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前回は、VPPのビジネスモデルの事例として、H28年度バーチャルパワープラント構築事業費補助金(VPP構築実証事業)の採択事業者の内、関西電力等14社から構成され、私見ですが、最もVPPのビジネスモデルとしてよく考えられている(広くカバーされている)と思われる「関西VPPプロジェクト」と、そのビジネスモデルについてご紹介しました。
もともと、今回のVPP構築実証事業の内、A-1補助対象事業は、「高度なエネルギーマネジメント技術を活用し、蓄電池等のエネルギー設備やDR等の需要家側の取組等、電力グリッド上に散在するエネルギーリソースを統合的に制御し、あたかも一つの発電所のように機能させる取組を通じて、需要家側のエネルギーリソースを統合的に制御するアグリゲーションビジネスにおけるビジネスモデルの確立」を目指すもので、VPPの構築および技術開発のみにフォーカスした実証ではありません。VPP構築実証期間は5年間ありますので、単年度ごとに成果を積み上げていくのは難しいかもしれませんが、5年後VPPビジネスとして実運用にこぎつけられるよう実りある実証を期待しています。

今回は、他のA-1事業採択者に関して、どのようなビジネスモデルを想定しているか調べてみましたので、その結果をご紹介します。

スマートレジリエンス・バーチャルパワープラント構築事業

横浜市のプレスリリース『「仮想の発電所」(バーチャルパワープラント)を公⺠連携で構築します!〜横浜市・東京電⼒エナジーパートナー(東電EP)株式会社・株式会社東芝と基本協定を締結〜』によると、「横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)の実証成果を生かして、公民連携で実装化の取組を推進していく」ということで、自治体と連携したビジネスモデルになっています。


今年度の取り組みとしては、「横浜市内小中学校(各区 1 校、全 18 校を予定)に蓄電池設備を設置し、遠隔操作で、充放電を統合的に制御する実証により、平常時と非常時の機能や、事業性、有効性を評価する」とされており、

今後の展開として、自治体関連施設から民間ビルまで、VPPでの制御対象の拡大が検討されています。 

ただ、VPP資源として利用するのは蓄電池のみであり、VPPシステムというよりは、蓄電池アグリゲーションにとどまっているのと、YSCPで東芝が培った蓄電池SCADA技術と、東電EPがビジネス展開しようとしているインフラ(スマートレジリエンスESP)をベースに実証実験を行なううようで、技術的には手堅いけれどもあまりチャレンジする姿勢が見られないのと、(これで収益が上がるのなら別に文句はないですが)ビジネスモデルとしても単純な点が残念です。

蓄熱槽を含む多彩なエネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラントの構築

アズビル、東電EP、三菱地所設計、明治安田生命保険、日本工営の5社から構成されるコンソーシアムでVPP実証が行われますが、残念ながら、これらのA-1採択事業者のホームページなどに本VPP構築実証に関する情報を見つけることはできませんでした。

バーチャルパワープラント構築を通じた リソースアグリゲーションビジネス実証事業

日本電気(NEC)社のプレスリリース「バーチャルパワープラント構築を通じたリソースアグリゲーションビジネスの実証事業を開始」によると、平成26年度の「産業競争力懇談会における研究会活動」によりNECら複数社が提案、検討し、平成27年度の「地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業(構想普及支援事業)」で事業可能性についてより具体的に調査検討を行った結果や得られた知見に基づき、VPPの構築に必要なリソースや技術などを保有する9社が集結し、本実証が行われると説明されています。

プレスリリースのページからリンクされた補足説明資料によると、以下のようなリソースアグリゲータ―としてのビジネスモデルが描かれていますが、産業競争力懇談会の資料を見ると、蓄電池を用いたエネマネサービスが基本となっているようです。

IoTとビッグデータを活用した先駆的VPP実証事業

エナリスのプレスリリース「バーチャルパワープラント構築実証事業/アグリゲーター事業」に採択』によると、エナリス等6社がコンソーシアムを結成して、「需要家側の創エネ・蓄エネ・省エネの取り組みによって生じるエネルギーリソースを統合的に制御し、一つの発電所のように機能させる「バーチャルパワープラント」の構築と技術開発、関連するビジネスモデルの確立を目指す」としています。

バーチャルパワープラントのイメージとしては、同社社長が平成27年11月26日に開催された「第3回 未来投資に向けた官民対話」で発表された上図が示されています。 また、実証実験の実施体制と参加各社の役割については、下図/下表のとおりです。

エナリスのプレスリリースと同期して、京セラとKDDIが、ともにVPP構築事業への参加をニュースリリースで報じていますが、その他3社からは何も発表がなく、本実証参加への温度差を感じました。

V2Gのアイデアは古くからありますが、VPPの資源として考えた場合、放電して欲しい時にEVが充電ステーションにいるのか? また、太陽光発電の余剰電力が系統にあふれ出す時間帯に、その余分な発電量をEVのバッテリーに吸収させたいが、EVが充電ステーションにどのくらいの確率で停車しているのか等、個人的には電気自動車行動予測システムの開発と、それをベースに、EV充放電がVPP資源として実ビジネスで利用できるようになるためには、どの程度EVが普及していなければならないかをシミュレーションして分析評価するのは非常に大事だと思います。

壱岐島における再エネ出力制御回避アグリゲーション実証事業

SBエナジーのプレスリリース「平成28年度バーチャルパワープラント構築事業」への採択について』の記事詳細によると、「本事業は、2016 年より需給バランスの調整のために再生可能エネルギー発電事業者に出力制御指令が発 令されている長崎県壱岐島で、壱岐開発株式会社(本社:長崎県壱岐市、代表取締役社長:中原 恵美子) が運営する「壱岐ソーラーパーク(出力規模:1,960kW) 」へ課せられる出力抑制分の電力を対象に実施し、 SB エナジーは出力制御指令によって抑制される予定の電力を、壱岐島内に点在する蓄電設備を利用して 遠隔制御で新たな電力供給先を創出するアグリゲーションを行います」とされており、VPPビジネスモデルとして、再エネ大量導入で問題となっている出力抑制緩和を目的としていて、発電所の代替ではなく、系統接続の大規模蓄電池の代替としてのVPPの役割についての実証であることがわかります。

コンビニエンスストアにおける需要家側VPPシステム構築実証事業

残念ながら、本実証に携わるローソン、慶応義塾大学SFC研究所のホームページで、VPP構築事業に関する記述は見当たりませんでした

以上、今回は関西VPPプロジェクト以外のVPP構築実証プロジェクトに関して、ネットから得られた情報をもとに、そのビジネスモデルを確認しました。

終わり