ニューメキシコ州グリーングリッドイニシアチブと連携した、「日米スマートグリッド実証プロジェクト」の基本計画(案)について、企業、大学、研究機関等から幅広く意見をもとめ、プロジェクトの目標、実施内容等を明確にし、基本計画に反映する
3) ニューメキシコ州政府関係者より、ニューメキシコ州グリーングリッドイニシアチブの全体計画に関して説明する で、10月以降公募が開始される、ニューメキシコ州のグリーングリッドイニシアチブとのジョイント実証実験/全体取りまとめ研究の提案書を作るに当たって、意識のすり合わせを行い、提案書でカバーすべきポイントを説明しておこうということのようでした。

日本では、電力業界からスマートグリッド不要論が出たりしていますが、第一部では、欧米のスマートグリッドと比べて日本では何ができていて何ができていないのかが、冷静にレビューされ、日本型スマートグリッド構築に向けての提言が行われています。

第二部では、スマートグリッドに関連した国際標準化動向として、IECおよびNISTの動きが紹介され、次世代グリッドのプロトコルが、PHSのような第2のガラパゴス化の道をたどらず、グリッド関連製品を製造する国内企業が、日本だけでなく世界市場でビジネス展開できるためにも、積極的に国際標準化に取り組むべきだとしています。

第三部のために、今回ニューメキシコ州からかなりの人数の州政府・研究所関連者が来日しており、米国としても、NEDO(日本)のグリーングリッドイニシアチブへの参加に大いに期待している様子が覗えました。NEDOが、日本の予算でスマートグリッドに関する実証実験を行うのに、なぜ日本国内の場所を選ばなかったのかですが、日本の法規制では安全対策上認められていないような大型蓄電池を一般家庭に設置できることだとか、高速PLCの屋外使用が可能ということもあり、需給マッチングや、通信手段として、日本より自由度が高いということもあったようです。この際、総務省とも連係して、日本の最高水準の高速PLC技術を通信手段のベースとして、電波障害の計測を行い、日本での屋外高速PLC解禁の一助になれば、一挙両得ではないかと感じました。

無料セミナーながら、大いに満足のいくセミナーでした。さすがNEDO。