Lutterworth
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前回、やっとMISOのDRのご紹介にたどり着きました。
その際指摘させていただいたように、MISOでは、いろいろな種類のDRプログラムを用意するのではなく、DRの資源をタイプで分類し:

  • どのタイプの資源がMISOの運営する電力市場(1日前市場およびリアルタイム市場)のどの取引(電力取引、予備力取引および周波数調整力取引)に参加できるか、
  • どのタイプの資源が、電力市場経由ではなく、系統運用上緊急事態発生時にMISOより調達されるか

を規定しています。

今回は、MISOの資料「Demand Response Primer and Training Guide」、トレーニングマニュアル「Level200 – Resource Adequacy」、およびマニュアル「BPM-026:Demand Response」をベースに、MISOのDRについて、もう少し詳しく解説していきたいと思います。

まず、復習です。
前回、MISOにおけるデマンドレスポンスの資源は下表のように分類されているということをお話ししました。

このうち、MISOの運営する電力市場(1日前市場およびリアルタイム市場)に入札可能なのはDR資源(Demand Response Resource : DRR)です。

DRRの内、純粋な負荷削減行為でDRの資源を提供するのがDRR-TypeⅠ。
周波数調整電源に対してMISOが発する発電指令にも対応できる
①制御可能な負荷、もしくは、
②資源提供者が保有する発電機等
により対応できるものがDRR-TypeⅡです。

では、DRR-TypeⅡの②と、LMRのBTM電源(Behind-the-Meter Generation)とは何が違うのかというと、DRの資源提供者が、その資源を容量資源としてMISOに登録しているかどうかと、MISOの発電指令(Dispatch Instructions)の対象となっているかどうかです。
これはLMRのデマンド資源(Demand Resources)も同様で、要するに、容量資源(電力供給側の資源)としてMISOに登録するのか、負荷変動資源(需要側に資源)としてMISOに登録するのかどうかの違いのようです。

逆に、容量資源として登録したDRの資源については、容量資源として登録した電源同様、毎日・毎時間どれほどDRの資源を提供するかMISOの電力市場へ入札しなければなりません(’must offer’ requirement)が、LMRとして登録したDRの資源は、緊急時のみMISOが利用します。

次に、負荷変動資源(LMR)と緊急DR(EDR)の違いは何かというと、系統に緊急事態が発生した場合、LMRとして登録されたDRの資源は必ずMISOに提供する義務があるのに対して、EDRとして登録されたDRの資源は提供するかしないか日によって変更可能なようです。

したがって、上図のとおり、機能的にはDRR-TypeⅠあるいはDRR-TypeⅡに相当するDRの資源もMISOへの登録の仕方で「Capacity Resources(容量資源)」にも、「LMRs」にも、更には、楕円の外側のEDRにもなりえます。

大雑把に言うと、MISOの需給バランシングにおいて、DRRはネガワットを提供する電源として供給側の資源扱いであるのに対して、LMR/EDRは緊急時に調達する需要側の資源扱いということになるようです。

また、別の言い方をすると、DRRは、電源と経済差替え可能な日常的な資源であるのに対して、LMR/EDRは、緊急事態に対応するための非日常的な資源ということもできます。

DRの資源提供者が、自ら保有する資源をどのDRタイプとして登録するのかは、その資源が定常的に提供できるものか、普段は無理だけれども緊急時なら提供してもよいものか(あるいは、資源提供しないと、系統全体が停電してしまって、結果的に短期的に資源提供する以上の損失を被ってしまう)によります。
また、電源の場合も同様ですが、市場参入/系統連系するにあたっては、どれだけの量の資源を、どれだけの時間、どれほどの応答特性で提供できるのか検査を受け、認可を受ける必要があります。

まず、DR資源(DRR-TypeⅠ、DRR-TypeⅡ)について、どのような資源がDRR-TypeⅠ、DRR-TypeⅡとして認定されるのか、詳しく見ていきたいと思います。

