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IEAによる各国の地域冷暖房の取り組みの評価-その6

2011年7月10日 日曜日

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少し間が空きましたが、IEAによる世界各国のCHP/DHCの調査・評価報告書をご紹介しています。今回は、IEAで「★3つ」の評価を得ている4カ国の1つ、日本です。
日本のコジェネや地域冷暖房が海外ではどのように評価されているのか、IEAの報告書、「CHP/DHC Country Scorecard:Japan」を見てみましょう。

では、はじめます。

CHP/DHCに関する国別評価:日本編

はじめに

日本は世界で最もエネルギー利用効率の高い国の1つで、輸入エネルギーへの依存度を減らし、気候変動に対応する戦略として、これまで野心的なエネルギー目標の設定を行ってきた。政府の熱電併給(CHP)促進への補助金と減税が推進力となり、過去20年間でCHPの利用度は国内総発電量の4%に達している。更に、政府の研究開発予算により、マイクロエンジンと燃料電池からなる家庭用CHP開発専門の企業クラスターが育成されている。

日本のエネルギー事情

日本は、世界の経済大国中最もエネルギー資源の乏しい国の1つである。
政府のエネルギー政策は、国内の乏しいエネルギー埋蔵量と、高いエネルギー輸入への依存を基本としており、2005年には、必要な化石燃料の81%を輸入で賄っていた。
その後、政府はエネルギー供給構造の多様化を図り、石油、石炭、天然ガス、原子力で全一次エネルギー供給の96%となる、バランスのとれたエネルギーポートフォリオが出来上がった。 (Figure 1)

日本は、エネルギー技術の研究開発にも多大な投資を行い、1970~1990年で大きくエネルギー効率改善を達成し、世界中で最もエネルギー利用効率の高い国となった。 (Figure 2)

気候変動に関する動き

国連の気候変動枠組み条約の下、京都議定書の批准国として、日本は2012年までに1990年比、温室効果ガス(GHG)の6%削減を世界に約束している。
日本の気象変動戦略は、技術革新とエネルギー効率改善に依存しており、次のプログラムおよび目標を含んでいる:

1. 京都議定書目標達成計画が主戦略で、2010年度での天然ガスCHP設置予定4980MW等、60の温暖化ガス排出削減の施策が盛り込まれている。

2. 2005年9月に始められた日本の自主参加型の排出量取引制では、第1期32、第2期は59の参加者があった。これは、将来の義務的排出量取引制度導入に向けてのパイロット的取り組みである。

日本は、京都議定書のクリーン開発メカニズム(CDM)の国際プロジェクトにも参加している。ほとんどのプロジェクトは中国にあるが、環境省および経済産業省(METI)からの委託を受け、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がCDMからのGHGクレジットを購入している。2007年~2013年のGHGクレジット購入予算として122億円の予算が計上されている。

CHPの利用状況

日本はCHPの設備容量で世界をリードする国の1つであり、この20年で飛躍的に設置数が増加している。(Figure 3参照)
2006年時点のCHP設備容量は8700MWe以上で、国内総発電量の4%を占めている。2008年3月に内閣が採択した京都議定書目標達成計画によると、政府は、2010年度での天然ガスCHP設置目標を4980~5030 MWとしている。(現在、およそ4500MWe)
日本で使用されるCHP技術の3大要素は以下の通り:

● ガスタービン 3770MW
● ディーゼル  3080MW
● ガスエンジン 1940MW

産業界での利用

産業用CHPの平均規模は3.3MWeで、全国のCHP設備容量の80%を占めている。 (Figure 4参照)

設備容量では、化学薬品と機械業界が多く、設置数では食品業が多数を占めている。近年、石油価格の高騰の影響でCHPの運転コストが押し上げられ産業用CHP市場は停滞している。

地域暖房としての利用

日本では現在地域冷暖房はあまり普及していないが、今後ますます重要になってくる。
政府は各地にある従来の小規模な地域冷暖房ネットワークの組合せを既存の分散熱資源と接続し、エネルギー・ネットワークを介した地域冷暖房の役割拡張を画策している。これらのネットワークの構築は、日本の京都議定書目標達成計画に含まれており、低金利ローンと補助金対象となっている。

小売り事業者および家庭での利用

商用施設には日本国内で稼働しているCHP総数の71%、設備容量で20%が設置されている。小売業、病院、ホテル、オフィスビルおよびスポーツ施設は、その代表例である。
また、設備容量は小さいものの、日本は、マイクロCHPの技術開発および設置で世界のトップクラスである。

政府のCHP促進施策

燃料価格が高騰してくると、政府による支援なくしてCHPの普及促進はあり得ない。
日本では、これまで固定買取(FIT)制度ではなく、投資補助金および税給付金の形でCHPへの支援が行われてきた。補助金額は、技術的・経済的に妥当かどうか定期的に見直されてきたが、CHPへの継続的な支援が続いている。
以下に主なCHP支援の仕組みを記述する:

A) 10 kW~3000 kWの高性能天然ガスCHP向けの補助金

新エネルギー利用者への支援プログラムとして、天然ガスCHPシステムや燃料電池のような新しいエネルギー・システムを導入するビジネスに補助金を供給するもので、2008年度予算は335.8億円。補助率は導入コストの3分の1までで、最高限度は、天然ガスCHPシステムで5億円、燃料電池では10億円である。

B) 地方での新エネルギー促進プログラム

新エネルギー・システムの導入を計画する地方公共団体に補助金を出すプログラムで、補助対象は、クリーンエネルギー車両、天然ガスCHPシステムおよび燃料電池、再生可能エネルギーのようなエネルギー効率の高い用途のもの。
2008年度のプロジェクト予算は41億5000万円で、導入コストの半分までカバーされる。

C) CHP投資の加速減価償却

エネルギー需給に関連する投資を促進するための税制として、中・小型CHPへの投資ビジネスで7%の減税、あるいは、CHP設備標準取得価格の30%の加速減価償却が認められている。

D) 高性能天然ガスCHPおよび燃料電池に関する研究開発への支援

政府は、家庭用のガスエンジンと燃料電池CHPシステムの研究開発、実証実験および商業化を積極的に支援している。

E) 系統接続手順の簡素化

政府は、第三者への電気供給に必要な管理上の協定用ガイドラインの制定を含め、CHPシステムのグリッド接続用に特別の手続きを導入した。家庭用CHPシステムもグリッド接続用技術標準を満足する必要があるが、電力会社による現地査察をなくしたのである。小型/マイクロCHPシステムのような新興市場を支援するには、系統接続手続きを簡素化し、管理上の諸経費を軽減することが特に重要である。

F) DHC構築用の低金利ローン

日本政策投資銀行は、コストを下げ、DHCへの投資を加速する目的で、HC構築用の低金利ローンを用意している。

ステークホルダー

政府

● 経済産業省(METI):国内のCHP普及に関して責任を持つ
● 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO):燃料電池のような最新CHP技術の開発・促進の責任を持つ

産業

多くの企業がマイクロCHP市場に関係している。以下にそのような関連企業を列挙する。
荏原バラード、パナソニック、ENEOSセルテック、東芝、ヤンマー、ホンダ、アイシン電気、トヨタ および東京ガス、東邦ガス、西部ガス、北海道ガス、日本ガス、日本石油およびコスモ石油。

NGO

● 日本コージェネセンターおよび日本ガス協会は、CHPに関する情報提供と、CHPの普及・促進に努める主要な民間組織である。
● これらの組織は、CHP産業と協力して、2008年7月の北海道のG8会議でIEAの国際CHP/DHC共同事業を支援するため、2008年3月に日本CHP・DHC促進コンソーシアムを創設した。

CHP普及の阻害要因

日本においてCHPが商業的に成功するかどうかは、他の国々と同様、エネルギー価格およびCHP代替物との相対コストにかかっている。日本は、国外からの一次エネルギー輸入に大きく依存しているので、燃料価格の高いことが特徴となっている。(輸入した)化石燃料を使って発電のみを行うよりCHPにした方が有利になるが、一方、化石燃料を用いたらCHPも運用コストが嵩むので、日本のCHP運用コストはG8の他の国々と比べて非常に高い。
したがって、CHPで使用する燃料に何を使うかが重要である。現在CHP設備容量の1/3は石油を燃料としているが、環境にやさしく、石油に比べれば価格変動も少ないガスやLNGベースのCHPが増加してきている。今後のLNG価格動向が気になるところである。
これらの経済面での阻害要因の他に、日本でのCHP普及の阻害要因として、以下が考えられる:

