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前々回(顛末-その3)、最高裁で審議されることになる「FERCがオーダー745を策定したのは越権行為かどうか?」を自分なりに検証するため、FERCの成り立ちを調べました。 FERCの前身であるFPCが出来上がってからFERCに切り替わるまでに、FPCに与えられた権限範囲の推移を追いかけましたが、『卸売電力取引に関する規制権限はFRECに、小売電力取引に関する規制権限は各州に帰す』ようになったのは、どうやらFERCが出来上がった年の翌年、1978年に制定されたPURPA法(公益事業規制政策法)で各州に規制当局ができて以降らしいということが判明しました。 しかし、FERCの権限範囲が判明しても、「卸売市場に参加するDR資源提供者にも、電源提供者と同等の対価を支払うこと」を卸売市場運営者に命令したオーダー745(以降、O745)のどこがFERCにとっての越権行為なのか、よくわかりません。 そこで、今回は、O745に対する反DR陣営の先陣を切った電力供給事業者協会(Electric Power Supply Association:EPSA)の言い分に関して調査し、ご紹介したいと思います。 EPSAのホームページを見ると、FERCがO745(最終ルール)を策定・公布した2011年に、高等裁判所ではなく、FERCに向けてO745の内容を再考するよう要請していますので、その内容を見てみましょう。 例によって、全訳ではなく、思い込みも混じった超訳になっていることはお含みおきください。

電力供給事業者協会、米国連邦エネルギー規制委員会が公布した法令745に基づくデマンドレスポンス報酬に懸念を表明

原題:  EPSA CALLS ON FERC TO ADDRESS DEMAND RESPONSE COMPENSATION CONCERNS

ワシントン(D.C.)
EPSA News Release 2011年9月26日
Dan Dolan

電力供給事業者協会(Electric Power Supply Association:EPSA)は、全米6つの卸売市場を運営する系統運用者であるISO( Independent System Operator)/RTO(Regional Transmission Operator)が、米国連邦エネルギー規制委員会(Federal Energy Regulatory Commission:FERC)が制定した政令:オーダー745(以下、O745)の要請に基づいてデマンドレスポンス(DR)報酬ルールを変更することに疑問を呈した。

O745によりDR資源の卸売市場参加が促進され、市場価格が安定するというのは仮説にすぎず、EPSAとしては承服しがたい。それにもかかわらず、FERCの要請に従ってISO /  RTOが、早々とO745に準拠するよう市場ルールを変更するのはいかがなものか。 EPSAは、FERCに対し、O745の再審請求を行うとともに、再審理により根本的に変更されるかもしれないので、DR資源への対価支払いルールに基づいて、ISO/RTOがDR資源提供者へ支払うのを当面差し止めることを要請した。

O745制定に先だって実施されたパブリックコメント募集では、EPSAはじめ多数の関係者がO745に対する懸念を表明、問題点を指摘した。それらの問題点がクリアされていないにもかかわらず、FERCのO745がISO/RTOに対する新たな規制ルールとして正式に発行したのは、EPSAには理解しがたい。

公布された最終ルールを見る限り、我々の指摘した問題は、無視されているか、あるいは、言及されていたとしても、十分な対応が考慮されていない。 とりわけ、DRのセルフスケジュール・オプションの変更に関する条件や、M&V(DR実施後の計測と評価)ツールとベースライン計算方法の拡張そして、メーターの裏(Behind the Meter:BTM)で自家発電機を運転することを(メーターの外側から見ればDRとして負荷を削減したのと変わらないので)DRとみなすことに対して、膨大な反対意見が寄せられていたはずである。これらはすべて、従来卸売市場に電力を提供してきた発電事業者に課せられていた要件・義務と比べると不当に優遇されたものであるといわざるを得ない。

発電事業者と同等の供給義務を果たしていないにもかかわらず、『DR資源に対して、従来は不当に低い対価しか支払われていなかった。電源が提供するのと見掛け上変わらないDR資源提供に関しては、正当な補償が行われるべきである』というDR資源提供者は虫が良すぎるのではないだろうか? EPSAは、経済的に効率的なDRの利用を否定するものではないが、ISO/RTOが届け出たO745対応の規制ルールは不適切であることを強調したい。FERCには、DR資源提供者の言いなりになってDR対価支払いルールが変更されて良いものかどうか、再考願いたい。

EPSA以外にも、公布されたO745には重大な問題があると指摘する声が多い。パブリックコメントで指摘された不十分な点・課題がすべてクリアとなるまで、O745への対応としてISO/RTOが届け出た、DR支払いルール変更をFERCは受理すべきではない。今回公布された最終ルールでは、個々の問題点ばかりでなく、まだ根本的な課題が解決されていないと思われるからである。

いかがでしょうか?

O745発行時の文書「 18 CFR Part 35 [Docket No. RM10-17-000; Order No. 745] Demand Response Compensation in Organized Wholesale Energy Markets(Issued March 15, 2011)」 のIntroduction部分を見ると、FERCは2010年3月18日にO745に関するパブリックコメント募集を開始したところ、実に合計3800ページに及ぶコメントが集まったとのことです。さすがに、これらの膨大なコメントをFERCが単独で吟味して最終ルールを定めたのではなく、2010年9月3日に技術委員会を開催し、その結果に関して更にパブリックコメントを募集して、その結果を受けて最終ルールとして2011年3月15日公開したので、FERCとしては、O745は、しかるべく手続きを踏んで正式に発行したとの思いが強かったのでしょう。

ところが、今回ご紹介したESPAを含め、以下の組織・団体からFERCに対してO745の再審請求(Requests for Rehearing)があったようです:

  • Electric Power Supply Association (EPSA)
  • Edison Electric Institute (EEI)
  • Independent Power Producers of New York, Inc. (IPPNY)
  • Electric Power Generation Association (EPGA)
  • New England Power Generators Association, Inc. (NEPGA)
  • Competitive Supplier Associations or CSA)
  • American Public Power Association (APPA)
  • National Rural Electric Cooperative Association (NRECA)
  • Midwest Transmission Dependent Utilities (Midwest TDUs)
  • Organization of MISO States (OMS)
  • PJM Power Providers Group (P3)
  • PPL Parties.

その他にも、内容明確化と再審請求(clarification and/or rehearing)を求める訴えが、以下の組織・団体から届いています。

  • California Department of Water Resources State Water Project (SWP)
  • California Independent System Operator Corporation (CAISO)
  • Demand Response Supporters (DR Supporters)
  • Public Utilities Commission of the State of California (CPUC)
  • Midwest ISO Transmission Owners (Midwest ISO TOs)
  • Old Dominion Electric Cooperative (ODEC)
  • APPA
  • NRECA

等など、散々です。

ところが、ところが! 

FERCはこれらの再審請求の大合唱に対して、2011年12月15日、FERCオーダー745-Aとして、O745の再審請求棄却を公表し、PJMおよびMISOから提出されていたO745対応のDR対価支払ルール変更を条件付きで認可しました。

これに対して、業を煮やした?ESPAは、同年12月23日、ワシントンDCの連邦高等裁判所( U.S. Court of Appeals for the District of Columbia Circuit)に、O745自体の再審請求を行うことになります。

ここまでの流れを見ると、電力供給者の協会のDRに対して抱くコメントとしてみた場合、もっともな意見だと思います。

また、お気づきの通り、「O745の法令を作ったこと自体がFERCの越権行為である」と言うような、高等裁判所で争点とされたような記述は見つかりませんでした。

EPSAのとったアクションの続きは次回のブログで。

終わり