Rous Lench Court
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FERCのeLibrary情報による、2022年10月のPJM予備力市場制度変更に関する調査の続きです。

2019年3月29日、PJMがFERCに提出した予備力市場制度変更申請(Docket No. EL-19-58-000)は、3月29日にFERCに提出された申請書に関するサマリ「COMBINED NOTICE OF FILINGS #2 (March 29, 2019)」の中では、Docket No. ER19-1486-000として報告されていました。そのため見落としていたのですが、PJMの申請内容に関する審議への参加要請や、PJMのルール変更申請への賛否の意見表明はER19-1486-000に対しても40件以上届いていました。Docket No. EL-19-58-000に対しても100件以上の反応があったので、相当大きな反響を呼んだことが分かります。

そしてコメント提出期限の5月15日を過ぎても、まだコメントの提出が続き、その中にはPJMの市場監視機関であるMonitoring Analytics(MA)社の5月13日付の意見書も含まれています。

その内容を見ると、『PJMの予備力市場制度変更の提案には、現行のルールが公正かつ合理的でないという結論を裏付ける証拠は何もない!』という反対意見表明でした。MA社は、もともとPJM組織内の市場監視部門が独立したものですが、PJMの市場運営に関しては一言も二言もあるようで、ことあるごとに反目している感じを受けます。

自分としては、コメント収集期限の5月15日を過ぎれば、FERCがPJMの予備力市場制度変更提案に関する審議会を開催するものと想定したのですが、そうではなく、6月21日、PJMは、まず寄せられた反対意見全般に関して学識経験者らの意見も添えて170ページに及ぶ追加説明書「ANSWER OF PJM INTERCONNECTION, L.L.C.」を提出。それ以外にも、7月半ばまで、「Request for Leave to Answer and Answer of xxxxx to Certain Protests and Comments under ER19-1486, et al.」のようなタイトルで個別の反対意見に関して10件ほどの答弁書を提出しています。

そして、その後ずいぶん時間が空くのですが、年が明けて2020年5月21日、FERCは「ORDER ON PROPOSED TARIFF AND OPERATING AGREEMENT REVISIONS」を発行しています。その中で、PJMの予備力市場制度変更申請に対して寄せられたコメントや反対意見をカテゴライズし、それぞれについて、①コメント/反対意見の対象となったPJMの提案内容(a. PJM’s Filings)、②それに対して寄せられたコメント/反対意見(b. Comments and Protests)、③それに対してPJMはどんな回答をしているか(c. Answers)、④FERCの見解はどうか(d. Commission Determination)を記載しているのですが、結論を言うと、FERCとしては、PJMの提案を了承する内容となっていました。

このFERC ORDERに従って7月6日、PJMは正式な予備力市場制度変更に伴う「Tariff Revisions and Operating Agreement Revisions」を提出したのですが、その後が大変なことになっていました。

FERCは7月13日、「NOTICE OF FILING」でPJMが正式な予備力市場制度変更申請を行ったことを通知するとともに、異議がある場合は7月27日までに申し出るよう要請しています。

これに対してMA社からの分を含めて5件のコメント/反対意見が寄せられ、8月5日、PJMは予備力市場制度変更申請を再提出。FERCは、8月11日に、再度「NOTICE OF FILING」でそれを通知するとともに、異議がある場合は8月26日までに申し出るよう要請しています。果たして、今回も数件のコメント/反対意見が寄せられ、PJMは個別に反対意見に対して回答を試みていますが、そのような努力もむなしく、9月21日にOld Dominion Electric Cooperativeが、9月25日には、American Municipal Power社等8団体が連名で、10月14日にはMA社がPJMの予備力市場制度変更に関してワシントンDC高等裁判所に司法審査を請求しました。

これを受けてFERCは11月3日、「ORDER ADDRESSING ARGUMENTS RAISED ON REHEARING」を発行。その中で、FERCは5月時点にさかのぼって再度検討した結果として、同じ結論(=PJMの予備力市場制度変更を承認する)に達したとし、11月12日に出した「ORDER ON COMPLIANCE」では、PJMに対して、2022年5月1日より新しい予備力市場制度での運用を開始してよいと通達しています。PJMも11月24日に、制度変更に伴う料金表の変更届を行いました。

ところが12月14日、Exelon Corporation、PSEG、Public Interest and Customer Organizations (PICO)が、再度FERCに対して再審要求を提出。年が明けて2021年1月14日、FERCは「NOTICE OF DENIAL OF REHEARINGS BY OPERATION OF LAW AND PROVIDING FOR FURTHER CONSIDERATION」で、再審要求を棄却。