環境政策におけるCHPに対する認識不足

環境上の利点、特に、CO2排出削減に関してCHPシステムが寄与するということが、まだ日本では正確に認識されていない。
温室効果ガス排出削減の切り札としてCHPが認識されれば、更なるCHP利用増が期待できる。

マイクロCHPの技術障壁

家庭用CHPが普及するかどうかは、マイクロCHPユニットが十分価格競争力のある値段で提供できるかどうかにかかっている。
家庭用燃料電池については、更なるコストダウンとユニット寿命および効率アップが望まれる。
2008年3月、政府は、家庭用CHPに関して、kW当たり40万円へのコストダウン、製品寿命は2倍、発電効率は10%アップする開発目標を立てた。
家庭用CHPを普及させるためには、これらの目標を達成することが非常に重要である。

産業用CHPおよび業務用CHPのための障壁

現在、燃料費が高くなっているにもかかわらず、電力会社がCHPの余剰電力を買取る価格はそれほど高くない。そのため、たとえ、他のユーザーあるいはネットワークに熱と電気を供給することができたら全体としてより大きな恩恵が受けられるとしても、ほとんどの日本のCHPプラントでは自家消費する分しか電気と熱を作らない。
しかし、CO2排出量削減の重要性への認識の高まりが、この問題克服のカギとなるかもしれない。

DHC / エネルギー・エリア・ネットワークのための障壁

DHCネットワーク構築に要する初期投資が嵩むことが、一番の課題である。
六本木ヒルズ・プロジェクトのように、小規模の熱供給ネットワークにとどめる現在のアプローチは、この障壁を克服するための1つの方策ではある。

CHPのポテンシャル

2008年3月、METIは、燃料電池の利用を含め、2030年までにCHPの設備容量が16.3 GWeに達するとの予測を発表した。この潜在的なCHP設備容量の伸びを反映して、京都議定書目標達成計画の中には、2010年までに天然ガスCHP容量4980 MWeを新設すると記載されている。
IEAの国際CHP/DHC共同事業は、もし日本政府の強力な支援があれば、日本におけるCHPは、2030年に199TWhの電力供給能力を持つことができると推測している。
本報告書を含め、G8および他の5つの経済大国でCHP使用が増加すれば、以下のような便益が得られると予想している:
● 今後2030年まで、エネルギー投資コストを3-7%減少できる
● 消費者の電気代が少しだけ安くなる
● 2030年までにCO2排出量がおよそ10%削減できる

日本でCHP/DHCの真価を発揮させるには

過去20年以上にわたって、日本は、CHP/DHC市場を大きく育んできた。
IEAは、日本がこの努力を継続し、以下を遂行することで、真のCHP/DHCの恩恵に浴することができると確信している:
● 政府支援の維持・拡大
● 更に効率的な燃料電池を開発するため、革新的な研究開発プログラムを展開し続ける
● 業務用および産業用CHPに適したエンジン、タービン・システムを含め、CHP技術に関して、より広範に支援を行うための新しいプログラムを始める

IEAからの政策提言

市況を反映した補助金と税制面での優遇措置

日本は、税制面および補助金の支給で新規のCHP設置を経済的にバックアップしてきた。CHP・DHC市場の成長を継続・加速するためには、燃料費の変動と、比較的低価格の電気料金を考慮した補助金額の調整が不可欠である。

新しいCHP/DHC技術の開発・導入

家庭用CHPプログラムは軌道に乗っており、将来大成功を収めるポテンシャルを持っている。そのポテンシャルを実現するには、燃料電池その他の研究開発プログラムを継続するとともに、成熟してくる様々な技術について新たな実証と商用化に向けたプログラムの実施が望まれる。

CHP/DHCの恩恵を最大化するため、既存エネルギー・ネットワークを利用

家日本は既にCHPによってCO2排出削減・コスト削減を達成している(=個別最適)が、地域のエネルギー・ネットワークおよび配電網を利用した、面としてのエネルギー・ネットワークの展開が重要で、それにより、CHPのもたらす恩恵を最大化することができる。
それには、CHPで発電した電力が、CHPプラントオーナーにとって利益の出る価格で電力会社に買い取られる仕組みが必要である。

CHP/DHCと気候変動政策

CHP/DHCのサイトごとではなく、CHP/DHCのある地域ごとに温暖化ガス排出削減効果が確認できれば、排出量取引の仕組みをCHP/DHCの普及促進ツールとして利用することができる。排出量取引に関しては、欧米で採用されている限界排出係数(marginal emission factor)を研究するべきである。

同じようなエネルギー問題に直面している他の国々への協力

日本は、先進的で高効率のエネルギー利用技術を持っているので、同じく高効率CHP/DHC開発を目指す他の国々は、分野を横断してCHP開発・促進にあたった日本の経験から、多くを学習することができる。

日本のCHP/DHC評価

総合CHP評価:★★★☆☆

マイクロCHP/燃料電池の評価 :★★★★☆

以上、IEAの「CHP/DHC評価報告書:日本編」をかいつまんでご紹介しました。事例などを含め、全訳(に近い)日本語訳も用意してありますので、ご興味をお持ちの方は、ここからダウンロードしてお読みください。

この報告書が作成されたのは、2008年6月末頃のようですので、その後の日本の状況を確認しておきましょう。
以下は、一般財団法人コージェネレーション・エネルギー高度利用センターのホームページの情報を再掲させていただきます。まず、2010年3月現在の日本でのCHP導入状況を見てください。

下記の燃料種別導入実績を見ると、日本におけるCHPの設置台数は、順調に増えているものの、京都議定書目標達成計画に盛り込まれた2010年度の天然ガスCHP設置予定数4980MWに対して、実績値は266MW(約1/20)にとどまっています。


また、報告書の「CHPの利用状況」にある原動機種別に関しては、下記の2010年3月末時点の原動機種別導入実績と比べると、ガスタービン(3770MW→4050MW)、ガスエンジン(1940MW→2297MW)が伸び、ディーゼル(3080MW→3054MW)がわずかに減少していることがわかります。

※表の中段(赤線枠内)は、項目名が「導入台数(kW)」となっていますが、1つ前の燃料種別・累積容量の表にある合計値9,440MWと小計の値が同じなので、累積容量(MW)のデータであると思われます。

小売り事業者および家庭での利用も報告書作成時点より伸びています。

民生用CHP導入件数の全CHP導入件数に占める割合は、71%→約75%。ただし設備容量では、産業用を含めた全CHP設備容量の20%→21%弱と、微増にとどまっています。

次に、地域冷暖房(上記の2つのグラフ中「地冷」)に注目すると、2010年3月末現在で件数割合が1%にも拘わらず容量割合では16%を占めており、CHP導入1件当たりの発電容量は4498kWと、他の民生用CHPと比べて破格の大きさであることがわかります。ただ、2010年3月末時点でも、地域冷暖房の導入件数が民生用の1%(71件)、発電容量319.4MWにとどまっているのはさびしい限りです。

地域冷暖房の現状についてですが、「まちづくりと一体となった熱エネルギーの有効利用に関する研究会」 第1回資料5によると、下図の通り、熱供給事業者は、平成22年時点で84社、許可地点数は145地点。その多くは都市部に位置していて、平成17年以降、事業者数・地点数ともに微減傾向にあるそうです。

また、同資料で、近年、販売熱量の減少傾向が続いていることも指摘されており、その背景として、化石燃料価格の高騰やリーマンショック後の景気後退、需要家の省エネ意識の向上、個別熱源機器の性能向上などが挙げられています。(下図参照)


※なお、この図を見ると、これまで見た海外のIEAのCHP/DHC評価報告書では、DHCと言っても地域暖房(DH)が主でしたが、日本では、すでに地域冷房の割合が多いことがわかります。

この2つのグラフを見ると、日本でのDHCの将来が不安になってきますが、「まちづくりと一体となった熱エネルギーの有効利用に関する研究会」は、『熱供給事業法の対象となる地域冷暖房、地点熱供給や建物間熱融通などを検討対象とし、いわゆる「エネルギーの面的利用の推進=京都議定書目標達成計画の中での表現」を目指す研究会』ということなので、正にこの問題に取り組むための研究会と言えます。さる7月4日に第6回会合があり、中間とりまとめ(案)が検討されていました。研究会は、これまで課題を洗い出し、今後の方向性を検討する上で論点を整理するところまでを行い、この「中間とりまとめ」の報告書を作成して、後続にバトンタッチするようですが、エネルギー利用効率を向上させるため、今後の地域冷暖房の発展に期待したいと思っています。

最後に、日本のコジェネ(CHP)はこのままでよいのでしょうか?

