今回は、WBB Forumの連載記事『東大のスマートグリッドを実現するグリーン東大の実証実験を聞く!』をご紹介します。

これは、CO2を2012年までに15%、2030年までに50%削減することを目標に東京大学本郷地区の工学部2号館を使用して実証実験を展開中の「グリーン東大工学部プロジェクト」(2008年6月9日発足)の代表、東京大学大学院江崎浩教授へのインタビュー記事です。自分では、海外調査の傍ら、電力系統に関するNEDOその他研究機関の動き、スマート家電や電気自動車まで、日本でのスマートグリッド関連の動きも捉えていたつもりだったのですが、まったく、このグリーン東大プロジェクトの動きを捉えていませんでした。日本語の記事ですので、URLをお知らせして「スマートグリッドにご興味をお持ちの方は読んでみてはいかがでしょうか」ですますこともできるのですが、

  • タイトルに書いたように、すでに実証実験を踏まえたスマートグリッドに関する標準化案を、IETF(インターネット技術標準化委員会)、NIST(National Institute of Standards and Technology:米国立標準技術研究所)、ASHREA(American Society of Heating, Refrigerating, and Air-Conditioning Engineers:国暖房冷凍空調学会)に提案していること
  • その実証実験プロジェクトは、東大だけでなく、通信事業者、放送事業者、通信機器メーカー、空調機器メーカー、照明機器メーカー、制御機器メーカーに至るまで多彩なメンバーが参加し、完全な民営組織で国からは財政的支援はもらっていないこと
  • 江崎教授ご自身が、国際的なインターネット学会(ISOC:Internet Society)の理事でありながら、インターネット技術の標準化組織であるIETFを後援され、また積極的にIETFに標準化を提案され標準文書(RFC 2098、RFC 2129、RFC 3038、RFC 4908等)も発行されていること

など、すばらしい発見があったので、自分の不明を恥じるとともに、もしまだ他にもこの記事をご覧になっていない方がいらっしゃれば、ぜひご覧いただきたいと思い、蛇足になるかもしれませんが、ここでご紹介しようと思った次第です。

WBB Forum 2010/2/15の記事:http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20100215/779

タイトル:東大のスマートグリッドを実現するグリーン東大の実証実験を聞く!(1)

中の小見出し:第1回:CO2を2030年までに50%削減することを目標

≪1≫ 「グリーン東大」は何を目指して設立されたか?
≪2≫グリーン東大は、「日々のくらし系」の省エネをねらう
≪3≫北京オリンピックで、1万8000個のライトをIPv6で制御し10%を削減

構成:「グリーン東大」プロジェクトは何を目指して設立されたか?何を実証実験の対象としているか、どのような成果をあげたのかについてのインタビュー記事

概要:

東京大学本郷キャンパスを実証実験のフィールドとして、CO2を2012年までに15%、2030年までに50%削減することを目標に、東京大学本郷地区の工学部2号館を使用して実証実験を展開中。 いろいろな施設の設備制御管理システムを相互接続し、消費エネルギーのトータルな利用状況を収集、可視化しようとしている。 また、ITを活用して各設備の省エネギーを行うとともに、ITシステム自身の省エネギー化を実現する、両面からの省エネギー化を実証する計画である。東大だけでなく、通信事業者、放送事業者、通信機器メーカー、空調機器メーカー、照明機器メーカー、制御機器メーカーに至るまで多彩なメンバーが参加し、完全な民営組織で国からは財政的支援はもらっていない。

 

  WBB Forum 2010/2/22の記事:http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20100222/782

タイトル:東大のスマートグリッドを実現するグリーン東大の実証実験を聞く!(2)

中の小見出し:第2回:グリーン東大の目指すゴールとシステム構成

≪1≫まず、東大の50億円の電気代を20%削減へ
≪2≫グリーン東大プロジェクトのめざすゴール
≪3≫グリーン東大工学部2号館のシステム構成図
≪4≫まさにスマートグリッド:330カ所から、1,600のデータを収集し制御
≪5≫「君たちの研究室は、電気を使い過ぎだぞ!」
≪6≫蛍光灯にはすべてIPv6アドレスを割り当て、1本1本を制御!

