Autumn leaves in Bambricks Wood

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10月17日、リッツカールトン大阪4階ボールルームにて開催した「第1回大阪KNX住宅・ビル制御 テクノロジー・アプリケーション フォーラム」が無事終了し、一息つく間もなく、旅に出ていました。

これは、インターテックリサーチとしての仕事でも、日本KNX協会としての仕事でもないので、その詳細をここではご報告しませんが、どこに行ってどんな話を聞き、何を思ったかという感想ぐらいなら許されるのではないかと思いますので、まず、簡単に旅程からお話します。

 

  • 11/2(日)に成田を出発し、オランダ - アムステルダム入り
  • 11/3(月)、European Utility Week2014(EUW2014)開催に先立って開かれたOSGP(Open Smart Grid Protocol)ワークショップに参加し、昨年に続き、「スマートグリッド用オープンプロトコル」という太宗な名前の付いたプロトコルの情報収集
  • 11/4(火)~11/6(木)、EUW2014に参加し、いくつかDR関連のセミナーを受講するとともに、展示会場内で欧州のDRに関するヒアリングを実施
  • 11/6(木)夕方ジュネーブへ移動
  • 11/7(金)の朝、ジュネーブから列車で1時間くらい離れたフランス-シャンベリの街から更にタクシーでEnergyPool本社を訪問し、CEOのOlivier BAUD氏から、欧州のDRの動向と、同社のDRビジネスについてヒアリング
  • ジュネーブに戻って、週末をジュネーブで過ごし、11/9(日)ジュネーブからロンドンに飛び、ヒースロー空港からラグビー発祥の地ラグビーに移動
  • 11/10(月)の朝、ラグビーから英国の系統運用者であるNational Gridを訪問し、英国でのDR事情をヒアリングし、午後ロンドンに列車で移動
  • 11/11(火)、英国配電事業者のUKPN(UK Power Network)と、DRアグリゲーターKiWiPowerに同じく英国でのDR事象をヒアリング
  • 11/12(水)、ロンドンからワシントンDCに移動
  • 11/13(木)、午前中は、バルチモアまで列車で移動し、BGE(Baltimore Gas & Electric)を訪問し、スマートメータ普及率がほぼ100%の同社でのDRビジネスに関してヒアリング後、ワシントンDCに戻り、夜はFERC Order745に関する訴訟でFERC側の弁護をしている方と会食し、FERC Order745のこれまでの経緯と今後の予想に関してヒアリング
  • 11/14(金)の朝、EEI(Edison Electric Institute)を訪問し、なぜFERC Order745に反対なのか、今後FERC Order745はどうなるのかに関してヒアリング
  • 週末をワシントンDCで過ごし、11/16(日)に、ペンシルベニア州フィラデルフィア郊外のバレーフォージに移動
  • 11/17(月)の朝、バレーフォージにある米国東部の系統運用者PJMを訪問。その後、同州の電力会社の1つPPLを訪問し、PJM管内のDR事情をヒアリング後、フィラデルフィアに戻って、飛行機でテネシー州ノックスビルに移動
  • 11/18(火)の朝、DR資源提供者から見た米国のDR事情をヒアリングすべく、ノックスビルのALCOAを訪問後、ノックスビルからサンフランシスコに移動
  • 11/19(水)の朝(8時!)から、カリフォルニア州3大電力会社の1つであるPG&Eを訪問し、同社のDRを取り巻く環境をヒアリング
  • 11/20(水)、シリコンバレーにある三井物産支店を訪問し、米国のエネルギー事情と同社のビジネス状況についてヒアリング
  • 11/20(木)夕方、サンフランシスコを出て11/21(金)帰国

 

この長旅を終えての感想は、以下の通りです。

 

【欧米共通】

  • 国/市場環境、ステークホルダとして果たすべき役割によって違いはあるものの、DRの用途として、従来の緊急時対応のためのDR(年数回のピーク負荷削減用途と、それよりは頻度が高くなりますが、いわゆる予備力用途のDR)だけでなく、出力変動の大きな再生可能エネルギーを有効利用するため、日常の「フレキシブルな資源」としてのDRが求められている

 

  • その場合、単に負荷削減方向に寄与するフレキシブル資源ではなく、日本で言う「下げ代問題:気象条件が良く太陽光発電や風力発電の発電量が増えた時、再生可能エネルギーの出力変動調整用電源出力を最低運転条件まで絞っても対応できなくなる問題」に対して負荷を増加させる方向のDRも検討されている