この、IEA国際CHP/DHC共同事業がまとめた、主要国のCHP普及予測(Major economies’ CHP potentials under an accelerated CHP scenario, 2015 and 2030)を見ると、2005年時点ですでに日本はG8その他主要5カ国平均CHP設置容量を下回っており、2030年時点では、原子力発電に力を入れているフランスと並んで、南アフリカやブラジルよりCHP後進国になってしまっています。

IEAのCHP/DHC評価で「★3つ」の意味は、『国としてCHP/DHCの役割をハッキリ認識し、CHP/DHC市場を加速するための施策も打たれているが、他のエネルギーソリューションと比較すると、優先順位が低い。さらに、CHP/DHCの統合戦略に欠いているので、CHP/DHC市場の成長は緩やかである。

なるほど!と、頷かざるを得ません。

3.11以降、原子力行政が見直される中、CHP普及に関しても、積極的な促進政策が必要だと思われます。

そして、「まちづくりと一体となった熱エネルギーの有効利用に関する研究会」と、それ以降の動きをこれからも注視していきたいと思います。

昨年、IEAによる各国の地域冷暖房の取り組み評価の報告書群に遭遇した時、(自分が知らなかっただけかもしれないのですが)こんな情報が埋もれているのはもったいない、ブログで紹介しようと思い立ちました。しかし、報告書の翻訳作業負荷が結構大きいので、とりあえず、「IEAによる各国の地域冷暖房の取り組みの評価」をご紹介するブログシリーズは、これで終わりにしたいと思います。

終わり

IEAによる各国の地域冷暖房の取り組みの評価-その5

2011年6月24日 金曜日

© Copyright Penny Mayes and licensed for reuse under this Creative Commons Licence.

IEAによる世界各国のCHP/DHCの調査・評価報告書をご紹介していますが、デンマーク、フィンランド(★5つ)、ドイツ(★4つ)に続く、「★3つ」の評価を得ている国は、オランダ、韓国、米国、および日本の4か国です。それぞれの評価報告書をざっと読んでみたのですが、今後の日本でのCHP/DHC普及促進を考えた場合、米国のたどってきた道筋を確認しておくことが非常に有益だと思いますので、今回は米国のCHP/DHC事情をご紹介します。

原文は、「CHP/DHC Country Scorecard:United States」ですが、結構な分量になりますので、ブログ上は、同レポートを抜粋してご紹介します。事例紹介を含め全訳版(に近いもの)も作ってありますので、興味のある方はここからダウンロードしてご覧ください。

では、はじめます。

CHP/DHCに関する国別評価:米国編

はじめに

アメリカは、 CHPの使用に関して長い歴史を持っており、現在設置されている3300以上のCHP設備容量は85GWで、全米の発電設備の8%に相当する。
多くの主要都市、330 の大学キャンパスで、低炭素分散エネルギーソリューションである大規模な地域冷暖房システムが稼働している。
米国で CHP 設置が進められたのは、1970、80 年代に制定された PURPA(Public Utilities Regulatory Policy Act)を含む一連の連邦政府の法案で、電力会社がCHPプラントの発電する電気を定額で買い取ることを定めた結果である。
更に、カリフォルニアや、ニューヨークその他米国北東部の多くの州は、CHP が環境規制に貢献するとの認識のもと、新たな CHP設置へのインセンティブを与えた。 しかしながら、PURPA の部分的な廃止や、州ごとに支援の度合いが違うことから、現在、米国内のCHP/DHC普及状況にはばらつきがある。

その結果、今後米国がCHP とDHCを有効活用し、温室効果ガス(GHG)およびエネルギー問題の解決を図るためには、解決しなければならない大きな障害が横たわっている。

米国におけるCHP/DHC発展の歴史

産業分野や地方自治体で使われている分散CHPシステムは、米国における初期の電気事業の礎であった。しかしながら、発電技術が進むにつれて、電力業界は「規模の経済」の優位性を活かし、大規模集中型発電設備を建造し始めた。CHPは、製紙、化学薬品、精製、製鋼など、定常的に大量の蒸気と電力需要がある一握りの産業で限定的に用いられるようになり、1970 年代までに、米国電力市場は、大規模で発電のみを行うプラントによって席巻された。その結果、CHPを含め、需要家のオンサイト発電を促進するインセンティブが働かなくなり、更に州や連邦政府が制定した多数の規制が障害となって、CHP/DHC にとっては不遇の時代が続いた。

流れが変わったのは、石油危機の勃発である。1978 年、米国議会は、エネルギー利用効率改善のため、公益事業規制政策法(Public Utilities Regulatory Policies Act:PURPA)を通過させた。PURPAの規定は、電力会社の系統に良質の設備(qualified facility:QF)を接続することを義務付け、高効率CHP や再生可能エネルギーを利用した小規模発電設備の普及を促進した。ただし、CHP 設備がQF と認められるためには、燃料別に定められた発電効率の水準を満たさなければならなかった。PURPA は、電力会社がQFに対して合理的なスタンバイ/バックアップ料金を設定し、かつ、それらの設備の余剰電力を電力会社が回避可能原価(avoided cost)で購入することも義務付けている。更に、 QF を公益事業持株会社法(Public Utilities Holding Company Act)の規制対象外とし 、燃料使用法(Fuel Use Act)による天然ガス使用制約の対象外とした。そして、PURPAの施行に引き続いて、議会は一連のCHPに対する税制上の優遇措置の法制化を実施した。その中には、10%の期間限定投資額控除(limited term investment tax credit)や、CHP システムに対する減価償却期間の短縮等が含まれている。これら、PURPAの施行と一連の税制優遇措置によるCHP設置拡大には目を見張るものがあり、CHP 設備容量は、1980 年の約12GWから2000年には 66GW以上に増加した。

ただ、 PURPA はCHP の普及を促進する一方で、意外な結果を生み出した。大規模で、より効率的、低コストの燃焼タービン(combustion turbine)や複合発電(combined cycle)が広く使われるようになったのである。これらの技術は、従来のボイラー/蒸気タービンを用いたCHP システムと比較すると、熱出力に比例した大量の電気を生産することができので、結果的に、大規模商用CHPプラントが建造される結果となった。

政府は、熱市場ではなく電力市場への参加に興味を持つ大規模CHP 事業者を取り込むべく、米国電力産業誕生以来初めて、電力市場に公益事業ではない発電会社の市場参入を認めた。その結果、100MW以上の大規模CHP 設備が、産業用の設備とともに劇的に増加した。

今日、米国CHP設備容量の約65%(55GW)が100MW以上のプラントである。Figure 3 は、1950年以降のCHP設備容量の累積値の伸びを示しているが、1980年代後半に急激な成長を遂げていることがわかる。

1990年代後半の電力卸売市場の規制緩和の到来で、流れは再び変化した。1つは、QFの認可を得られなかったCHP 設備を持つ事業者でも、独立系発電事業者(Independent power producer:IPP)として、市場に直接電気を売ることができるようになったのである。その一方で、全米各州での電力市場再構成(規制緩和)に向けての動きは、今後の電力ビジネスの不確かさを招き、投資への手控えが起きて、CHP発展スピードは遅くなってしまった。更に天然ガス価格高騰が重なり、 CHP発展の足を引っ張る結果となった。

ところが、1990 年代の終わりになって、熱エネルギーを有効利用するCHP の効率の良さと温暖化ガス排出削減の利点が見直されるようになった。米国の将来を担う低炭素エネルギー社会の立役者として、分散型CHPシステムが再・再認識されたのである。その結果、連邦政府やいくつかの州では、CHP 普及促進の処置を講じ始めた。

米国エネルギー省(DOE)および環境保護局は、CHP にターゲットを絞り、2000 年から2010 年の間にCHPを設備容量で 92GW増加させる目標を立てた。目標達成のために必要な研究開発の支援に加えて、DOE は、8つの地域CHP 応用センターを設立して、CHP普及促進のため各地域での技術援助および教育支援を行うことを決め、2001年に最初のセンターを開設した。同じく 2001 年、環境保護局でコスト効率の良いCHPを使うプロジェクトの推進とCHP 利用拡大に向けて、CHPパートナーシップ・プログラムを立ち上げている。

各州でも、CHP普及への障害を取り去るべく、様々な政策措置が必要であることを理解し始め、一連の政策やインセンティブ制度を展開した。その中には、CHP の系統接続条件の合理化、環境上の許可手続きの簡素化、需要家(一般市民)がCHP 建設に出資できる仕組みの確立などが含まれる。

