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欧州の国際電気標準会議(IEC)戦略グループSG3が、先月公開した「IEC版スマートグリッド標準化ロードマップ:IEC Smart Grid Standardization Roadmap Edition 1.0」をご紹介しています。
今回は、その4.2.1項、「通信」に関するスマートグリッド関連標準規格の後半部分をご紹介します。

出典:同ドキュメント表紙およびhttp://www.iec.ch/smartgrid より

では、はじめます。

4.2.1.3 既存規格

相互運用性基準

IEC 62357 参照アーキテクチャー(図4を参照)は、電力会社の業務アプリケーション通信の要件に焦点を当てたもので、効率的、かつ、将来の拡張にも耐えうるシステム・インテグレーション用のデータモデル、サービスおよびプロトコルから構成されている。このフレームワークは、上述の、異なるシステム間およびサブシステム間通信用のセマンティックデータモデル、サービスおよびプロトコルを含む標準通信規格を包含している。

図.4 現在のTC57参照アーキテクチャ

i) サービス指向アーキテクチャ(図5参照)

最新のネットワーク制御システムは、サービス指向アーキテクチャに、IEC 61968およびIEC 61970規格に基づく標準化されたプロセス、インタフェースおよび通信の仕様を提供している。それらが、配電会社の事業サービス環境中のネットワーク制御システムを統合する基礎を形成している。
ネットワーク制御システムのサービスには次のものがある:

  • データサービス:例えば、コア・アプリケーションのデータベースをアクセスするためのサービスで、電力供給システムで障害発生時に、影響を受けた装置の読み出しなどに使われる
  • 機能的なロジック・サービス:例えば、電力供給システムで負荷潮流計算プログラムの起動などに使われる
  • ビジネスロジック・サービス:例えば配電会社で顧客情報システム内のネットワーク制御システムが行う障害管理のような、特定のエネルギー管理作業工程のビジネスロジックと連係させる

図.5 サービス指向アーキテクチャ

(PMUのデータ収集装置のような)今後のアプリケーションの統合に柔軟に対応できなければならない。

ii) データモデル

規制緩和されたエネルギー市場で生き残るため、配電会社は、自社のコア・プロセスを最適化するという緊急課題に直面している。ここでの重大なステップは、これまで均質だったIT環境の中に、(従来、スタンドアローンで使われていた)多数の自立的なITシステムを組み合わせることである。従来のネットワーク制御システムでは、同一のデータ標準を使用していなかったので、相当努力しないと統合することはできなかったが、IEC 61970に従って、標準化された共通情報モデル(CIM)に基づき、ソースデータ用に標準化されたデータ形式を採用しているネットワーク制御システムだと、簡単にIT統合が可能となる。

CIMは、システムとアプリケーションが直接インタフェースして行う情報交換を単純化したオブジェクトとして、共通の言語とデータモデルで規定するものである。CIMは、IECの技術委員会 TC 57によって採用され、国際標準として急速に進展したものだが、標準化されたCIMデータモデルは、電力会社やメーカーにとって非常に多くの利点がある:

  • (アンバンドリングされたが電力業務遂行上情報交換が必要な)電力会社同士の単純なデータ交換に利用できる
  • 標準化されたCIMデータは安定していて、データモデルの拡張も容易である
  • その結果、単純、高速、かつ、安全にエネルギー管理システムのアップグレードや、必要ならば、他メーカーのシステムへのマイグレーションが可能である
  • CIMのAPIを用いることで、オープンなアプリケーション・インターフェイスを作ることができるので、「プラグ・アンド・プレイ」機能を使用して、すべての異なるベンダーのアプリケーション・パッケージを相互に連結したEMSを構築することも可能である

