Bognor Regis sunset

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前回は、NEDOの成果物データベースから、欧米でのVPP誕生当時の状況や、日本企業が絡んだVPP関連の実証についてご紹介しました。

今回は、VPPのビジネスモデルについて考えたいと思っているのですが、その前に、H28年度バーチャルパワープラント構築事業費補助金(バーチャルパワープラント構築実証事業)の採択事業者が7月29日付けで発表されましたので、ちょっと見ておきましょう。
VPP構築実証を行なうA事業者7件、高度制御型DR実証を行なうB事業者19件の事業テーマと代表事業者は、以下の通りです:

※株式会社以外の形態の事業者を「組織」と総称
出典:エネルギー総合工学研究所HP 

出典:エネルギー総合工学研究所HP

B事業は、基本的に昨年まで実施されていたインセンティブ型DR補助金事業の継続実施です。
昨年度は10分前予告DR/1時間前予告DR/1日前予告DRの組み合わせでしたが、今年度は10分前予告DR/1時間前予告DR/4時間前予告DRの組み合わせになっており、また、12月及び1月には、単にこれらの基本DRメニューに加え、拡張DRメニューとしてDR契約容量を上限とする負荷削減量を指定したロードディスパッチ、負荷削減を行なう持続時間延長の追加DR発動と、通知したDRのキャンセル通知のテストが予定されています。また、B事業No.19の早稲田大学では、更に独自DRメニューの実証を計画しているようです。

これに対してA事業は、蓄電池等、電力グリッド上に散在するエネルギーリソースを統合的に制御し、あたかも一つの発電所のように機能させて需要家側のエネルギーリソースを統合的に制御するアグリゲーションビジネスモデルの確立を目指すものということで、まさに本日取り上げようとするVPPのビジネスモデルが焦点となっています。

そこで、今回は、A事業として採択された企業のうち、すでにVPP構築実証への参画についてプレスリリースされている情報をもとに、どのようなVPPシステムを構築して、どのような実証をしようとしているのか見てみようと思います。

関西電力プレスリリース:バーチャルパワープラント構築実証事業への参画について

このホームページの情報によると、従来にない新たなエネルギーマネジメントの実現を目指すとされており、具体的には、従来、電力の需給調整は、火力発電所の稼動・停止等、「供給側」で行ってきましたが、同社を含む14社により実施される実証事業では、晴天時に太陽光の出力が増えた場合など、電気が余る場合はお客さま設備の蓄電池を充電することで需要を創出して今後予見される再生可能エネルギーの出力抑制の可能性を軽減するとともに、供給力不足の場合は、蓄電池から放電を行うなど、「需要側」で需給の調整を行うことを目指す点が強調されています。

別紙1:事業内容の概要を見ると、VPP構築実証イメージは下図のとおりです。

また、VPPシステム構成イメージは下図のとおりとなっています。

この図からわかる通り、VPPとして制御対象リソースとしては、下図のとおり様々なものが考えられており、単なる蓄電池アグリゲータを目指すものではありません。

今回実証予定のリソースをとってみても、蓄電池として定置型(業務・産業用大型蓄電池および家庭用小型蓄電池)、移動型(社用および自家用EV)を制御対象としているだけでなく、蓄電池相当の機器としてヒートポンプ給湯器を制御対象としています。これは米国では「蓄電池をしのぐGrid-Scale Energy-Storage Device」として注目されているもので、CEA(Consumer Electronics Association )2045というHP給湯器制御用標準プロトコルでの実用化がすすめられています。欧州でもスマートアプライアンスに関する新たな標準として、別途国際標準化がすすめられているようですので、国際標準・海外での公知な標準を見据えたシステム開発を心掛けて欲しいと思います。

その他、DR資源もVPPシステムからの制御対象としており、弊社ブログ「VPPとエネルギーリソースアグリゲーション-その1」のVPPカテゴリからしても、理想的な「Mixed Asset-VPP」となっています。

さて、ビジネスモデルに関してですが、当該VPPシステムが提供できるサービス例として以下が記載されていました。
1) 小売事業者向けサービス:計画外に必要となった電力を、アグリゲータが需要調整をすることで捻出し、電力の供給等を行う(DR資源での調節もありうる)
2) 系統運用者向けサービス:需要の創出や供給力の提供により、需給のバランス調整を行なう
3) 再生可能エネルギー発電者向けサービス:アグリゲータが需要の創出を行なうことで、発電抑制を回避する
4) 消費者/コミュニティ向けサービス:エネルギーコストの低減や再生可能エネルギーの自家消費の促進等を行う

下図が、そのサービス提供イメージですが、これらがビジネスモデルとして確立するためには、提供するサービスに関する信頼性の確保と、互いに納得のいく価格設定が重要です。単に技術実証に終わらず、システム構築・維持費、サービス展開に必要な設備機器の開発・維持費が、設定された価格では何年で回収できるのか、そのためには、それぞれのサービス提供者の規模は最低どのくらいでなければならないのかという分析が必要だと思われます。

 

以上、関西電力のホームページに掲載されたVPP構築実証のプレスリリースと別紙の事業内容の概要から紹介しました(というか、並び方を変えて、解説を少し加えただけですが)。

他にも、VPP構築実証事業でプレスリリースした企業がありますが、長くなってしまいましたので、本日はここまでとさせていただきます。

終わり