米国におけるCHP/DHCの現状と適用分野

CHP/DHCは、米国にとって重要なエネルギー供給設備である。
現在設置されている3300 以上のCHP 設備容量は 85GW、全米の発電設備の8%に相当するが、稼働時間が長いので、CHP が提供する電力は、年間の全米発電量の 12%以上に相当する。
CHPはいろいろな分野で使われているが、産業用が88%で、 Figure 4に示したとおり、化学薬品、製紙、精製、食品加工、製鋼のような、定常的に大量の蒸気と電力需要がある産業で特に利用されている。
商用ならびに特定施設内での利用は限定的(既存設備容量の12%)であるが、病院、学校、大学のキャンパス、事務オフィス、マンションへの電力、温熱、更に冷熱供給は増えてきている。

ガスタービンや複合発電(combined cycle)システムが広く使われるようになった結果、CHP 燃料としては天然ガスが大勢を占めている。すなわち、米国のCHP 設備のうち、天然ガスを燃料として使用するものが、CHP 設備容量の 72%を占め、石炭が14%、食品などの加工廃棄物が 8%で、バイオマス、まき、油、その他の廃棄物燃料がそれに続く。

近年、政策立案者側では、バイオマスおよび廃棄物燃料への関心が高まっており、消費者は再生可能燃料資源の使用に興味を持っている。

Figure 5を見ると、CHP設備容量のうち複合発電(Combined Cycle)が52%、ガスタービン(Gas Turbine)が 14%。ボイラー/蒸気タービン(Boiler/Steam Turbine)は 33%で、石炭、まき、木くずのような固体燃料が使われている。主に天然ガスを燃料とするエンジン駆動(Recip Engine)のCHPは、米国では2%しかない。残り1%にはマイクロガスタービン(60~250kW容量の再生ガスタービン)、燃料電池、その他、有機ランキンサイクル(Organic Rankine Cycle)のような技術が含まれている。

Figure 6は、設置数ベースでのCHP技術のマーケット・シェアを示したものである。 設備容量では 2%しかないエンジン駆動のCHPが、現在でも米国では一番多く47%を占めている。一方、燃料電池(Fuel Cell)やマイクロタービン(Microturbine)のような新興技術の CHP設置台数の合計は、8%と健闘していることがわかる。

米国内のCHP サイト分布、およびCHP 設備容量には著しい地域格差がある。CHP普及促進政策が州ごとに異なっているのがその一因であるが、ニューヨーク州およびコネチカット州は、 CHP設置のための財政援助その他インセンティブで抜きんでている。 また、産業の発達度合いが州によって異なっていることも一因である。例えば、化学薬品や精製業は湾岸沿いの州に多く、製紙業は南東部の地域に多い。Figure 7 の地図は、各州にある最大の CHP 設備容量を比較したもので、5GW以上の設備容量のCHPを保有する州は濃い青、1GW以上の設備容量のCHP を保有する州は濃い灰色、1GW未満の設備容量のCHPしかない州は薄い灰色で示した。

産業及び商業分野での利用

米国の産業用CHP 設備は、概して大きく、米国総発電容量の78%を占めているが、近年、産業用大規模(20MW以上)CHPシステムの設置は制限されている。理由は、天然ガス価格の高騰と、すでに多くの州で必要な設備容量を超えてしまったからである。
しかし、電力会社の電気料金が上昇し、電力会社の発電予備率は低下してきているので、産業用大型CHP 市場は再び活発化してきている。また、バイオマスその他の代替エネルギーにも関心が集まっている。
商用設備におけるCHP設置数は、全米CHP サイトの 55%を占めるが、設備容量で見ると12%しかない(Figure 4 参照)。商用CHP設備は、産業用の設備よりはるかに規模が小さいからである。しかし、商用、特定施設(および軽工業用)の CHP は、今後米国での成長市場になると思われる。

地域冷暖房

米国の地域冷暖房(DHC)システムは、人口密度の高い大都市の商業中心地区と、病院、大学/研究機関のキャンパス、軍事基地、空港などの特定施設に多い。DHCシステムは、複数の建物の「塊」に対してサービスを提供していることが多いが、特定施設の建物群では、民間不動産会社や、公立大学、病院など共通の所有者であることが多い。しかし、ダウンタウンの商業中心地区では、ビルごとに個別の所有者がいることも多い。そのような場合も、商業中心地区等ではビルが隣接していて、熱導管ネットワークにそれぞれのビルが接続されている。 (都市計画に基づいて建設されているから?)
2、3棟のビルでボイラーと冷房設備を共有するものから、数十のビル群にサービス提供するDHC システムまで合わせると、米国には数千の DHC 設備が存在する。 大規模DHC システムは、2つの主要市場セグメントがある。すなわち、ダウンタウンのDHC システムと、大学キャンパスの DHC システムである。現在米国には、72のダウンタウンDHCシステムがあり、合計18.88 億平方フィートのエリアにサービスを提供しているが、それらのうちの36のDHCシステムでCHPが使われている。システムのヒーター容量は50000MMBtu/hr、100万トン以上の冷却能力、2300MW近くのCHP発電能力がある。
一方、全米330 の大学キャンパスの DHC システムは、合計24.87 億平方フィートのサービスエリアを持ち、約 3分の1 のDHCシステムで CHPが使われている。ヒーター容量65000MMBtu/hr、約200万トンの冷却能力、および約 2200MWの CHP設備容量を持っている。

連邦/州政府のCHP普及促進政策

現在、CHP普及促進政策は、思わぬところで足止めを食っている。
2005年のエネルギー政策法(Energy Policy Act of 2005)は、2つの新 CHP 技術(燃料電池とマイクロタービン)、および再生可能エネルギーを用いた発電に対して期間限定の税制上優遇措置を定めた。2007 年エネルギー自給・安全保障法(Energy Independence and Security Act of 2007)でも、CHP/DHCのために多くの助成プログラムその他のインセンティブを定めている。ところが、米国議会は、それらのプログラム実施に必要な資金を充当するための法律をまだ制定していないのである。

国に代わって、多くの州政府が、エネルギー利用の効率化、再生可能エネルギーおよびCHPへの大規模投資を目的とした政策・プログラムを展開している。

このような、州政府による重要なCHP 普及促進イニシアチブには、次のものがある:

生産量ベースの規制(output-based air pollution regulation)

生産量ベースの公害規制では、大気汚染量と生産量を関係づけるので、大気汚染の制御および防止措置として燃料転換効率の良い設備の使用が促進される。したがって、この規制では、熱と電気の両方を生産する CHP/DHC は、エネルギー効率の良い、環境にやさしいシステムと認識される。
近年、市場ベースの規制(主にGHG排出量のキャップ&トレード・プログラム)が多くなっているが、いくつかの州は、CHPシステム(特に小型システム)の熱出力に関して、生産量ベースの規制を導入している。また、いくつかの州では、電気と熱出力に対して生産量ベースの規制を採用し、CHP/DHCのような高効率ユニットに大きなインセンティブを与えている。

系統接続基準(interconnection standard)の確立

CHP を導入し、基本的に自前で必要な電気を賄う場合でも、万一に備えて電力会社からの電力補給を受けたり、定常的に必要な電力補給を受けたり、場合によっては余剰電力を電力会社に売ったりするためには、電力会社の系統に接続する必要がある。
そこで、州の規制機関は、系統接続するための画一的な手順と相互接続用技術的要件を確立し、CHP事業者の系統接続をしやすくしている。

CHP 普及促進の障害の除去

CHP ユニットの系統接続にあたって、電力会社は、電力補給料金、万一のバックアップのためのスタンバイ料金、CHP の余剰電力買取料金などとして、特別料金を設定する。もしそのような特別料金が適切でなければ、CHP 普及促進の障害となる。電力会社で必要なコスト回収ができる料金設定であるとともに、クリーン・エネルギーの供給を推進するため、適正な特別料金設定であることが求められる。カリフォルニア、ニューヨーク、ニュージャージー、メイン、オレゴンおよびウィスコンシンのような州では、電力会社が収益性を維持し、かつ、需要家サイトでのCHP利用を促進するには、どのような料金体系が良いか試行している。

CHP 事例による先導

州によっては、州設備の省エネ達成プログラムを率先して実施し、CHP普及促進のリード役を果たそうとしている。例えば、マサチューセッツ州では、州関連のビルはCHPを導入し、率先してCHPの有効性を実証する役割を果たすよう、州令が出されている。