CIMは、他のITシステムとの間の重要な標準インタフェースを定義する上での基礎をなすものである。IEC TC 57のワーキンググループは、IEC 61970標準規格とCIMの一層の発展と国際的標準化で主要な役割を果たしている。
TC 57のワーキンググループWG14(IEC 61968担当)は、特に配電領域のシステム間インタフェースの標準化を担当している。変電所辺りの標準化はIEC 61850の中で定義されている。制御所との通信を規定したIEC 61850の拡張部分では、IEC 61970とIEC 61850の間のオブジェクトモデルに重複がある。
CIMデータモデルでは、電気的なネットワーク、接続されている電気機器、付加的な要素、および、ネットワーク操作に必要なデータも、それらの要素間の関係と同様、記述されている。

CIMの記述には、ユニファイド・モデリング言語(UML)という、標準化されたオブジェクト指向方法論で、様々なソフトウェアツールでサポートされている言語が使用されている。CIMは、主として、直接インタフェースあるいは統合バス経由での情報交換のため、および、様々な資源からのデータアクセスするための共通語を定義するために使用される。
CIMモデルは、基本要素、トポロジー、発電、負荷モデル、計測と保護のようなパッケージに細分化されている。これらのパッケージ化の唯一の目的は、モデルをよりトランスペアレントにすることである。クラスの関係は、パッケージの範囲を超えて伸びることもある。

iii) プロトコル

通信技術は、過去数年にわたって急速に発展し続けてきた。その中で、TCP/IPプロトコルは、電力供給分野における不動のネットワーク・プロトコル標準になった。
IEC 62357 参照アーキテクチャの一部となっている最新の通信規格(例えばIEC 61850)は、TCP/IPに基づいており、ユーザに多大な技術的恩恵を与えている。

IEC 61850「変電所向け通信ネットワークとシステム」

2004年に公表されて以来、IEC 61850 通信規格は、変電所自動化の分野での地歩を確立してきた。それは、信頼できるネットワークであるとともに今後20年の変電所の課題に適応できる非常に柔軟な技術が要求される、オープンで規制緩和されたエネルギー市場のニーズに見事に対応している。IEC 61850は、オフィスネットワーク分野の通信技術の推進役を引き継いだだけでなく、高い機能性と信頼できるデータ通信のための最良のプロトコルと構成を採用している。変電所利用目的で強化され、100MBPSの伝送スピードを実現した産業用イーサネットは、IED(インテリジェントな電子機器)間あるいはIEDと変電所の制御装置との間で高信頼度の情報交換を保証するため、十分な帯域幅を確保している。効果的なプロセスバスが定義され、インテリジェントなCTおよびVTと同様に、従来の機器もリレーに接続できる標準化された方法を提供している。IEC 61850は単なるプロトコルではなく、エンジニアリングとメンテナンス、特に異なるベンダー製の機器を結合する場合に有効である。

IEC 61850の重要な特徴

本標準規格は、仕様自体の記述とともに、変電所での通信に必要とされる要件についての記述を含んでいる。また、以下のような特徴がある:

  • 変電所自動化にフォーカスし、オブジェクト指向でアプリケーションに特有のデータモデルを含む
  • そのモデルは、回路遮断機、保護機能、電流および計器用変圧器、波形録音など、変電所内のすべての既存の装置と機能をほぼカバー
  • 通信サービスでは、情報交換のために多数の方法が用意されており、イベントの報告と記録、開閉器の制御およびデータモデルの情報交換などが含まれている
  • 配電系統の保護リレー装置やBCU(Bay Controller)間の高速データ交換用ピアツーピア通信は、GOOSE(generic object oriented system event:一般のオブジェクト指向システムイベント)で支援
  • サンプル値交換を支援
  • 系統内の擾乱記録のファイル転送
  • 計器用変成器と保護リレー等、主要機器間の通信サービス
  • 特定の通信技術から独立したデータモデルと通信サービスの定義
  • 特定の通信技術から独立したデータモデルを採用しているので、将来の通信技術の進歩・変化に影響を受けず、長期的に安定性が保証されている
  • 今日、この標準規格は、次のような特徴を備えた産業用インターネットの元で使われている:
    • 100MBPSの帯域幅
    • ノンブロッキング・スイッチング技術
    • 重要なメッセージ用の優先度タグ
    • 1ミリセカンドでの時間同期
  • (システムのデータモデルと、それを通信サービスとリンクする上で、標準化された表記を可能とする)共通の形式記述規則
  • この規則は変電所構成言語(SCL)と呼ばれ、IEC 61850に基づくすべての通信をカバー (XMLに基づく構成データの理想的な電子交換形式)
  • デバイス間の相互運用性を保証する標準化された適合試験についても規定
  • デバイスは、ここで規定された多数の適合試験にパスしなければ使えない
  • その適合試験には、不正情報を無視するかどうかのネガティブテストと、想定される異常電文に正しく応答できるかどうかのポジティブテストがある
  • IEC 61850は、変電所内の通信に係る問題すべてをカバーする仕様一式を提示している

