昨夜、ベタープレイス社主宰の「EVタクシー試乗会ブロガーミーティング」に参加してきました。(http://agilemedia.jp/blog/2010/05/ev.html

プログラムは以下のとおりです。
• 19:30~20:15 ベタープレイスの紹介とビジネス展開について
• 20:15~21:00 今回作成されたEVタクシーと、充電式バッテリー情報システムの紹介
• 21:00~21:30 EVタクシー試乗&バッテリー交換の見学

そのときの模様は、同じくこのイベントに参加されていた川原さんのブログ「川原和博の日記帳」などで早速紹介されているようですので、ここでは別の視点-去年行われたベタープレイスの実証実験との違い-の観点からレポートしたいと思います。

ベタープレイス社といえば、去年(2009年4/27-6/20)横浜市でEVバッテリー交換の実証実験を行っていた(参考:「しなやかな技術研究会」2009/05/01の記事)ので、また同じようなことをしているだけかと思っていたのですが、お話を聞いてみると結構違っていました。

スポンサーと、実証目的が違う

前回は、環境省 次世代自動車導入促進事業として、電気自動車のバッテリー交換ステーションの実証試験です。EVのバッテリーを外部から交換できるようにし、EV初期購入コストをバッテリー費用分安くし、EV導入促進の手立てとするため、バッテリー交換式電気自動車の交換メカニズムの可能性を試すものでした。
今回は、経済産業省・資源エネルギー庁の「電気自動車普及環境整備実証事業 (ガソリンスタンド等における充電サービス実証事業)」です。EVタクシー乗り場が六本木ヒルズにあり、実証事業期間中(2010年4/26-7/31)、日本交通株式会社のタクシードライバーが、バッテリー交換式EVタクシー3台に実際に客を乗せて都内を走っています。
今回のプロジェクトの目的は、「ベタープレイス・ジャパン EVタクシープロジェクト特設サイト」の「このプロジェクトが目指すもの:http://betterplace-jp.com/projects/index.html」に記載されていますが、バッテリー交換のインフラを導入することによって、営業効率を損なわない本格的なタクシーのEV化が、現在のバッテリー技術でも十分に実現可能であることを東京で立証しようという点にあります。

使われたバッテリー交換式電気自動車が違う

横浜の実証実験では、ベタープレイス本社で製作されたものですが、今回の実証事業で使われる3台のバッテリー交換式EVの製作は、神奈川県にある東京R&D社の研究施設で行われています。イスラエルやアメリカのベタープレイス開発部門による基本設計をベースに、信頼性向上が見込める部分やコストを抑えられる個所、生産に時間が掛かりそうなところなど、細部にわたり東京R&D社自ら設計を見直したのが今回の車両の特徴だそうです。
※ 日本でこれらのバッテリー交換式EVを製作した模様は、以前「バッテリー交換式EVタクシーのできるまで」 その1~その5で紹介されていましたが、現在はなくなっています。

バッテリー交換システムが違う

横浜のサイトでのバッテリー交換のビデオ(以下)

と、tnomaさんが昨日バッテリー交換の模様をYouTubeにアップしているもの(以下)を比較してみてください。

今回のバッテリー自動交換装置は、EVタクシー同様、東京R&D社で作成されたものです。実際に、地下のバッテリー自動交換装置の中に入って、目前でバッテリーが全自動で交換される様子を見るのはなかなか壮観でした。また、取り外された方のバッテリーは、自動的に充電用のラックに移動させられ、充電が1時間くらいで終わると、これまた自動で、充電済み用のラックに移動させられるところも、実際に目撃でき、自動倉庫技術の延長なのでしょうが、なかなか良くできていると感心しました。
ベタープレイス社の方の話によると、GMがこのシステムに興味を持っており、米国に逆輸出されるようです。
なお、バッテリー交換ステーションとしては100KWの高圧電力契約をしているそうですが、急速充電装置は、最大消費電力は50KW。この“自動倉庫”には4つの充電用ラックスペースがあるので、そのまま同時に4台のバッテリーを充電しようとすると契約容量を超えてしまいます。そこで、4台の急速充電装置を制御して、充電電圧が契約容量を超えないような制御もされているそうです。

以下、日本で拡張/開発されたIT側の機能として、昨日説明されたものをいくつか列挙しておきます。
写真は、同じく試乗会に参加されたmasakiishitaniさんのものを参照させていただきました。

(タクシー会社向け)運行管理システム:Gridpoint社のスマートチャージ・システムでもフリート管理ポータルが提供されていますが、若干情報量が多い気がしました(あくまでも、感覚です)
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photo credit: masakiishitani

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photo credit: masakiishitani

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photo credit: masakiishitani

ドライバー向けiPhoneインタフェース (カーナビの右横についており、バッテリ残量や、他のEVタクシー情報が表示されるそうです)

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photo credit: masakiishitani

EVタクシー待ちの一般乗客向けiPhone/Webインタフェース (EVタクシーの運行状況がiPhoneから分かります。2番目のは、すでに都バスの停留所でおなじみですが、後どのくらいでEVタクシーが来るかを知らせてくれます)

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photo credit: masakiishitani

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photo credit: masakiishitani

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【感想】

タクシーに目をつけたのは2つの点で正解だと思います。

1つ目は、タクシーだと車種が限定されることです。今回のようにガソリンエンジン車を改造してバッテリー交換式EVに改造するのではなく、できれば自動車メーカーに、もとからバッテリー交換式EVを製造してもらいたいですが、タクシー仕様車としてなら、バッテリー交換式のものを製造してもらいやすいのではないかと思います。

2つ目は、走行距離が長いので、同じ台数が電気自動車となっても、i-MiEVやLeafよりCO2削減効果が高いこと。運輸部門もCO2削減が求められていますので、効果が上がりやすいですね。結果的に、政府や都道府県が導入推進に一役買ってくれる可能性も期待できます。

問題は、バッテリー交換ステーションの普及ですが、ベタープレイス社では、多くのLPガスのステーションが老朽化してきており、“次世代のタクシー燃料” 充填インフラに置き換えるのに、とてもよいタイミングと考えているようです。
これに、LPガスステーションのオーナーがのってくれば、日本交通株式会社の川鍋社長は、環境への取組みに積極的で、かつ、「経済合理性にかなったシステムさえできれば、なるべく早く本格導入したい」そうなので、タクシーという一角からEV化が加速される可能性があると感じました。政府・地方自治体が温暖化対策上、LPG充填ステーションのオーナーにも補助金を出せば、更に弾みがつくのではないでしょうか?

経産省の次世代自動車戦略研究会が4月に発表した「次世代自動車戦略2010」のアクションプランによると、『バッテリー交換システム対象車両として、タクシーやバス路線に限定し、その導入が期待できる』と記されていました。

終わり