GTM Research 同タイトルのレポートより

出典:GTMリサーチ社HP

先月、スマートグリッドに関してネットサーフィン中に、偶然、掲題のレポートを見つけました。一目で、これは熟読するに値するレポートで、自分のスマートグリッドの知識を整理する上でも非常に重要だと思ったのですが、何分、英文145ページのレポートなので、内容を読みこなすには、時間と労力が必要です。

このレポートに注目されている方は、たくさんいて、
● WIREDVISIONの坂和敏さん:米スマートグリッド市場の概況と主要プレーヤーがわかる『The Smart Grid in 2010』というタイトルで、GTMリサーチのレポートの概要を紹介
makeEMSブログのTakuya Itohさん:このGTMリサーチのレポート2章の内容を詳しく紹介
福井エドワード著、『スマートグリッド入門 次世代エネルギービジネス』アスキー新書:このレポートで用いられている図を利用してスマートグリッドのレイヤ構造を説明
●Alternativeブログの林雅之さん:今後10年間のスマートグリッドビジネスの展望部分を紹介

等があります。

すでにご覧になった方も多いと思いますが、まずは、レポートの構成について、その概要ご紹介しておきます。

レポートのタイトル:The Smart Grid in 2010: Market Segments, Applications and Industry Players

発行元:Greentech Media company (http://www.greentechmedia.com/)

著者紹介:ABOUT THE AUTHORで著者のDavid J. Leedsの経歴紹介があり、

要旨:EXECUTIVE SUMMARYで本レポートの概要を紹介、

主要な調査結果:KEY FINDINGSで本レポートの主要な調査結果が順不同で26ポイントにまとめられています。

1章 スマートグリッドの分類:TAXONOMY OF A SMARTER GRIDでは、本レポートの最大の成果の1つと思われるスマートグリッドの分類図が示され、その見方(『スマートグリッド入門』でカバーされている)と、スマートグリッド市場をドライブするもの(1.2節:増大するエネルギー需要、エネルギー自給と安全保障、温室効果ガス排出削減、経済成長、政策と規制、技術の進歩、グリッド最適化による効率改善、再生可能エネルギー、分散電源およびエネルギー・ストレージの増加、最新の消費者サービス、インフラの信頼性とセキュリティ、21世紀の電力品質)、スマートグリッドの課題(1.3節:相互運用性標準、旧式化しないシステム・アーキテクチャ、電力会社のビジネスモデルとインセンティブの再定義、大量の再生可能・分散電源のインテグレーション 、消費者のスマートグリッド・サービスの採用)がまとめられています。

2章 スマートグリッドのアプリケーションと技術:SMART GRID APPLICATIONS AND TECHNOLOGIES詳細はmakeEMSブログ参照)ではAMIの紹介(2.1節)、デマンドレスポンスとデマンドサイドマネジメント(2.2節)、グリッド最適化と配電自動化(2.3節)、再生可能エネルギーと分散電源のインテグレーション(2.4節)、エネルギー・ストレージ(2.5節)、PHEVのスマートチャージとV2G(2.6節)、先進ユーティリティ制御システム(2.7節)、スマートホームとHAN(2.8節)まで、懇切丁寧に紹介されています。

3章 スマートグリッドAMI導入事例:SMART GRID AMI DEPLOYMENTSでは、北米15のAMI導入サイトに関して、導入しているユーティリティ名、場所、導入を計画しているスマートメーター数、設置済みスマートメーター数、パイロットテストか本番運用かの区別、州公益事業委員会の認可済みか否か、導入発表した年、導入完了予定の年、採用されているスマートメーターのメーカー名、採用されているネットワークソリューション提供ベンダー名、備考の11項目の欄を持つコンパクトな表にまとめられています。

4章 ベンチャーキャピタルによる2005-2009年のスマートグリッドへの投資:VENTURE CAPITAL INVESTMENTS IN SMART GRID: 2005–2009では、2008-2009年に起こったスマートグリッド関連M&A(4.1節)、2008年のスマートグリッド関連VC投資(4.2節)、2009年1Qのスマートグリッド関連VC投資(4.3節)、2009年2Qのスマートグリッド関連VC投資(4.4節)が記載されています。

5章 セクタごとの会社概要紹介:COMPANY PROFILES BY SECTORでは、AMI(Advanced Metering and Networking/Communications)関連の会社(5.1節)、AMI(Networking/Communications)関連の会社(5.2節)、デマンドレスポンス・ソリューションを提供する会社(5.3節)、グリッド最適化/配電自動化ソリューション提供会社(5.4節)、その他スマートグリッド関連ソリューション提供会社(5.5節)、HANおよびEMS関連ソリューション提供会社(5.6節)、その他主要プレーヤー(5.7節)、その他の業界のスマートグリッド関連プレーヤー(5.8節)が紹介されています。

