Sunrise at Deadmans Hill

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前回、DLMS/COSEMという計測業界標準が、国際標準:IEC62056に採用されているという話をご紹介しましたが、今回は、スマートグリッドに関連する国際規格について調べてみましたので、紹介したいと思います。

まずは、IECの国際規格から始めましょう。

IEC(International Electrotechnical Commission)は、1906年6月26日の創立総会まで時間をさかのぼることのできる伝統的な国際標準化団体で、現在では130ヶ国以上が参加しているとのことです。日本からは、日本工業標準調査会(JISC)が参加しています。
電気工学、電子工学、および関連した技術を扱う国際的な標準化団体で、制定する規格の一部は国際標準化機構(ISO)と共同で開発されています。 IEC標準規格には 60000~79999 の範囲の番号が付与され、ISOと共同で策定された標準規格は、ISO側の番号が付与されるようです。

IECには、技術分野毎に規格を開発するための専門技術委員会:TC(Technical Committee)があり(HWよりのTCが多いですが)、スマートグリッドに関連するTCと、その規格策定領域は次のとおりです。

TC8:電力供給に関わるシステムアスペクト
TC13:電力量計測・負荷制御装置
TC14:電力用変圧器
TC16:マン・マシン インターフェース、表示および識別に関する基本と安全原則
TC17:開閉装置及び制御装置
TC22:パワーエレクトロニクス
   (SubCommittee-F:送配電システム用パワーエレクトロニクス)
TC38:計器用変成器
TC57:電力システム管理および関連する情報交換
TC65:工業プロセス計測制御
   (SubCommittee-C:デジタルデータ伝送)
TC72:家庭用自動制御装置
TC95:メジャリング継電器および保護装置

このうち、TC57では、電力網内の構成情報やステータス情報を交換する目的で、CIM(Common Information Model)という、電力業界用の情報交換モデルを検討しています。
TC57で審議されている通信システムの範囲は、変電所の自動化や遠隔監視制御、需給制御や給電情報交換、配電自動化、電気所間リレー通信に留まらず、近年のIT 活用の広がりや電力自由化の進展に呼応して、電力市場と電力会社間の情報交換や分散型電源の監視制御などに広がっているようです。
通信プロトコルについては、伝送・ネットワーク装置レベルはTCP/IP などの通信業界標準が、情報交換手順などについてはプロセス制御に関わる業界標準などが適用されています。
近年では、アプリケーションプログラムに密接にかかわる、情報交換用インターフェースやオブジェクト指向に基づく系統機器情報の情報モデルの標準化に活動の中心が移っていて、需要家情報管理や電力品質監視方式のモデル化などにも対象が広がっているようです。

以下に、TC57のワーキンググループ(WG)と、それぞれの作業領域を列挙します。
• WG 03 :遠隔制御プロトコル
• WG 10 :電力系統のIED (Intelligent Electronic Device)の通信および関連データモデル
• WG 13 :エネルギー管理システム(EMS)のアプリインタフェース (EMS – API)
• WG 14 :配電管理用分散管理(System interfaces for distribution management:SIDM)
• WG 15 :データおよび通信セキュリティ
• WG 16 :自由化されたエネルギー市場の通信手段
• WG 17 :分散型エネルギー資源(Distributed Energy Resources :DER)のための通信システム
• WG 18 :水力発電プラント向け遠隔監視・制御用通信

これらのワーキンググループで策定された、スマートグリッドに関する主な国際規格は以下のとおりです。

■ IEC 60870:電力設備などの遠隔監視制御のための標準通信プロトコルの1つで、産業制御システムSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)の標準プロトコルの1つとなっている。
■ IEC 61850:変電所の統合/オートメーションに使用される通信ネットワークとシステムの規格で、変電所内通信プロトコルと、変電所内の装置・機器が持つ情報のモデル(デバイスモデル)を規定している。
■ IEC 61968:61850が変電所内通信プロトコルを規定しているのに対して、61968は電力網と外部システムとのインターフェース管理規格である。
■ IEC 61970:エネルギー管理システム(EMS)のAPI、情報モデル(CIM)とコンポーネントインターフェース仕様(CIS)の規格で、XMLによるメッセージ交換まで考慮されている。

少し古い情報(富士電機発刊:富士時報 Vol.74 NO.12 2001)ですが、IEC TC17で審議中のIEC規格番号と、関連する電力システムのわかりやすい図を見つけたので、以下に掲載させていただきます。


図の拡大

AMIは、この図左上の外部システムの位置づけになるので、スマートメーターは、そのまた先端に位置します。DLMS/COSEM規格は、図中では外部システム内(具体的には、スマートメーターとデータ集約器間)で摘要される規格と考えられます。