IEC 60870-5 遠隔制御装置およびシステム パート5 送信プロトコル

本標準規格は、電力業界の情報伝送で使用する一連の標準で、1994年の初版以来、全世界で数百箇所の変電所が、IEC61850の標準規格に基づいて構築されている。

遠隔制御の通信の規格は3つのパートから構成されている:

  • IEC 60870-5-101、遠隔制御装置およびシステム パート5-101:送電プロトコル-基礎的な遠隔制御作業のためのコンパニオン規格
  • IEC 60870-5-103、遠隔制御装置およびシステム パート5-103:送信プロトコル-保護装置の情報を与えるインタフェースのためのコンパニオン規格
  • IEC 60870-5-104、遠隔制御装置およびシステム-パート5-104:送電プロトコル-標準トランスポート・プロファイルを使用するIEC 60870-5-101のためのネットワーク・アクセス
    IEC 60870-5-101および104のパートは、変電所から制御センターまで、変電所内の情報交換に主に使用される。本標準規格の適用分野は、主変電所(高圧・中圧レベル)から二次変電所(中圧・低圧レベル)に及ぶ。(変電所向けの標準ではあるが)一般的な設計と、シグナル指向の理論的な通信規格となっているので、電気以外の分野にも適用することができ、ガスや水道の設備にも広く利用されている。

IEC 60870-5-104は、(従来行われていた)シリアルのエンドツーエンド通信の操作限界を克服するという要件を満たすためIEC 60870-5でイーサネットおよびTCP/IPを使う方法を規定したもので、高い伝送速度およびバス・システムの使用を許可している。

IEC 60870-5-103は電気的な保護リレーにフォーカスした規定で、IEC 60870-5-101や104と比較すると、一般的なデータオブジェクトは、保護機能の情報に関して、明確にアプリケーション・スペシフィックな形で定義されている。この標準は、主に変電所内の保護リレーの通信に使用されている。

IEC 60870-5は広範囲に適用されているので、現在の電力システムをスマートグリッドに変更するに当たっては、この既存の遠隔制御インフラでスマートグリッドの機能性を形作るための要求が当然出てくる。

以下に、基本システムの異なるシステム間の通信とサブシステム間通信をどのIEC標準規格がカバーするか、さらに、どの相互運用性レベルが個別基準によって備えられるかを示す。

システム:大規模発電

大規模発電

サブシステム間通信

変電所自動化

IEC 61850 変電所内の通信網およびシステム

①②③

IEC60870-5-101 遠隔制御装置およびシステム パート5-101:送電プロトコル-基礎的な遠隔制御作業のためのコンパニオン規格

①②

IEC 60870-5-103 遠隔制御装置およびシステム パート5-103:送電プロトコル-保護装置の情報提供インタフェースのコンパニオン規格

①②③

IEC 60870-5-104 遠隔制御装置およびシステム パート5-104:送電プロトコル-標準輸送プロファイルを使用するIEC 60870-5-101のためのネットワーク・アクセス

