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8月3日付のSmartGridNewsに、原子力発電所の炉心溶解事故になぞらえ、「SmartGridCity Meltdown」という気になる見出しの記事がありましたので、ご紹介します。

SmartGridCityの壊滅:どれほどひどいのか?

Smart Grid News.com 2010年8月3日

今年はじめ、エクセル・エナジー社が音頭を取って推進してきた、米国最先端のスマートグリッド実証サイト:コロラド州ボルダー市のSmartGridCityプロジェクトのコストオーバーランがすでに問題になっていた。
では、SmartGridCityの問題とは、どれほど深刻なのか?
コロラド州の公益事業委員会(Public Utility Commission:PUC)が最近公開した一連のドキュメントを苦労して読み込んだところ、真偽はどうあれ、少なくとも良くはなさそうである。

以下に、エクセル・エナジーが提出した公益事業免許証(Certificate of Public Convenience and Necessity:CPCN)の発給依頼申請書から、いくつか重要なポイントを拾ってみた。
また、エクセル・エナジーの職員や、消費者、州職員を含む様々なニュースソースから得た情報も盛り込んでいる:

  • エクセル・エナジーは2008年にSmartGridCityプロジェクトを開始するに当たってCPCNを提出しなかった。なぜなら、このプロジェクトはリサーチプロジェクトであり、CPCNを提出する必要はないと思ったからである。
  • CPCNがなかったので、納税者を保護する立場にあるPUCその他の関連部門は、このプロジェクト予算を事前にチェックする機会がなかった。
  • しかも、プロジェクト開始以前に、通常行われるような費用便益分析が実施されていなかった。
  • 当初のプロジェクト見積もり額は1530万ドルだったが、ふたを開けてみると、(スマートメーターリングの施設建設に当たって必要となった)許可申請や、木の伐採費用、ソフトウェア購入費、その他のネゴシエーションに必要な費用が膨らみ、たちまちプロジェクト費用が2790万ドルまで急上昇。最終的には4480万ドルを要したと報告されている。
    光ファイバーの線を通すために穴を空ける必要のあった岩石の量が想定外に多かったことも、プロジェクト費用高騰の原因となった。
  • エクセル・エナジーの重要なプロジェクト責任者数人は、昨年の早い段階でプロジェクトを離脱している。
  • エクセル・エナジーは、膨らんだプロジェクト・コストをカバーするべく、昨年、PUCに電気料金値上げを申請した。
    その際、PUCは、このプロジェクトが将来に備えた、真に公益のためとなるプロジェクトであることを証明するため、エクセル・エナジーにCPCNの提出を求めた。
  • プロジェクトの期間が終了に近づいても、スマートメーターの設置はボルダー市内の住居の43%にとどまった。
  • しかも、スマートグリッドのもたらす恩恵としてよく喧伝されているような機能が、スマートメーター・システムに備わっていない。

誰が悪かったのか?
このような事態になると誰も予想できなかったのだろうか?
寄せられた苦情のうちどれだけが何でも反対する人たちからもモノなのか?
この先駆的なイニシアチブのどの段階に間違いがあったのか?

コロラド州行政法判事が、これらの問いに対して最終的な判定を下すことになっているが、なぜこのような状況になってしまったのか、読者といっしょに考えてみたい:

SmartGridCityは、世間が見習うべき模範として、もてはやされてきた。たとえ、プロジェクト参加者のうち数人が誤りを犯したとしても、それは、新たな道を切り開こうとしている者の勇気に免じて許されるはずだった。
しかし、規制機関の担当者や納税者もそのように大目に見てくれるのだろうか?
またこれは、スマートグリッドに対する巨大なストップサインの兆しなのか?

このSmartGridNewsの読者には電力会社の方が多いので、共有するべき内部情報あるいは専門家としての洞察をお持ちのことと思う。そこで、このコラムのコメント機能を使って、以下の質問に対して読者のご意見をお聞かせ願いたい:

● 何がうまく行かなかったのか?
● 誰が間違ったのか?
● 今回の出来事から我々は何を学んだか?
● 今回起きてしまったことについて、業界としてどのように見ているのか?

SmartGridCityプロジェクトのこれまでの「輝かしい業績」については、Xcel Energy社のホームページ:SMART GRID CITYや、昨年9月の同社からのアナウンス「SmartGridCity Goes Live In Boulder, Colo.」などで報じられており、経済産業省 産業構造審議会環境部会環境と産業小委員会で、株式会社ドリームインキュベータが「環境・エネルギー分野における有望技術を用いたまちづくりの海外先進事例」というタイトルの資料の中でも、海外先進事例①として紹介されています。
SmartGridNews.comでは、2008年11月の記事(動画あり)以来、SmartGridCityの進行状況を適時伝えてくれていますが、今回の記事は、今年2月の記事「Boulder SmartGridCity Cost Overruns: How Bad is it Really?」の続報です。

記事の問いかけに応えて今のところ(8/6現在) SmartGRidNews.com読者から19のコメントが寄せられていますが、記事内の質問項目へ回答する形のコメントは、まだ本プロジェクトに関わった方から寄せられていないようです。

終わり