Winter isolation

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「MISOのDRRとDIR-その5」に引き続き、今回も、MISOの資料「Demand Response Primer and Training Guide」、トレーニングマニュアル「Level200 – Resource Adequacy」、およびマニュアル「BPM-026:Demand Response」をベースに、MISOのDRについて、もう少し詳しく解説していきたいと思います。

前回は容量資源(DRR-TypeⅠ、DRR-TypeⅡ)について、詳しく見てみましたので、今回は負荷変動資源(LMR)と、緊急DR(EDR)を詳しく見てみましょう。

まず、大雑把に分類すると、容量資源は、MISOが日常的に電源と同じように市場調達する、文字通りの「Demand Response Resource = DR資源」で、需給バランシング処理上は供給側の資源扱いなのに対して、LMRとEDRは、緊急時にMISOが調達する非日常的な需要側の資源ととらえることができます。

では、まず、負荷変動資源について見てみましょう:

 

負荷変動資源(Load Modifying Resources:LMR)


LMRには、デマンド資源(LMR-DR)とBTM電源(LMR-BTM)があります。

1. デマンド資源


デマンド資源は、遮断可能負荷(Interruptible Load)や直接負荷制御(Direct Control Load)に相当するMISOからの指示(DRシグナル)に応答できるMISO管内の大口需要家、電力小売事業者(Load Serving Entity:LSE)または小売り消費者のアグリゲータ(Aggregators of Retail Customers:ARC)が提供する以下の条件を満たす資源です。

i) 夏季に年間5回以上、
ii) MISOあるいはLBAから通知を受けて12時間以内に、
iii) 物理的に負荷に割り込みをかけ、連続して4時間以上100kW以上のDR資源提供を行なうことができ、
iv) どれほど資源提供できたかの情報(after-the-fact Metering and Verification Information)の提供が可能な資源

2. BTM電源


i) 夏季に年間5回以上、
ii) MISOあるいはLBAから通知を受けて12時間以内に、
iii) オンサイト発電機などで連続して4時間以上100kW以上のDR資源提供を行なうことができ、
iv) どれほど資源提供できたかの情報(after-the-fact Metering and Verification Information)の提供が可能な資源

※ 10MW以上の設備容量を持つ発電機の場合は、DRR-TypeⅡの発電機同様、毎年、提供できる容量に関する検査(Generations Verification Test Capacity:GVTC)を受け、北米信頼度協会(NERC)が運営する電源稼働状況を保持するデータベースGADS(Generator Availability Data System)に使用する電源の発電実績を登録するため、報告する必要があります。

※ また、DRR-TypeⅡの発電機は、MISOからの発電指令に応答する必要がありますが、BTM電源は、LMRとしてのMISOからの指示に応答すればよいことになっています。

前回のDRR-TypeⅠ/TypeⅡの図と、今回ご紹介しているデマンド資源/BTM電源の図を比較すると、デマンド資源、BTM電源とも、右端のグレーの矢印内のタイトルが「Must Offer」から「Obligation」に変わっていることがわかると思います。 すなわち、LMRの資源は、毎日・毎時間どれほどDRの資源を提供するかMISOの電力市場へ入札する必要(Must Offer requirement)がない代わりに、MISOが緊急事態宣言を出した時は必ず資源提供を行う義務(Emergency obligation)があり、もし提供しなかった場合はペナルティが課せられます。

 緊急DR資源(Emergency Demand Resources)

最後に、緊急DR(Emergency Demand Response)について解説します。

DR資源(DRR-Type Ⅰ/TypeⅡ)およびLMRの要件を満たさないDRの資源でも、MISO管内で緊急事態が発生した場合に利用できるように、緊急DRのタイプが用意されています。

※資源としては、DR資源あるいはLMRの要件を満たすけれども、Must Offer requirementやEmergency obligationに縛られたくない資源保有者が、その資源を緊急DR(EDR)資源としMISOに登録することができます。

MISOにEDRとして登録する際、提供可能な資源量、価格($/MWh)をデフォルト値として登録しますが、毎日、翌日提供できる1時間ごとの容量と提供価格を変更することができます。したがって、LMRと違い、提供容量を前日0としておけば、MISOの緊急事態宣言に対してEDRを提供する必要はありません。ただし、0ではない提供容量値を指定していた場合、MISOからの指令に応じて登録しておいた容量のEDRを提供できなかった場合はペナルティの対象となるようです。

以上、本日はMISOで取り扱うDRの資源の内、非日常的に使われる資源に関してご紹介しました。

これ以上詳しく解説しようとすると、その前にMISOの仕組みをより詳しく説明しなければならず、なかなか、次のDIRにたどり着かないので、とりあえず、MISOのDRのご紹介はこれくらいにして、次回は、いよいよDIR(Dispatchable Intermittent Resource)とは?というところに入っていきたいと思います。

終わり