①②

 

IEC 60255-24 電気リレーパート24:電力系統のためのトランジェントデータ交換(COMTRADE)用共通形式

②③

 

IEC 61400-25 風力タービンパート25:風力発電所の監視および制御のための通信

①②③

プロセス自動化

 

IEC 61158 産業向け通信網-フィールドバス仕様書、IEC 61784-1、産業向け通信網-プロファイル

①②

システム間通信

運用

IEC 61850変電所内の通信網およびシステム

①②③

IEC 60870-5-101 遠隔制御装置およびシステム パート5-101

送電プロトコル-基礎的な遠隔制御作業のためのコンパニオン規格

①②

IEC 60870-5-104 遠隔制御装置およびシステム パート5-104

送電プロトコル-標準トランスポートプロファイルを使用するIEC 60870-5-101のためのネットワーク・アクセス

①②

市場

市場の項参照

 

①ネットワーク相互運用性、②構文的相互運用性、③意味的相互運用性

システム:送電

送電

サブシステム間通信

変電所自動化

IEC 61850 変電所内の通信網およびシステム

①②③

IEC60870-5-101 遠隔制御装置およびシステム パート5-101:送電プロトコル-基礎的な遠隔制御作業のためのコンパニオン規格

①②

IEC 60870-5-103 遠隔制御装置およびシステム パート5-103:送電プロトコル-保護装置の情報提供インタフェースのコンパニオン規格

①②③

IEC 60870-5-104 遠隔制御装置およびシステム パート5-104:送電プロトコル-標準輸送プロファイルを使用するIEC 60870-5-101のためのネットワーク・アクセス

①②

 

IEC 60255-24 電気リレーパート24:電力系統のためのトランジェントデータ交換(COMTRADE)用共通形式

②③

 

IEC 60834 電力系統の遠隔保護装置-パフォーマンスとテスト

 

IEC 60495単側波帯電力線搬送端末

システム間通信

運用

IEC 61850変電所内の通信網およびシステム

①②③

IEC 60870-5-101 遠隔制御装置およびシステム パート5-101

送電プロトコル-基礎的な遠隔制御作業のためのコンパニオン規格

①②

IEC 60870-5-104 遠隔制御装置およびシステム パート5-104

送電プロトコル-標準トランスポートプロファイルを使用するIEC 60870-5-101のためのネットワーク・アクセス

①②

IEC 60255-24 電気リレーパート24:電力系統のためのトランジェントデータ交換(COMTRADE)用共通形式

②③

配電

IEC 61850変電所内の通信網およびシステム

①②③

①ネットワーク相互運用性、②構文的相互運用性、③意味的相互運用性

 

システム:配電

配電

サブシステム間通信

変電所自動化・配電自動化・分散電源

 

IEC 61850 変電所内の通信網およびシステム

①②③

IEC60870-5-101 遠隔制御装置およびシステム パート5-101:送電プロトコル-基礎的な遠隔制御作業のためのコンパニオン規格

①②

IEC 60870-5-103 遠隔制御装置およびシステム パート5-103:送電プロトコル-保護装置の情報提供インタフェースのコンパニオン規格

①②③

IEC 60870-5-104 遠隔制御装置およびシステム パート5-104:送電プロトコル-標準輸送プロファイルを使用するIEC 60870-5-101のためのネットワーク・アクセス

①②

 

IEC 61400-25 風力タービンパート25:風力発電所の監視および制御のための通信

①②③

 

IEC 60255-24 電気リレーパート24:電力系統のためのトランジェントデータ交換(COMTRADE)用共通形式

②③

システム間通信

運用

IEC 61850変電所内の通信網およびシステム

①②③

IEC 60870-5-101 遠隔制御装置およびシステム パート5-101

送電プロトコル-基礎的な遠隔制御作業のためのコンパニオン規格

①②

IEC 60870-5-104 遠隔制御装置およびシステム パート5-104

送電プロトコル-標準トランスポートプロファイルを使用するIEC 60870-5-101のためのネットワーク・アクセス

①②

 