ステークホルダー

連邦政府

● 米国エネルギー省(DOE)

DOEは、商業ビル市場のコンソーシアムその他様々な産業と組んで、CHP技術開発、実証および実展開をリードしてきた。技術的・財政的援助をするばかりでなく、ベストプラクティス情報の提供や教育・訓練を実施し、CHP/DHCの市場への浸透を支援している。

● 米国環境保護局(EPA)

気候変動を緩和する戦略の1つとして、高性能CHP技術を促進するため、EPAは2000年に「CHPパートナーシップ(http://www.epa.gov/chp/funding/funding.html)」を開始。ユーザー、CHP産業、州・地方自治体その他のクリーン・エネルギー関係者と連帯して、CHPを普及させるための新規プロジェクトを支援している。

州政府

これまで、CHP普及促進に向けた、経済上・規制上・その他制度上の阻害要因の排除は、州政府にゆだねられてきた。その結果、州によって、州公益事業委員会(PUC)、州政府のエネルギー課、州知事、州立法府等、異なった組織がイニシアチブをとって電力系統接続規定や再生可能エネルギー・ポートフォリオ基準(RPS)、環境許可問題(environmental permitting issue)など、助成策や規制緩和などを実施した結果、米国内のCHP市場はまだら模様となってしまった。

産業

既に多くの企業が米国のCHP市場に深く関わり合っているが、装置メーカーや、都市開発事業者等、新規市場参入者が後を絶たない。
代表的な装置メーカーとしてSolar Turbines、 General Electric、Caterpillar、Capstone Turbines、United Technologies、Ingersoll-Rand、Tecogen、Cummins、Siemens-Westinghouse、Elliot Turbines、 Fairbanks Morseがある。

NGO

● 米国クリーン・ヒート&パワー協会(United States Clean Heat and Power Association:USCHPA)

USCHPAはクリーンで高効率なローカル・エネルギー生産の成長促進に関心を持つ企業・団体・個人の集まりである

● インターナショナル地域エネルギー協会(International District Energy Association :IDEA)

IDEAは、効率的な地域エネルギー(DE)利用を通してグローバルな環境品質向上を目指す団体である
IDEAは、DE専門家を育て、協会員企業のDEに関するマーケティング活動を支援し、DEに好意的な政策、法律制定および規制が行われるよう活動している。

● 地域CHP応用センター

DOEの予算で設立・運営されている組織で、CHP技術援助、トレーニング、教育その他の支援を提供している。更に、いくつかのセンターでは、特定のマーケット・セグメントを対象としたCHPの調査や、その地域のCHPプロジェクトの設置に関する実体的な技術サポートを実施している。

● 米国エネルギー効率経済協議会(American Council for an Energy Efficiency Economy:ACEEE)

ACEEEは、CHPを含めエネルギー効率に関する話題について詳細な技術評価・政策評価を行い、政策決定者やプログラムマネージャーに助言を行う。

CHP普及の阻害要因

米国でのCHP/DHC普及促進に対する規制や市場の阻害要因には以下のものが挙げられる:

相対的なエネルギー価格と不確実性

他の国同様、燃料と電気の相対価格および代替コストは、CHP/DHCが商業的に存続できるかどうかに重要な影響を及ぼす。
CHPプロジェクトに有利なのは、電気と燃料のコストの差として定義される「スパーク・スプレッド」が高い状況である。すなわち、電気料金が高く、燃料価格が低い状況でCHPはもっとも経済的となる。ところが、近年、燃料価格は非常に不安定なので、CHPへの投資は危険すぎると判断せざるを得ない環境が出来上がっている。

系統接続

最終的なCHP市場成功の鍵は、安全に、高信頼度で、かつ経済的に、電力会社の系統に接続できる能力である。ところが、現状では、系統接続基準が統一されていないので、装置メーカーは製品のモジュール化が行えず、オンサイト発電へのCHP適用の経済的阻害要因となっている。

電力会社の料金体系

電気料金体系およびCHPの発展に対する電力会社の態度は、CHPの事業運営に大きな影響をもたらす。そもそも、電気料金体系は、販売電力量と電力会社の収益を結びつけるものであり、電力会社にとって、CHPその他のオンサイト発電促進を阻害するものになりがちである。電力会社が、CHP事業者に提供するサービス・コストを基本料金および従量料金できっちり回収するような料金構成にすると、CHPが本来持つ経済節約ポテンシャルを縮小してしまいがちである。

スタンバイ/バックアップ料金

電力会社は、CHP事業者やオンサイト発電事業者から(ともすれば突然の連絡で)バックアップ電力供給要求が行われることを考慮し、いつでも発電、送電あるいは配電できる状況を維持するに足るコストを算定し、それをもとにスタンバイ/バックアップ料金を設定する。ところが、このような料金設定が、意図せずとも、CHP普及拡大への障害となっている。

課税政策

CHPのような新規オンサイト発電設備への投資を行う場合、課税政策が投資の足かせとなることがある。
CHPシステムは特定減価償却対象外の設備なので、減価償却年数は、5年~39年となる。この減価政策がCHPプロジェクトへの投資に水を差し、資金集めを困難にして、CHP普及拡大の妨げとなっている。

CHPのポテンシャル

DOEは、今後、米国には70~90GWの産業用CHP、40~60GWの商用/特定施設用CHP、合わせて、110~150GWのCHP設備が増設されるポテンシャルがあり、毎年4~6億MtのCO2排出量削減できる可能性があると予測している。
CHPが増加するポテンシャルとして以下が想定されている:
● CHP増加の約半分は商用/特定施設用CHPである
● CHP増加の半分以上が5MW未満のシステムにある
● これまでCHPを利用した経験が限定的な分野に今後のCHP増設が期待できる

米国でCHP/DHCの真価を発揮させるには

米国は、2000年代初頭、著しくCHPの利用が拡大したが、その多くは大規模産業用システムで、余剰電力は電力卸売市場に売りに出された。しかし、天然ガス価格高騰により、近年その流れはスローダウンしている。CHP市場は、米国北東部、カリフォルニア、テキサスのような、電力小売価格が高く、州レベルでCHP普及促進政策を持つ州の、20MW以下の小型商用/産業用システムにシフトしたようである。
米国でCHP/DHCが真価を発揮するためには、継続的な技術革新と、CHPはエネルギー効率が良く地球温暖化対応としてCO2排出量削減に寄与することを明確に認識すること、そして規制や制度上の障害を取り除き調整する作業の継続が必要である。

IEAからの政策提言

連邦政府のGHG関連の法案とプログラムでたなざらしとなっているものがあるが、CHP/DHCおよび廃熱回収は、エネルギーを効率的に利用する上で重要な選択肢であることを理解すること。また、提案されているキャップ&トレード・プログラムの下でのCHP/DHCの取扱いには特に注意すること。

CHP/DHCの更なる技術調査、実証および実展開(特に新興技術であるバイオマスと中小型CHP)への支援を行うこと。

以下のような規制/政策の変更を通して、CHP/DHCが活躍できるよう地ならしするのを助けること。:

● 標準化した系統接続規則を制定する
● 電力会社が提供するサービスのコストに見合いつつも、CHP/DHCがもたらす利点を十分考慮した価格設定となるよう、透明性のあるスタンバイ/バックアップ料金設定ポリシーを確立する
● 統一されたCHP/DHCの立地および環境コンプライアンス政策を促進する
● 統一されたCHP/DHCの税金政策を確立する

CHP/DHC市場の障害を克服し、社会的な利点を促進する、以下のようなインセンティブを提供すること:

● CHPの利用を、再生可能/エネルギー効率ポートフォリオ基準(RPS)、あるいは、その他適切な税制上の優遇措置に加えること
● 新規CHPプロジェクトへの投資に際して解約手数料をなくす
● 最高効率を得るためにCHP/DHCのサイジングを促進する-熱負荷に見合うようシステムを運転した際発生する余剰電力のためのマーケット・ソリューションを提供する
● 2007 年エネルギー独立性及び安全保障法に含まれているCHP/DHC優遇措置を実施するための適切な予算措置を講じる

米国のCHP/DHC評価 : ★★★☆☆

以上、米国のCHP/DHCに関するこれまでの普及の歴史と連邦政府/州政府の関連政策をご紹介しました。
このIEAの報告書が公開されたのは2008年10月ですので、その後、報告書に書かれている「IEAからの政策提言」が、オバマ政権になって、どう反映されたのか/されていないのか調べているのですが、もう少々時間がかかりそうなので、今回はまず報告書内容のご紹介とさせていただきます。