今回、要旨の部分を翻訳してみましたので、以下に掲載させていただきます。

要旨

電力業界は、今大きな潮の変わり目にさしかかっている。出力変動が激しく分散電源として系統接続されることの多い再生可能エネルギー資源の増加が顕著になってきたこと。一般・業務用・産業用電力需要への効率的で新たな対応が必要になっていること。このような変化に対応すべく、その基礎となる電力網のインフラは壮大なスケールでの変貌を余儀なくされている。これまで、送配電ビジネスは、比較的に変化の少ない部門だった。ところが、今、エネルギー、通信および情報技術(IT)市場の合流点で、スマートグリッドと呼ばれる21世紀のインテリジェント・ユーティリティ・ネットワーク実現に必要な変化とイノベーションが求められているのである。

スマートグリッド市場には、多くの「ゆらぎ」がある。
-大小取り混ぜて多くのベンダーが、物理的な電力インフラのレイヤ、通信レイヤから、アプリケーションとサービスのレイヤまで、ソフト・ハード・ソリューションを提供している。
-これまでにも無数の技術が開発・評価され、展開されてきた。
-システム/ネットワーク・レベルで、競合/補完する標準が定義されてきた。
-電力供給者も、それぞれ異なったシステム・アーキテクチャを企画・採用してきた。
-政府の政策も、連邦政府と州政府でまちまちだった。
-公共/民間投資は、これらの問題の大きさに相応するスケールでイノベーションをドライブしてきた。
-にもかかわらず、消費者がエネルギーサービスの新しい波に乗るかどうかまったく未知である。
-「スマートグリッドとは何か」という、本来シンプルであるべき定義に一貫性がなく、しばしば議論の対象となってきた。

一言で言えば、スマートグリッドは、何か膨大でとらえどころがなく、人を混乱に陥れるものだった。

このレポートでは、結局スマートグリッドとは何なのか、新たなインフラを構築し、最終的にその上にどのようなアプリケーションが展開されていくのかを明らかにしていく。
その道具として、スマートグリッド市場を分類する図を用い、以下の手順でスマートグリッドの全貌を紹介したい。
-スマートグリッド市場のドライバーは誰か、利点と課題は何かを説明し、
-分類した多くの市場セグメントと技術を順に概観し、
-現在および将来のスマートグリッド・アプリケーションを、この図上にプロットし、
-現在までに北米で展開されている大規模なスマートグリッドの展開例を見、
-2005年から2009年までのベンチャーキャピタルの投資先を詳らかにし、
-スマートグリッドのサプライ・チェインに属する大小さまざまな主要ベンダーの製品とサービスを紹介する

GTMリサーチ社は、このレポートを編纂するに当たって50以上のベンダー、ユーティリティ、業界組織、研究開発機関および業界専門家へのインタビューを実施した。このように多くのインタビューを行ったのは、スマートグリッド市場全般をバランスよく見渡し、産声を上げたばかりのスマートグリッドの隅々まで、問題解決に日夜努力している広範な業界専門家からの情報を元に独自の分析を行いたかったからに他ならない。

電力業界のような巨大で確立された市場が大規模で広範なスケールの変化に直面する時、途方もない課題と同時に大きなビジネス機会が訪れる。そこで、スマートグリッド実現に必要な技術革新への融資話から新たなインフラの展開や究極の顧客需要の仕組みまで、この変革のタイミングにあわせて、膨大なオプションの嵐が、今、スマートグリッドの周りに吹き荒れている。そういう状況にはあるが、また、業界のスマートグリッド信奉者が“来るべき電力業界の万能薬”を喧伝してはいるが、スマートグリッドが一朝一夕に出来上がるはずもない。現実的には、非常に長い道のりを秩序立てて一歩一歩進めていく必要がある。

スマートグリッドの究極のビジョンと最終目標を理解する上で、スマートグリッドについて隅々まで理解することが重要である。更に、スマートグリッドには相互に関連する多くのサブマーケット、技術、アプリケーションが存在し、それらは固有の市場要求および技術の進歩に基づいて異なったペースで進展していることも頭に入れておかねばならない。

いかがでしょうか? 目次構成を見ても、要旨だけを見ても、スマートグリッドを十二分にカバーしたレポートの雰囲気がつかめていただけたのではないでしょうか?

今後、時間を見つけて以降の内容もご紹介したいと思います。