IEC 60255-24 電気リレーパート24:電力系統のためのトランジェントデータ交換(COMTRADE)用共通形式

②③

 

IEC 61400-25 風力タービンパート25:風力発電所の監視および制御のための通信

①②③

サービス

IEC標準化対象外

 

プロシューマ

IEC 61850-7-420 電力業務自動化向け通信網パート7-420:基本通信構造分散型エネルギー資源論理ノード

①②③

IEC 61850変電所内の通信網およびシステム

①②③

IEC 62056 電気使用量の計測-検針、料金表および負荷制御用データ交換

①②

IEC 61334-4-41 配電線搬送方式を利用した配電自動化パート4

データ通信プロトコルセクション41:アプリケーション・プロトコル-配電線メッセージ仕様(DLMS)

IEC 61334、配電線搬送式を使用する配電自動化

①ネットワーク相互運用性、②構文的相互運用性、③意味的相互運用性

システム:運用

 

運用

サブシステム間通信

EMS・DMS

IEC 61968 電力会社のアプリケーション統合-配電管理のシステムインタフェース

②③

IEC 61970 エネルギー管理システムのAPI (EMS-API)

②③

IEC 60870-6-503 遠隔制御装置およびシステム パート6-503:送電プロトコル – ISO標準およびITU-T勧告Tase2(ICCP)互換の遠隔制御プロトコル

①②

システム間通信

送電

配電

大規模発電

IEC 61850変電所内の通信網およびシステム

①②③

IEC 60870-5-101 遠隔制御装置およびシステム パート5-101

送電プロトコル-基礎的な遠隔制御作業のためのコンパニオン規格

①②

IEC 60870-5-104 遠隔制御装置およびシステム パート5-104

送電プロトコル-標準トランスポートプロファイルを使用するIEC 60870-5-101のためのネットワーク・アクセス

①②

IEC 60255-24 電気リレーパート24:電力系統のためのトランジェントデータ交換(COMTRADE)用共通形式

②③

IEC 61400-25 風力タービンパート25:風力発電所の監視および制御のための通信

①②③

サービス

 

IEC標準化対象外

 

プロシューマ

IEC 61850-7-420 電力業務自動化向け通信網パート7-420

基礎的通信構成分散型エネルギー資源論理ノード

①②③

IEC 61850変電所内の通信網およびシステム

①②③

IEC 62056 電気使用量の計測-検針、料金表および負荷制御用データ交換

①②

IEC 61334-4-41 配電線搬送方式を利用した配電自動化パート4

データ通信プロトコルセクション41:アプリケーション・プロトコル-配電線メッセージ仕様 (DLMS)

IEC 61334、配電線搬送式を使用する配電自動化

市場

デファクト標準、主に規制当局やユーザ団体で定義されたもの

 

①ネットワーク相互運用性、②構文的相互運用性、③意味的相互運用性

システム:市場

市場情報伝達のためのプロファイルは、各地域の規制機関や地域のユーザ団体の主導のもと、形成されてきた。したがって、多くの地方独自の通信規格が存在している。
IEC 62325は、市場情報伝達の標準を新たに定めるのではなく、エネルギー市場情報伝達に、UN/CEFACT(United Nations Centre for Trade Facilitation and Electronic Business:国際連合の下位機関である標準化組織)のebXML標準を採用している。その目的は、電力市場取引固有の標準を定めるのではなく、オープンで、EDIFACT、X12などの特定の技術に依存しないフレームワークを提供することにある。
IEC 61970-302 1.0版 エネルギー管理システム・アプリケーション・プログラム・インタフェース(EMS-API) -パート302:Financial、Energy SchedulingおよびReservationsの共通情報モデル(CIM)
種々様々のプロトコルおよび標準がこの分野では使用されるが、モデリング側では、ほとんどUMLが使用されている。IEC 61970およびIEC 61968のCIMを更に進化させ、統合することで、電力価格モデルを実装するためのロードマップが見えてくる。