終わり

IEAによる各国の地域冷暖房の取り組みの評価-その4

2011年6月19日 日曜日

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今回は、CHP/DHC普及促進に関するIEAの調査・評価で「★4つ」を獲得しているドイツのCHP/DHC事情をご紹介します。

原文は、「CHP/DHC Country Scorecard:Germany」ですが、ここでは、同レポートを抜粋してご紹介します。
事例紹介を含め全訳版(に近いもの)も作ってありますので、興味のある方はここからダウンロードしてご覧ください。

では、はじめます。

CHP/DHCに関する国別評価:ドイツ編

はじめに

ドイツでは、2005 年時点で高性能の熱電併給(CHP)が、全発電量のほぼ 13%に達しており、室内暖房市場の約 14%を占める地域冷暖房(DHC)とともに、政府のエネルギー&気候変動政策を支援する戦略技術と位置づけられている。
2002 年施行のCHP 法が定めた、近代化した定格出力 2MWe 以下の小型 CHP プラントで発電された電気の優遇買取制度が、CHP 普及に貢献した。

また、2020 年までに CHP 発電を 2 倍にする目標のもと 2009 年新たに策定されたCHP 法は、大型、小型に関わらず、すべてのCHPに対して恩恵をもたらすものとなっている。
ドイツが定めた、CHP に関するその他の注目すべき政策支援として、以下があげられる:

● EU 排出量取引対応として大型CHPプラントを促進
● CHP/DHCを優遇する建築基準
● CHP の燃料として使われる天然ガスや灯油に対する税金免除
● バイオガス炊きCHPに対する高いフィード・イン・タリフ(FIT)

特に最後のFITは、ドイツにおけるバイオガスCHP 市場を、世界で最も活発な市場に育て上げた。さらに、ドイツは、燃料電池CHPに関しても強力な支援を行っており、ヨーロッパにおけるホット・スポットの1つになっている。

ドイツのエネルギー事情

ドイツはヨーロッパ最大のエネルギー市場で、ヨーロッパ大陸の電気/ガス・ネットワークのバックボーンを形成している。
発電の大部分は石炭と原子力によっているが、これは今変わろうとしている。天然ガスの発電所が次第に増え、2006年、全発電量の11%となった。また、再生可能エネルギーによる発電は、更に急速な成長を遂げている。一言で言うとバランスのとれたエネルギー供給を形成しつつあり、この傾向は恐らく今後も継続するように見える。
一般家庭の電力消費は、ドイツの最終エネルギーの29%を占めているが、その内の89%は、暖房および給湯需要である。
四大公益企業(EON、RWE、EnBWおよびVattenfall)がドイツの電力需要のほとんどをカバーしているが、Stadtwerkeと呼ばれる地方都市公益企業は、電気と熱供給を行っており、CHPを利用した地域冷暖房サービスを提供している例も多く見受けられる。主要な公益企業すべてが新しい発電所を建設しており、地方にある多くのCHPおよびDHCシステムの近代化が進行中である。
ドイツ政府の直近の目標は、2020年までに全発電量におけるCHPのシェアを現在の2倍の25%にすることである。この目標が達成するかどうかは、2009年発効となる新しいCHP法の成功いかんにかかっている。
主としてFITを使用した強い政府の支援によって、ドイツは再生可能エネルギーの主要市場になった。太陽光発電と風力発電の市場は、今や世界で最大である。また、バイオガスCHPの発電容量は、2000年の180MWから2006年には1GW以上に成長した。

気候変動に関する動き

京都議定書のもとで、ドイツは温室効果ガスを2008年から2012年までに、1990年レベルから21%削減する目標を立てている。この目標を達成するべく、2007年12月、ドイツ政府は、CHPおよびDHCの支援を含む一連の対策をエネルギー&気候変動プログラムの中で発表した。排出量取引は、ドイツにおけるエネルギー関連の温暖化ガス排出削減の柱となるものである。
● EU域内排出量取引制度(EUETS)を通じて、政府は、2008年~2012年の間にエネルギー部門のCO2排出量を5億3250万トン/年から4億9500万トン/年に削減する目標を立てている。
● 発電のみのプラントに大幅な削減目標が課されており、2000年- 2002年のベースラインから15%削減しなければならない(4780万トン/年の削減)
● 一方、産業プラントおよびCHPプラントの削減目標は1.25%の削減となっている(270万トン/年の削減)
● 欧州委員会が、2007年2月にドイツが作成した第2回国別割当計画(NAP2)より排出量割当てを厳しくしたため、同国は、今、その目標を満たすべく努力しているところである。

CHPの利用状況

2005年時点で「高性能」なCHPと認定されたCHPは、設備容量にして21GWになり、CHPによる発電量は、全発電量の12.6%になった。Table 1は、2005年のドイツにおけるCHP利用状況である。

図表の拡大

産業界での利用

化学・鉱業は、ドイツにおけるCHPのメインユーザである。産業部門のCHPプラントは、大抵の場合、その産業の事業者自身により所有・運転されているが、いくつかのプラントは、会社と契約を結ぶ第三者に外部委託されている。CHP自体の長期的な存続が不確かで、かつ、CHP法が産業用CHPプラントの奨励を目指していなかったので、近年産業用CHP向けの市場は低調だった。

地域暖房としての利用

CHPは、ドイツでは地域暖房に広く利用されている。ドイツの市区町村では、100年以上にわたって多く都市で企業および住民向けに熱と電力を提供する地域暖房CHPシステムを開発してきた。多くのStadtwerkeが、強力な政府の支援と、その仕組みの経済的な魅力に促されてCHPおよびDHへの投資を拡張し始めている。

四大公益企業は、大規模発電所をコアビジネス用に運転しているがDH用には、相当数のCHP設備を保有している。E.ON とVattenfallは従来保有していた発電所をCHPプラント化し、地域のDHネットワークに接続した。一方、RWEとEnBWは、産業用にCHPを展開している。Stadtwerkeは、地域エネルギー供給の手立てとしてCHPプラントを建設し、CHP市場での重要なプレーヤーとなっている。

今日、Stadtwerkeは、更なるDH/CHP設備開発に興味を持っている。なぜなら、政府のDH/CHP普及促進施策とガソリン価格の高騰により、他の方法に比べてDH/CHP方式が経済的に魅力的になっているからである。
したがって、多数のStadtwerkeが、既存のプラントを近代化するか、あるいは新しいものを開発しようと努力している。34 のStadtwerkeで、(設備容量の合計が2200MWeの)新しいプラント構築を計画しており、他の29のStadtwerkeも、設備容量の合計1,250 MWeの既存プラントの近代化を検討している。なお、ほとんどのStadtwerkeは、ドイツ地域暖房協会のメンバーである。

中小企業および家庭での利用

ドイツでは、民間CHPビジネスはマイナーな存在である。なぜなら、多くのCHP向きのオフィスや公共ビルには、すでに市区町村の地域暖房サービスが入っているからである。ただし、病院やホテルのようなビルでCHPが使われだしてきており、新CHP法のおかげで、民間CHPビジネスの流れは継続し、恐らく、加速するだろう。

家庭向けのマイクロCHPの市場も伸びてきている。マイクロCHPの技術は、単身者世帯向けに設計開発されたもので、5 kWe未満の発電容量である。様々なドイツのCHP会社およびボイラー・メーカーがマイクロCHP製品を提供している。そして、現在、数千のシステムが設置されているが、そのほとんどは実証プロジェクトのものである。この市場は、今後延びる可能性がある。

バイオガスCHP

ドイツのバイオガスCHPプラントの数は2000年以来増加し、2006年に新設された発電容量は335MWeだった。2007年には、3700ユニット以上が稼動しており、1271MWeの発電能力となっている。

バイオガスの原料は、埋立地ガス、下水ガス、農業廃棄物や肥料等である。埋立地ガス資源は飽和状態であるが、農業起源のバイオガス分野は急速に成長している。ほとんどのバイオガス・システムは1MWe以下で、主にガスエンジンで利用されている。バイオガスの潜在能力は 110PJ/年と予測されており、これは 1GWe以上の発電能力に匹敵する。2020年には、バイオガスCHPプラントはおよそ3万サイト、合計発電容量2768 MWeになると見積もられている。
ドイツのバイオガスCHP分野を成功に導いた立役者は、再生可能エネルギー法(EEG)である。(下記のCHP促進政策参照)