構成:第1回に引き続き、グリーン東大の目指すゴールとシステム構成などが中心のインタビュー記事

概要:

グリーン東大プロジェクトのゴール:
① 2006年度比で2012年に15%、2030年に50%電気代削減
② グリーンITの実現
③ 実証モデルの構築・検証
④ 新たな設備管理手法確立
⑤ 設備関連機器相互接続仕様の作成(これをベースとして、「スマート・ビルディング・コンソーシアム:SBC:Smart Building Consortium」という協議会ができている)
⑥ キャンパス向け省エネ設備調達仕様書作成
⑦ 省エネ効果ベンチマーク仕様書作成)の確認と、実証実験内容紹介(東大工学部2号館のシステム構成、共通データベースに集まっているデータ、ITの省エネとITによる省エネWGと実証実験の構造)

の説明の後、実証実験内容紹介(東大工学部2号館のシステム構成、共通データベースに集まっているデータ、ITの省エネとITによる省エネWGと実証実験の構造)

 

   WBB Forum 2010/3/4の記事:http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20100304/785

タイトル:東大のスマートグリッドを実現するグリーン東大の実証実験を聞く!(3)

中の小見出し:第3回:グリーン東大発のNISTやIETFなどへの標準活動

≪1≫スマート・ビルディング実現に向けた共通通信プロトコルの標準化
≪2≫FIAPプロトコルをIETFやNIST、ASHREAへ提案
≪3≫「グリーン東大」と「NIST」と「IETF」による新しい展開
≪4≫SBCの各関連組織と人脈がつながった!
≪5≫スマートグリッドの「IPの部分をどう実現すればよいか」?

構成:グリーン東大の活動をベースにした、NIST(米国立標準技術研究所)やIETFなどへの国際標準化活動への取り組みに関するインタビュー記事

概要:
スマート・ビルディングの実現に向けて、共通通信プロトコル(図15:CCP:Common Communication Protocol)の標準化と、それを実現する「FIAP」(図16:Facility Information Access Protocol、ファシリティー情報アクセス・プロトコル)というプロトコルの仕様書を作成し、IETF(インターネット技術標準化委員会)とNIST(National Institute of Standards and Technology、米国立標準技術研究所)、ASHREA(American Society of Heating, Refrigerating, and Air-Conditioning Engineers、米国暖房冷凍空調学会)に提案し、標準化の活動を開始した。

また、それに先立って昨年の2009年11月8日から13日まで広島で開催された第76回IETF広島会議で、中小ビルの省エネ用相互接続仕様をつくるためのアーキテクチャ(図17:標準化に向けた参照システムのアーキテクチャ)を紹介。

NISTは、2010年1月19日にスマートグリッドの標準化に関する枠組みである「NIST Framework and Roadmap for Smart Grid Interoperability Standards, Release 1.0」の正式版を発表していますが、「このリリース1.0はどのように評価されていますか。」という問いに対して、『基本的には、現在存在している標準を含めてさまざまなものを整理してまとめたもので、標準化への第1ステップとしてはよくまとまっていると思います。ただ、リリース1.0だけでは、スマートグリッドとしてつながりませんね。現在、欧米ではスマートメーターなどが急速に普及し始めていますが、スマートメーターから収集したデータをオープンなIPネットワーク上で、どのように有効に利用していくかが大きな課題となってきています。これらの課題を解決しながら、NISTのリリースがさらに進化発展していくことを期待しています。』というコメントは、このようにご活躍されている江崎教授ならではだと感心しました。

また、これまで欧州ではスマートグリッドに関連して、IECの様々な標準規格やモデル(CIM)がどんどん整備され、米国でも、NISTがスマートグリッド関連の標準セットの第1版をリリースする中で、日本は立ち遅れているのを心配していました。やっと「次世代エネルギーシステムに係る国際標準化に関する研究会」でスマートグリッドの国際標準化に向けたロードマップが作成され、遅ればせながらNISTやCENELEC、APECと国際標準化に関して連携していく道筋が見えたところかと思っていたのですが、意外や意外、日本のスマートグリッド関連標準規格つくりも着々と行われていたわけですね。

おわり