市場

サブシステム間通信

市場内

規制当局あるいはユーザ団体によって主に定義された独自のデータモデルと通信ソリューション

 

システム間通信

運用・

大規模発電・

サービス・

プロシューマ

IEC /TR 62325 エネルギー市場の通信フレームワーク

デファクト標準、主に規制当局やユーザ団体で定義されたもの

 

①構文的相互運用性

システム:サービス

 

サービス

サブシステム間通信

サービス内

新しいサービスアプリケーションは、シームレスにすべてのシステムに適合するよう標準化されたソフトウェア開発方法論に従うべきであるが、IECで規定する標準化の対象外

 

システム間通信

運用・

市場・

プロシューマ

 

新しいサービスアプリケーションは、シームレスにすべてのシステムに適合するよう標準化されたソフトウェア開発方法論に従うべきであるが、IECで規定する標準化の対象外

 

プロシューマ

 

プロシューマ

サブシステム間通信

AMI、AMR

AMI,AMRの項参照

 

ホーム・オートメーション

スマートホームとビル・オートメーションの項参照

 

ビル・オートメーション

スマートホームとビル・オートメーションの項参照

 

システム間通信

サービス

新しいサービスアプリケーションは、シームレスにすべてのシステムに適合するよう標準化されたソフトウェア開発方法論に従うべきであるが、IECで規定する標準化の対象外

 

運用・配電

IEC 61850-7-420 電力業務自動化向け通信網パート7-420:基本通信構造分散型エネルギー資源論理ノード

①②③

IEC 61850変電所内の通信網およびシステム

①②③

IEC 62056 電気使用量の計測-検針、料金表および負荷制御用データ交換

①②

IEC 61334-4-41 配電線搬送方式を利用した配電自動化パート4:データ通信プロトコルセクション41:アプリケーション・プロトコル-配電線メッセージ仕様(DLMS)

IEC 61334、配電線搬送式を使用する配電自動化

市場

地域の規制当局もしくはユーザ団体の問題で、IECの管轄外

 

①ネットワーク相互運用性、②構文的相互運用性、③意味的相互運用性

4.2.1.4 ギャップ

IEC 61970およびIEC 61850では、電力以外にガスや水道分野の事業も営む公益事業用のデータモデルがまだ考慮されていない。
現在、IEC 61850とIEC 61970の間で完全なマッピングができていない。
シームレスなスマートグリッドでの通信を行うには、サブシステムとシステム間通信のマッピングを必要とする。現在、既に確立された分野間の標準的なマッピング(例えばIEC 61850からホーム・オートメーションおよびビル・オートメーション分野)が規定されていない。
既存の通信規格と、IPV6技術標準との統合/マイグレーションが必要である。
AMIアプリケーション向けのシームレスな無線通信の標準規格がまだ定義されていない。対象候補はWiFi、モバイルWiMAX、GPRSなど。

4.2.1.5 提言

提言 G-C-1

(IECが規定している)CIMおよびサービス指向アーキテクチャー(SOA)は電力分野にフォーカスしているが、これらのコンセプトはオープンで電力以外の分野にも柔軟に対応できる。配電システムの運用は、ガスや水道水の供給にも適用可能である。そのような電力以外も供給する公益企業向けに、CIMとSOAの電力以外への拡張が行われるべきである。
そこで、そのような公益企業が、IEC 61970およびIEC 61850の規格を拡張することで、受ける影響度を調査するよう提言する。

提言 G-C-2

シームレスなスマートグリッド通信を行うためには、システム間およびサブシステムの通信のマッピングが必要である。定着した標準規格間をマッピングするためにどのようなプロファイルがあるか調査し、もしなければ新規にそのようなプロファイルを開発することを提言する。