 

  • その場合、純粋な負荷調整ではなく、「メーターの後ろ側」のストレージ(定置型だけではなく、移動型ストレージ、すなわち、EVのバッテリー)への充電による、系統への再生可能エネルギーの過剰供給の吸い込みを含んでいる。

 

【FERCオーダー745のDRへの影響】

  • 米国では、FERCオーダー745に対して高等裁判所が無効判決を出したことが、やはりDRの進展にブレーキをかけているように見受けられる。「将来のDR形態」として注目していたPRD(Price Responsive Demand)に関しても(PJMおよびBGEに確認した限りでは)、時期尚早ということなのか、進展どころか、後退している感がある。(今年5月の容量市場オークションでPRD資源提供者を募ったが、誰も応募せず、PRDは今のところ実施されていない)
  • FERCオーダー745に関しては、高裁での無効判決後、FERCから12月16日までのSTAY(執行猶予のようなもの)要請が行われ、その要請が認められたので、現在もPJM等は、オーダー745に基づいた運用をそのまま行っている
  • 今後オーダー745がどうなるのかの見通しとして、1つはSolicitor General(法務局長:最高裁判所に連邦政府の代理人として訴訟を担当する)が最高裁への上告に同意するかどうかにかかっている。その場合、。。。 そうでない場合で最高裁への上告が棄却となる場合、。。。
  • 最高裁での審議にこぎつけた場合も、高等裁判所の判決を覆しオーダー745を支持する場合、判断を保留して高裁への差し戻しとなる場合、高裁判決通りとする場合があり、
  • 例え最高裁での判決が高裁判決通りとなった場合も、こんな奥の手が。。。

と、様々な話を聞くことができましたが、「結局、当面はオーダー745が生きながらえるのではないかという印象を持ちました。

#あくまでも個人的な感想です。

 

FERCオーダー745に関しては、元来、「発電事業者とDR資源提供者は対等ではない」という考えの発電事業者や、EEIのような関連業界団体などが無効を叫んでいたのですが、その内、FERCにはオーダー745を出す権限がないという問題にすり替えられて高裁に提訴され、現在に至っています。745賛成派のDRアグリゲーターやDR資源提供を行っている大口需要家、複数の州にまたがる市場運営を行っているがゆえにFERCオーダーに従わざるを得ないISO/RTOなど、様々な利害関係者が関わっており、12月16日までに、また、どのような動きがあるのか、当面、目が離せない状況です。

 

「発電事業者とDR資源提供者は対等ではない」という考えについても、立場が違うと、当然言うことが違うのですが、少なくとも系統運用者はDR資源に対して中立の立場、あるいは、DR資源を発電機より好む/信頼している傾向が見られました。

以下は、ALCOAで見せていただいたグラフですが、MISOでの2009年1月~2012年2月までの予備力(Spin)発動に対して、発電側とDR資源提供側双方がどれくらい指示量に対して未達(Shortfall)だったかを月別に示したものです。

グラフを見ると、発電機(GEN)からの予備力提供における未達割合の平均:Linear GEN Avg)が4%弱に対して、DR資源(DRR)からの予備力提供における未達割合の平均:Linear (DRR Avg)は1.2%程度。それも2010年8月に通信回線の故障でDRシグナルに応じられなかった日があったため、平均値を押し上げていますが、DR資源提供者本来の未達は0.1%位ではないかと言われています。

出典:2012年7月「Limits to Spin Reserve Provision by Demand Resources」

 

 

以上、非常に短いですが、欧米の最新DR状況調査での感想でした。

 

P.S.

11月4日~6日開催されたEUW2014にインプレス社SmartGridニューズレター編集長の威能氏および林氏が取材に来ておられました。今年は、KNX協会もEUW2014に出展しており、1コマKNX関連のセミナーも行われていましたので、KNX協会CTOのJoost Demarest氏をご紹介し、インタビューしていただきました。その内容は、インプレス社SmartGridフォーラムのホームページに、「欧州最大のエネルギー業界の展示会 European Utility Week 2014 注目企業レポート<後編>」の3つ目の記事として紹介されています。

その記事の中にも書かれていますが、Joost Demarest氏による「KNX City」の詳しい内容については、インプレス社から近日発売予定の『Smart Utility Week 2014報告書』(仮)にもとりあげられるようで、20ページ位の解説記事となるようです。

 

 

以上