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前回まで、PJMが2017年6月末公開したペーパー「Demand Response Strategy」の「Markets and Operations」から、PJMが今後エネルギー市場、アンシラリー・サービス市場でDRをどのように扱おうとしているのかをご紹介しました。
今回は、カリフォルニア州、より詳しく言うと、カリフォルニア州エネルギー委員会(California Energy Commission:CEC)がデマンドレスポンスに関して制定しようとしている新たな規則をご紹介しようと思います。

これまで日本では、需要家側エネルギーリソースを活用したデマンドレスポンス/バーチャルパワープラント実証事業だけでなく、再生可能エネルギー出力制御に関してもOpenADRをベースにした実証が行われてきましたが、最近、

  • 米国において、特に「OpenADR発祥の地」のカリフォルニア州において、OpenADR離れが進行しているようだ
  • IECでのOpenADRの国際標準化の動きが暗礁に乗り上げているようだ
  • 日本はOpenADRに肩入れしすぎではないか?

というような話を耳にし、気になっていました。

平成30年3月23日のERAB検討会OpenADRワーキンググループの報告で、過去2回IEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)のPC118(中国の提案により新たにできた、需要家側機器と系統とのインタフェース標準等の開発を目的とするIEC内の委員会)においてCDV(Committee Draft for Vote :投票用委員会原案)が否決されていたOpenADR2.0b のIS化(International Standard化:国際標準化)に関して、次回のCDV投票で賛同される見込みであることが伝えられたことを知り、少し安心したのですが、本日ご紹介するのは、OpenADRアライアンスが実施したWebinar「Title 24 Changes and the Impact on Your OpenADR Strategy」です。

内容は、CECのGabriel D Tayler氏(Energy Efficiency Division)による、カリフォルニア州の新築ビルに適用する新たな省エネ規制(Title24)の発表で、「カリフォルニア州はOpenADRを見捨てたわけではない」ことの査証となるものです。

「ご紹介」しようと思って書き始めたのですが、わざわざ日本語に直してご紹介しなくても、上記の下線部のハイパーリンクをたどって、Tayler氏のスライドを見ていただければ、内容は一目瞭然なので、詳しくはそちらをご覧いただけるでしょうか?
その中で、特に注目していただきたいのは、スライドの20ページです。

原文:
DEMAND RESPONSIVE CONTROL is a kind of control that is capable of receiving and automatically responding to a demand response signal.
All demand responsive controls shall be an OpenADR 2.0a or OpenADR 2.0b Virtual End Node (VEN), as specified under Clause 11, Conformance, in the applicable OpenADR 2.0 Specification.

この「shall」は、かつて中学校の英語で学んだ「You shall die.」の用法の「shall」ですよね?
これを見る限り、CECとしては、州が採用するDRの標準をOpenADRに一本化するように見えます。

ただ、このプレゼンは今年(2018年)1月17日実施されたもので、この時点では「2019 Demand Response Proposal」、つまりCECが作成したカリフォルニア州の建物エネルギー効率基準(California Code of Regulations Title 24、Part 6)の中でのDRに関する提案(Proposal)です。
そして、24ページのスライドを見ると、その後パブリックコメント(45-day Public Review)を求め、それを反映した改定版(Revision)に関して更にパブリックコメント(15-day Public Review)を得て、最終的に12月にカリフォルニア州の建築基準に組み込まれるという手順を踏むようです。

時期からすると2回目のパブリックコメントを反映したものができあがっているころで、 OpenADRアライアンスは、太平洋標準時で6/19(日)の朝8時(日本時間18日午後4時)から 「California 2019 Title 24 Code Update Specifies OpenADR」というWebinarを企画しています。

その開催案内メールによると、「カリフォルニア州エネルギー委員会は、2018年5月9日にカリフォルニア州のエネルギーコード(California Code of Regulations Title 24、Part 6)を更新し、OpenADR 2.0を新築の建物がデマンドレスポンスに対応するためのデフォルトの通信プロトコルに指定した」ということで、「新築ビルはすべからくOpenADR対応せよ」という当初のニュアンスからは後退してしまいましたが、少なくとも「カリフォルニア州はOpenADRを見限ったりはしていない」ことが確認でき、「自称、OpenADRのエバンジェリスト」としては、大いに安堵しています。

本日は非常に短いですが以上です。

終わり

P.S. 

7月10日開催のKNXイベントについて 今年、KNXの日本での活動が5年の節目を迎えました。 そこで、日本KNX協会では7月10日、「IoT・AI時代のオープンなハウス・ビル制御を目指して」というテーマのもと、「日本KNX協会5周年記念イベント」を開催いたします。

なお、KNX協会本部では、最近話題となっておりますホーム・ビル制御におけるセキュリティに対応した製品の市場投入を記念して、世界中44のKNX協会の支部で「KNX Secure Roadshow」の開催を企画しており、日本KNX協会も、この5周年記念イベントを「KNX Secure Roadshow」イベントの一環と位置付け、KNXがホーム・ビル制御におけるセキュリティにどのように対応しようとしているかご紹介させていただきます。 第1部の講演会PART1では、株式会社三菱地所設計の小笠原様、豊田SI技術士事務所豊田様に基調講演をしていただき、PART2ではKNXの最新技術、KNXを使用するメリット、KNXのAI連携について日本KNX協会からご紹介させていただく予定にしております。 

また、第1部の後、第2部として立食パーティ形式の情報交換会も企画しております。

プログラムの詳細につきましては、ここをご覧ください。