これに対して2021年5月14日、American Municipal Power社等8団体が、また連名でPJMの予備力市場制度変更に関してワシントンDC高等裁判所に司法審査を請求しました。

米国の司法手続きには詳しくないのですが、FERCはこの事態に対して「Voluntary Remand」の申請を高等裁判所に提出。これは、『高等裁判所で司法審査を行う前に、提訴された内容について考え直してみるので、司法審査請求はなかったことにしてください』という感じの申請のようで、同裁判所は8月23日にこの申請を承認しました。そこで、FERCはもう一度PJMの予備力市場制度変更に関する判断を見直し、2020年5月のFREC ORDERで承認した内容の一部を取り消し、PJMの制度変更申請を出しなおすよう求める命令、「ORDER ON VOLUNTARY REMAND」を2021年12月22日に発行しました。しかし、PICOは、「FERCの判断は、再審要求を出した我々の意図を理解していない」として、2022年1月10日に、12月22日のFERC ORDERの内容明確化あるいは再審議を要求。FERCの委員の一人であるJames P. Danly氏も、1月20日に「Statement of Commissioner Danly dissenting to an order issued on December 22, 2021 re PJM Interconnection, L.L.C. under EL19-58 et al.」で、先のFERC ORDER発令に関して異議を唱えています。(一方、PJMは、FERCからの予備力市場制度変更申請の差戻しを受け、2月18日、制度を見直した結果について「PJM Interconnection, L.L.C., Docket Nos. EL19-58-00_ and ER19-1486-00_Compliance Filing」として再提出しています。)

この再々審議要求に対して、FERCは強権を発動して2022年2月22日、「NOTICE OF DENIAL OF REHEARINGS BY OPERATION OF LAW AND PROVIDING FOR FURTHER CONSIDERATION」で審議を拒否したのですが、それが火に油を注ぐ結果となり、3月2日、電力供給事業者協会(Electric Power Supply Association)が連邦第6巡回区高等裁判所に、3月16日、PJMの発電事業者団体(PJM POWER PROVIDERS GROUP)が、連邦第三巡回区高等裁判所に、3月21日にはConstellation Energy GenerationがワシントンDCの高等裁判所に、2021年12月22日のFERC ORDERに関する司法審査請求を行っています。また、これらの司法審査請求に賛同する意見表明も相次いでFERCに寄せられました。

これらの高等裁判所の本件に関する記録も確認したいところですが、すでに十分込み入っていますので割愛して、FERC eLibraryに登録された情報のみをフォローすると、FERCは5月13日、15日以内に明らかな誤りを修正し再提出することを条件に、PJMが2月18日に提出した改訂版を受理する旨の書簡命令を出しています。そして、5月20日、PJMが改訂版を提出。6月1日、FERCはPJMが提出した改訂版に対する反対意見等があれば30日以内に提出することを求め、7月28日、「ORDER ADDRESSING ARGUMENTS RAISED ON REHEARING AND DISMISSING REQUEST FOR CLARIFICATION」で、本件に関するこれまでの経緯を振り返り、依然としてDanly委員の反対はあったものの、FERCとしてはPJMの予備力市場制度改定内容を支持することを示しています。

そして、8月16日、PJMはDocket No. EL19-58-012、「MOTION OF PJM INTERCONNECTION, L.L.C. FOR TIMELY ACTION ON COMPLIANCE FILING AND TO ESTABLISH TARIFF EFFECTIVE DATE AND REQUEST FOR SHORTENED FIVE-DAY ANSWER PERIOD」で、2022年10月1日より、改訂版の予備力市場制度の運用開始を申請し、9月1日の「ORDER ON COMPLIANCE」で、FERCは、この予備力市場制度変更に関する、PJMのオープンアクセス送電線料金表の改訂版提出を要請。9月23日にPJMが改訂版料金表を提出して、正に紆余曲折の後、晴れて?10月1日から新たな予備力市場制度の運用開始にこぎつけました。

2022年3月2日連邦第6巡回区高等裁判所、3月16日連邦第三巡回区高等裁判所、3月21日ワシントンDCの高等裁判所に提出された、2021年12月22日のFERC ORDERに関する司法審査請求に関して、今後どのような結末が待っているのか予断を許しませんが、予備力市場は、制度変更に従って取引が行われています。

 

今回は、文字ばかりになってしまいました(読むのにも相当疲れました)が、以上、2022年10月1日から改訂版PJM予備力市場制度の運用開始に至る経緯をたどりました。

 

 

 

終わり