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2013年2月21日付で、連邦エネルギー規制委員会(FERC)から『18 CFR Part38 [ Docket No. RM05-5-020, Order No. 676-G] Standards for Business Practices and Communication Protocols for Public Utilities』が公開され、3 月7 日付けの米国版官報(Federal Register)に掲載されました。これに伴い、その60 日後の5月6日より、米国内の系統運用機関(ISO/RTO) は、卸売電力市場/リアルタイム/アンシラリーサービス市場で、いわゆる“ネガワット”を調達するに当たって、FERC Order No.676-G への準拠が義務付けられることになります。
弊ブログ「デマンドレスポンスに関連するもう1つの標準-その1」から「その5」の連載でご紹介した、DRに関する新たな米国内標準がこれで定まった訳です。

本件に関して、自分では、調査を進めながら、順を追ってブログで内容をご紹介してきたつもりですが、

1)FERC Orderの中身は、米国連邦法令集(Code of Federal Regulations:CFR)第18編セクション38.2の内容を改定する-というだけのものだった

2)CFRの改定内容も、北米エネルギー標準委員会(NAESB)卸売電力市場担当部門(Wholesale Electric Quadrant:WEQ)が作成した「デマンドレスポンスの計測と検証(DRのM&V)」に係わる実務規格(WEQ-015)をNAESBが改定したので、改定後の実務規格を新たな米国内標準とするというものに過ぎなかった

3)おまけに、WEQ-015は、NAESBから発行される有償ドキュメントで、著作権上、このブログで公開できる類のものではなかった

4)ただ、WEQ-015の中で取り上げられているDRの計測と検証の手法(ベースラインに関する考え方)に関しては、米国きってのDRアグリゲータであるEnerNOC社の白書『デマンドレスポンスの基準((The Demand Response Baseline)』に、WEQ-015よりも詳しく、わかりやすく説明されていたので、途中、2回に分けて、この白書の紹介を行った

5)その後、再びWEQ-015に立ちかえって、NAESBのホームページで公開されているWEQ-015に関する議事録資料から、わかった範囲でWEQ-015がどのようなものか、その輪郭を紹介した

という複雑な道筋をたどったので、自分で読み返してみても読みづらいものになってしまったと反省しています。

そこで、全5回のブログの内容に、今回冒頭でお知らせした「いよいよ新DR M&Vルールが発効する運びとなった」ところまでを、以下の2つの調査レポートとして、弊社ホームページ本体の調査実績のページに掲載させていただきました。

• 調査レポートNo.26:デマンドレスポンスの基準

• 調査レポートNo.27:FERC Order No. 676-G成立までの経緯と状況

現在、日本でもデマンドレスポンスに対する興味が高まってきていますが、まずは、

• どんなDRプログラムの種類があるのか?

• DRイベントとはどんなものなのか?

• DRシグナルにはどのような情報が盛り込まれているのか?

• DRサーバとDRクライアントはどのようにインタラクションするのか?

といったところに興味が集中して、DRイベント実施後、どのように清算するかまで、議論が進んでいない気がします。

しかし、実際にDRをシステム化するためには、DRのプログラムによっては、DR実施後、各消費者がどれほど需要削減に貢献したかを正確に測定し、貢献度合いに応じて対価を支払うルール作りが非常に重要になってきます。そのルールが電力会社/DRアグリゲータごとに違っていては、DRプログラムに参加する消費者に不平等が生じますし、逆に評価ルールが簡単すぎて、悪意のあるDRプログラム参加者が不当な利益を得るのは、電力会社にとっての損失となるばかりか、回りまわって消費者の電気料金に跳ね返ってきます。

クリティカルピーク価格(CPP)のような変動料金制のDRは、スマートメーターさえ時間帯ごとの使用電力量を正確に測りさえすれば事足りるのですが、直接負荷制御(DLC)やピークタイムリベート(PTR)などでは、「もしDRイベントを発動しなければ、当該消費者はどれほど電気を使っていただろうか」という基準(ベースライン)と、スマートメーターによる実際の電力使用量の計測値の差額を求めなければならないので、DRプログラムによってどのような「基準」が最適か、米国での先行事例を理解しておくことは、参考になると思います。

ご興味を持たれた方は、上記の調査実績のページからダウンロードして、再度お読みいただければ幸いです。

おわり