DR資源(DRR)の定義

MISO管内の大口需要家、電力小売事業者(Load Serving Entity:LSE)または小売り消費者のアグリゲータ(Aggregators of Retail Customers:ARC)が提供する以下の条件を満たす資源:

  • DRR-TypeⅠ

i) 電力市場および運用予備力市場への参加登録が行われ、
ii) 資源提供者の選択の下、物理的に負荷に割り込みをかけて電力市場や運用予備力市場へDRの資源提供を行なうことができ、
iii) ネガワット電源として、通常のエネルギー提供だけでなく、予備力提供の要件を満たせば、予備力提供が可能で、
iv) どれほど資源提供できたかの情報(after-the-fact Metering and Verification Information)の提供が可能な資源

  • DRR-TypeⅡ

i) 電力市場および運用予備力市場への参加登録が行われ、
ii) 資源提供者の選択の下、オンサイトの発電機や制御可能な負荷を用いて電力市場や運用予備力市場へDRの資源提供を行なうことができ、
iii) ネガワット電源として、通常の発電だけでなく、緊急時の送電事業者の指示に従うことが可能で、
iv) どれほど資源提供できたかの情報(after-the-fact Metering and Verification Information)の提供が可能な資源

DRR-TypeⅠでは、指示があった場合に、負荷を0にする、あるいは、事前に合意された負荷削減量を達成することしか求められませんが、DRR-TypeⅡでは、発電機への発電指令と同じようなMISOからの指示への応答が求められます。

次に、DRRとして登録する場合の要件を整理しておきましょう。

DR資源(DRR)として登録する場合の要件

 

DR資源(DRR)を提供するためには、(細かな説明を省略しますが)上図のとおり、

1) 最初にMISO管内に提供できる資源としての資格(Qualification)があるかどうかの確認が行われた後、

2) 毎年、提供できる容量に関する検査(Generations Verification Test Capacity:GVTC)を受けてネガワットとしての設備容量(Installed Capacity)を確定し、

3) 資源のタイプや計画外停止率(Equivalent Demand Forced Outage Rate:XEFORd)を勘案した実効容量(Unforced CAPacity:UCAP)が算出されます。

4) DRRは、毎日、1日前市場に入札するか、または、DRRを提供するゾーンの容量クレジット(Zonal Resource Credit:ZRC)

とすることが求められます(Must-Offer requirement)。

※ DRR-TypeⅡ②の資源の場合は、北米信頼度協会(NERC)が運営する電源稼働状況を保持するデータベースGADS(Generator Availability Data System)に使用する電源の発電実績を登録するため、報告する必要があります。

次に、DR資源が市場に参加する場合の要件を整理します。

DR資源(DRR)が市場に参加する場合の要件

  • 運用予備力市場-周波数調整力(Regulating Reserve)に参加する場合

-「Regulation Qualified Resource」として登録されていること
- 調整電源と同等の要件を満たすこと
※「Regulation Qualified Resource」として登録されているDR資源は、瞬動予備力(Spinning Reserve)および待機予備力(Supplemental Reserve)も提供できる

  • 運用予備力市場-瞬動予備力(Spinning Reserve)に参加する場合

-「Spin Qualified Resource」として登録されていること
-10分以内に既定された負荷削減ができること
-1時間またはApplicable Reliability Standardsで規定された時間100%資源提供ができること
-10秒ごとに遠隔検針ができること(DRR-TypeⅠは1分毎)
※ 「Spin Qualified Resource」として登録されているDR資源は、待機予備力(Supplemental Reserve)も提供できる

  • 運用予備力市場-待機予備力(Supplemental Reserve)に参加する場合

-「Supplemental Qualified Resource」として登録されていること
- 10分以内に既定された負荷削減ができること
-1時間またはApplicable Reliability Standardsで規定された時間100%資源提供ができること
-「Quick-Start resource」の場合、資源提供時間は3時間以内

 

少し短いですが、本日はここまでとします。

終わり