政府のCHP促進政策

ドイツ政府は、CHP促進のため以下の様々なインセンティブ・スキームを導入している:
1. Kraft-Wärme-Kopplungsgesetz:2002年CHP法
2. CHPで利用した天然ガス/加熱油に関してÖkosteuer(環境税)を免除し、加熱専用のボイラーからCHPへの転換を促進
3. Erneuerbare-Energie-Gesetz(再生可能エネルギー法)でバイオガスCHPが経済的に見合うようにFITを設定
4. EEWärme-G(再生可能熱法)でCHP/DHCを補助手段と認可
5. ドイツ建築基準にプライマリ・エネルギー消費に関する基準を定め、エネルギー転換と配送の効率化を推進
6. EU排出量取引対象として大型CHPプラントを促進
以下では、このうちいくつかをさらに詳しく説明する。

Kraft-Wärme-Kopplungsgesetz (2002年 CHP法)

目標と予算

同法は、最新の小型CHPプラントの普及促進と燃料電池CHPの商用化により、1998年との比較で2010年までにCO2排出量23Mt削減を目指すもので、ドイツにおけるCHP政策の中核をなすものである。2010年までの同法に対する予算措置は€45億で、そのうち€3.58億が燃料電池に充当されている。

優遇買取制度

CHP法は、TSO(送電事業者)に対してCHPプラントの系統接続を義務付けるだけでなく、CHP事業者との間での相対契約が成立していない場合でも、「正常な価格」での電気買取りを義務付けている。ここで、「正常価格」とは、ライプチッヒにある卸電力取引所:EEX(European Energy Exchange)での、直近四半期のベースロード電力取引価格の平均として定義されている。
2002年4月1日以降、定格容量2MWe以下の小型新設CHPプラントにこの優遇買い取り制度が適用されている(Table 2参照)。
さらに、CHPプラント内で使用する電力についてはネットワーク回避コスト(0.4~1.5€c/KWh)が補てんされる。

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また、系統接続したバイオガスCHP事業者にはTable 3の優遇買取制度が適用される。

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新CHP法 (2008年)

新CHP法は、2002年CHP法を修正したもので、エネルギー・気候保全一括法案の一部として、2008年6月に承認され、2009年1月施行された。
これは、CHPの持つ潜在能力がフルに発揮された場合、CO2排出量を年間で54Mt節約できるという最近の研究結果に基づき、2020年までにCHPによる電力供給を2倍の25%にすることを目標としたもので、CHPの電力の優遇買取制度を継続するとともに、EU CHP指令(2004/8/EC)を満足するよう、CHPで発電した電気の素性を明らかにし、高性能CHPの定義を組込んだものである。
旧CHP法からの変更点は以下のとおり:
● TSOのCHP系統接続義務およびCHP電力買取義務に関して再生可能エネルギー同様の実行優先順位が適用されるようにした。
● 優遇買取制度でCHP設備容量の制限をなくし、2007年から2016年の間で運用を開始する最新型新規CHPプラントにも適用を拡大した。
● 系統接続するCHPの電力に関する規定を拡大して、CHPプラントのサイトで使う電力についても優遇買取制度を適用することとした。
● 地域熱供給の60%以上を支援するCHPプラントについて、熱導管ネットワークの新設及び拡張工事に補助金が出されることになった。この、熱導管ネットワーク支援の総予算は€1億5000万で、開発者は工事予算の20%、プロジェクトあたり€500万を限度として、パイプ直径mm・パイプ長mあたり€1が補助される。

その他のCHP促進施策

環境税(Ökosteuer)の減免

発電に利用する化石燃料は、もともと環境税を免除されていたが、CHPの熱供給ボイラーの化石燃料についても環境税が免除される。その免除額は結構大きく、熱出力定格40MWeのCHPプラントでは1年あたり€200万に上る

再生可能エネルギー熱法(EEWärmeG)

この法律によって、新築建物はすべて、冷暖房・給湯のための熱供給には、一定割合の再生可能エネルギーの利用が義務付けられている。ただし、高効率CHPや再生可能エネルギーを利用したDHCシステムによって熱供給を受ける建物については、その義務が免除されている。

省エネ条例(EnEV:Energieeinsparverordnung)

ドイツでは、建築規制条例の中で一次エネルギー利用の削減がうたわれており、CHPベースのDHサービスを利用する場合0.7、天然ガス炊きボイラー利用は1.3、そして、電気の場合は3.0のエネルギー換算係数が用いられるので、DH普及にとって有利になっている。

再生可能エネルギー法(EEG:Erneuerbar Energien Gesetz)

EEGは、CHPではなく、再生可能エネルギーの利用促進を狙ったものであるが、小型バイオガスCHPプラントに関して有利な固定買取価格を定めた。また、同法は、送電事業者に対して、再生可能エネルギーを使用する電源を優先的に系統接続し、かつ、発電された電気を買取る義務を課している。
2008年6月に策定され、2009年1月より施行される新再生可能エネルギー法では、買取り価格等がTable 4のように改定されている。

表の拡大

政府の支援により、ドイツのバイオガスCHP企業は、世界中で最も経験豊富でアクティブな会社となり、その専門知識を活かして多数、他のヨーロッパ諸国、北アメリカおよびアジア市場に参入している。
政府は、バイオガスCHP分野が継続して成長するためには、今後も支援を続けなければならないことを十分認識しており、買取価格を引き上げるとともに、国内の他のCHPプラントでもバイオガスが使えるよう、天然ガス配送ネットワークにバイオガスも相乗りできるよう、法案化を推し進めている。

排出量取引

政府は、CHPを促進するためにも、EU排出量取引に取組むことが重要と考えている。

マイクロCHPと燃料電池に関する戦略

2007年、ドイツ政府は水素と燃料電池技術開発のための国家プロジェクト:National Innovation Programme(予算総額€5億)を立ち上げ、燃料電池業界、エネルギー企業および研究所との共同開発を開始。ドイツは、燃料電池分野でヨーロッパの先端を行っている。
燃料電池には4つの適用分野:輸送用、移動用、産業用(>100kW)および家庭用(1-10kW)があるが、プロジェクト予算のうちの€1.25~1.5億は(CHPを含む)据置型燃料電池開発に割当てられている。
次図は、2020年までに、年間72000台の家庭用燃料電池(1-10kWのシステム)を普及させるためのロードマップである。2010年までに450台、その後2年間は年2250台と設置台数を増やしていき、2020年には年間72000台の設置を実現するべく、2015年まで家庭用燃料電池普及促進のための補助を実施する。

図の拡大

燃料電池開発企業並びにエネルギー会社は、今後、一戸建てやタウンハウス向けに、1-10kWの燃料電池が有望な市場になると信じ、燃料電池の開発、普及に努めている。

ステークホルダー

政府

ドイツ連邦政府の以下の複数の部門がCHP普及促進にかかわっている。
● 経済技術省(BMWi):CHPを含むエネルギー政策全般に責任を持つ
● 連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU):気候変動と再生可能エネルギー政策に責任を持つ
● 経済・輸出管理庁(BAFA):CHP法の策定と、CHP普及促進に責任を持つ
● 環境庁(UBA):BMU内の科学アドバイザーとして、CO2並びに公害物質の排出規制に責任を持つ
● ネットワーク規制庁(Bundesnetzagentur):エネルギー市場の規制機関で、エネルギーに関する競争市場育成に責任を持つ

産業界

● 自治体営電力会社(Stadtwerke):CHPプラントを所有・運転する
● 自治体企業連盟(VKU):CHPプラントを所有・運転する自治体公益企業の集まり

NGO

● ドイツCHP協会(B.KWK)
● ドイツ地域暖房協会(AGFWeV)
● ドイツバイオガス協会(fachverband Biogas)

CHP普及の阻害要因

エネルギーセキュリティはドイツのエネルギー政策の要であり、CHPプラントの運転もその枠内で考えられているが、CHPの燃料の大半を占める天然ガスの国内生産が減少しており、輸入ガスへの依存が問題となってきている。
しかし、CHPに関するエネルギーセキュリティ上の問題には、プラスとマイナスの両面がある:
● 天然ガス価格が上昇すると、代替燃料であるバイオガスが魅力的となり、CHP燃料として再生可能エネルギーへのシフトが期待できる。
● 政府の施策として天然ガス消費の増加を抑制しようとするかもしれず、CHPの運転に影響する。
● 既存のCHP法は新設される2MWe未満の小型CHPへの固定買取制度適用を制限し、DHCインフラ構築に対するインセンティブがない。2008年の新CHP法では、この問題にも取り組もうとしている。