提言 G-C-3

ユーザは、通信インフラへの投資を保護するために、将来の変更にも耐えうるFuture-proofの通信規格を必要としている。通信規格がFuture-proofであるためには、特定の通信技術から独立していることが望まれる。したがって、今後いつでも最先端通信技術を適用することができるよう、通信規格にはオープンなものでなければならない。

提言 G-C-4

AMIでの通信に関しては、いくつかの物理的な通信技術上のマッピングが必要となる。その1つとして、無線通信輸送プロトコルは必須である。

提言 G-C-5

スマートグリッドのコンセプトでは、エネルギー連鎖に沿って技術とビジネスプロセスがともに成長していく。CIMとSOAは、技術とビジネスプロセスの統合に共通の概念を供給する。IEC 61970の基礎をなすSOAの構造は、新しいアプリケーションの実装に柔軟姓を与えるものである。
そこで、電力自動化に向けたCIMおよびSOA構造の恩恵と限界を関係者に広く通知すべきである。

提言 G-C-6

IPベースの通信をスマートグリッドに適用することに関して、関連者の間で多くの混乱が見られる。すなわち、TC 57標準規格(例えばIEC 61850およびIEC 61970)の既存の電力自動化フレームワークが、広く利用されているIPプロトコルおよびIP通信と矛盾しているという認識が広まっている。しかし、その認識は間違っており、タイム・クリティカルではないスマートグリッド・アプリケーションに関して、IEC 61850およびIEC 61970は、IPおよびTCP/IPの使用を否定するものではない。IECは、そのような誤った認識を払拭するよう活動すべきである。
電力自動化の標準規格はTCP/IPと密接な関係にあること周知徹底させるような広報活動の実施を提言する。

以上、スマートグリッドの通信に関する①特徴(4.2.1.1)と②要件(4.2.1.2)、③関連するIEC標準規格(4.2.1.3)と、④シームレスなスマートグリッド・アプリケーションを実現する上での既存標準規格に存在するギャップ(4.2.1.4)、⑤最後にギャップの解消などのために必要な、IEC内の関連部署に対する提言(4.2.1.5)をご紹介しました。

今回再認識したのは、IECが電力関連アプリケーションを、上位レベルではSOAのアーキテクチャ、CIMのオブジェクトモデルから、通信レベルのTCP/IPまで、すべて一色に統一させようと考えているわけではなく、タイム・クリティカルではないスマートグリッド・アプリケーションに関して、IEC 61850およびIEC 61970とTCP/IPの適用を推奨していることです。

ロードマップという言葉から、ここで指摘されたギャップおよび提言にそって、いつまでにどのIEC標準規格をどう改良していくかという時間制約を付記した今後の開発計画までを記したものを期待していた方にとっては、少々拍子抜けだったかもしれませんが、それは、今後提言を受けたIEC内の担当部署で検討されていくことだと思います。

本「IECスマートグリッド標準化ロードマップ」は、この後、「通信」と同様、以下のとおりスマートグリッドに関連する様々な側面に関して、「ロードマップ」を示していますが、全文136ページをすべてご紹介していくのは大変なので、このブログのシリーズは一旦ここで終了させていただきます。

4.2.2 Security
4.2.3 Planning for the Smart Grid
4.3.1 Smart transmission systems Transmission Level Applications
4.3.2 Blackout Prevention / EMS
4.3.3 Advanced Distribution Management
4.3.4 Distribution Automation
4.3.6 Distributed Energy Resources
4.3.7 Advanced Metering for Billing and Network Management
4.3.8 Demand Response / Load Management
4.3.9 Smart Home and Building Automation
4.3.10 Electric Storage
4.3.11 E-mobility
4.3.12 Condition Monitoring
4.3.13 Renewable Energy Generation

終わり