CHPのポテンシャル

連邦経済・技術省(BMWi)は、CHPプラントが、技術的には年間357TWhの電力(発電量の57%)を提供できると試算しており、2010年までに2.1GWeの産業用CHPと、1.3GWeのDH/CHPが新たに使用可能になるだろうと予測している。また、新CHP法では、2020年までに電力供給の25%をCHPから供給することが目標となっている。
ブレマー・エネルギー研究所(BEI)および シュトットガルト大学エネルギー経済・エネルギーの合理的な利用研究所(IER)は、ドイツのCHPプラントが年間300~350TWhの電力(国内電力需要のおよそ37%)を供給する潜在能力があるという調査結果をまとめており、DHCの普及により、CO2排出量を年間5400~8000万Mt削減できる可能性があるとしている。
IEAの国際CHP/DHC共同事業(International CHP/DHC Collaborative)では、上記の予測より控えめではあるが、ドイツ政府が今後も強力にCHP/DHC普及促進施策を推し進めれば、CHPによる電力供給能力が2030年には年間250TWhとなると見積もっている。
また、G8および他の5つの経済大国でCHP使用が増加すれば、以下のような便益が得られると予想している:
● 今後2030年まで、エネルギー投資コストを3-7%減少できる
● 消費者の電気代が少しだけ安くなる
● 2030年までにCO2排出量がおよそ10%削減できる

IEAからの政策提言

市街地開発でのCHP/DHC採用

地方自治体の地方都市開発コンセプトにCHPを利用したDHCのような技術インフラを組み込む。

CHP向けの天然ガス利用優遇

CHPでの利用を含め、効率的な天然ガス利用方法にインセンティブを付与するようなエネルギー政策を採り、CHPプラントが競争価格で天然ガスを使えるよう支援する。例えば、発電において環境税を導入する一方で、CHPプラントの発電では環境税の適用を免除する。

バイオガスCHPへの支援継続

再生可能エネルギー法を含め、既にバイオガスを優遇するフレームワークができているが、固定価格での買取制度で、潜在的なバイオガス生産者の市場参入を促すとともに、CHPによる発電電力の買取価格上乗せでバイオガスの効率的な利用を促進する。
天然ガス・ネットワークにバイオガスの給送を許可することでバイオガスの利用が飛躍的に伸びることが期待できる。

バイオガス産業のノウハウの輸出

これまでの政府の手厚い支援でドイツのバイオガス産業は、広範な技術と経験を積み、世界で最先端のノウハウを持つに至っている。その技術や、やり方に関するノウハウの輸出することで、再生可能エネルギーを有効活用しようという国々がドイツの専門知識を学ぶことができる一方で、ドイツ企業にとって新しいビジネス機会をつくりだす。

ドイツのCHP/DHC評価

★★★★☆ : CHP/DHCは、国としてエネルギー政策の最重要項目(またはそれに近い)で、首尾一貫した戦略として、一連の効果的な施策が打ち出されているので、CHP/DHC市場の成長が期待できる。

レポート内の「ドイツのエネルギー事情」には、ドイツの「太陽光発電と風力発電の市場は、今や世界で最大」とされているのは、2007年末くらいの状況だからでしょうか?
GWECの統計データ(下図)によると、現在(2010年末データ)、ドイツの風力発電は中国、米国に次ぎ3位で、1,2位と結構差がついてきています。また、風力発電に関して、日本はTOP10入りできていません。


出典:GWEC 2010 statistics 「Top 10 cumulative capacity end 2010」

太陽光発電に関しては、かつて日本が全世界のPV設置容量の4割以上の圧倒的なシェアを誇っていたようです(下図のオレンジ色)が、2008年の時点でドイツ(下図の濃灰色)およびスペイン(下図の黄色)に先を越されています。


出典:IEA「Technology Roadmap - Solar photovoltaic energy」
図の拡大

Solarbuzzによると、2011年には下図の通り更にドイツとイタリアのPVシェアが伸び、スペイン、米国、日本のPVシェアが小さくなるとの予測が行われています。


出典:SolarServer 「Solarbuzz: 18.2GW of PV installed globally in 2010

太陽光発電に関しては、現在もドイツがトップのようですので、日本政府が本気で太陽光発電の設置容量を2020年に2800万kWにしたいのなら、ドイツの固定買取制度(FIT)その他の政策のどこが良かったのか、スペインの太陽光発電普及促進策のどこがまずかったのかを研究する必要があると思います。
ただし、太陽光発電の普及促進には成功しているドイツですが、経済的な観点からどうなのか?という意見もありますので、日本での太陽光発電大量導入を目指すにあたって、よく考える必要があると思っています。

さて、CHP/DHCに話を戻すと、ドイツでは、Stadtwerkeと呼ばれる地方都市公益企業がその地方の一般家庭に電気、ガス、水道とともに熱も届けているという形が確立しているので、DHCが普及しやすいということがわかりました。また、気候的に暖房需要が多いので地域暖房の普及に関しては日本よりドイツが有利です。しかし、逆に考えると、地域冷房に関しては、日本の方がドイツより有利と考えることもできます。
つい先日、「石原都知事が電力会社ばかりに頼らず自前で天然ガスを使った火力発電所を建設・利用することに関して前向きな姿勢」というニュースを聞きましたが、やるならぜひDHCサービスまでを視野に入れていただきたいと思います。

また、ドイツ政府は、CHP/DHC普及促進政策として、CHP法を制定してCHP事業者の系統接続手続きを容易にし、CHPプラントの建築時期・規模に基づいた電力買取価格の上乗せ予算を計上。また、地域熱需要の60%以上を供給できるCHP事業者には熱導管ネットワークの新設及び拡張工事に補助金を出すなど、手厚い援助を行っています。ドイツが、更にCHPの普及を加速させるために新CHP法を制定したのは、CHP の持つ潜在能力がフルに発揮された場合、CO2 排出量を年間で54Mt節約できるという最近の研究結果によるものとされています。日本でも、これまで発電時に捨てていた熱をDHC化で利用できるようになればどれほど年間のCO2排出量削減となるか、計算してみる価値があると思います。それほど昔ではないですが、鳩山元首相が国際公約してしまった『2020年の日本の温室効果ガス排出量を1990年比で25%削減する』を実現するための手段に使えないでしょうか。
そして、前回も言及しましたが、デンマークやドイツ同様、日本でもCHP/DHC普及に力を入れ、発電時の熱生成によるエネルギー変換ロスを少なくするとともに、需要地近くの小型CHPから電力供給して送電ロスを削減し、一次エネルギーの利用効率アップを図ることも、今後のエネルギー政策の柱として考えていただきたいと思っています。

次に、ドイツの再生可能エネルギー熱法は、新築建物すべてに、冷暖房・給湯のための熱供給には一定割合の再生可能エネルギーの利用を義務付けていますが、高効率CHPや再生可能エネルギーを利用したDHCシステムによって熱供給を受ける建物については、その義務を免除することで、CHP/DHCの普及促進につながっています。これが良い例だと思うのですが、法規制をかける場合に、独自の責任範囲を定めて厳格に順守させるのではなく、エネルギーセキュリティやCO2排出削減を考えた場合、等価となる例外がある場合は、その例外を認めるという柔軟な対応が、ドイツにおけるCHP/DHC普及促進成功の裏に隠れているのではないかと思います。
例えば、日本でも太陽光発電を促進するために建築基準法を改正して、新築一戸建てすべてに太陽光パネルの設置を義務付けたとします。その際、太陽光パネルを設置するのは再生可能エネルギーの利用促進のためであり、ひいては、CO2排出量削減のためだという了解が得られれば、「家庭用燃料電池の設置もしくは地域冷暖房サービスに加入する場合は新築であっても太陽光パネルをつけなくともよい」という例外対応ができるはずです。

6月16日、「第4回まちづくりと一体となった熱エネルギーの有効利用に関する研究会」で、「次世代省エネルギー等建築システム実証事業」のお話を伺いました。具体的には地下水を利用した東京大学駒場キャンパスのDHCシステムなのですが、地下水揚水に関して現状では法的制約が多く、実現に向けていろいろ御苦労されたようでした。それぞれの法規制には、規制を行う根拠があるのですが、それらの法律を制定する時には想定していなかったDHCでの地下水利用を行おうとすると、本来良かれと思って制定した条項がDHC普及・実現の阻害要因となることがある-ということです。最終的に『次世代省エネルギー等建築システム実証事業』ということで、5年間の期限付きで認可されたようですが、この研究会からの答申が通って、いろいろな監督官庁を横断して「エネルギーの面的利用の推進」がしやすい法整備が行われるよう期待しています。

終わり