Early morning stillness

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10月に入り、そろそろ米国最高裁でのFERCオーダー745の審理が始まると思うのですが、まだニュースとしては入ってきていません。その審理が始まる前に、そもそも電力供給事業者協会(Electric Power Supply Association:EPSA)はFERCオーダー745(O745)のどういうところが気に入らず高等裁判所に提訴したのかを、詳しく調べて皆さんにご紹介しようと思っていたのですが、なかなか調査時間が取れず、今日に到ってしまいました。まだしばらくは、腰を落ち着けてO745を追いかける時間がないため、本日は、米国原子力エネルギー協会(Nuclear Energy Institute:NEI)のホームページに掲載されていたニュース記事「Nuclear, Gas Industries Oppose FERC Approach to Demand Response」をご紹介します。
例によって、全訳ではありません(というか、この記事の中で「FERCオーダー745の顛末-その5」でご紹介したのと同様の、O745にまつわるこれまでの経緯が詳しく説明されていたのですがここでは割愛しました)。では始めます。

 NEIニュースリリース

原子力・天然ガス業界、DRに関するFERCの対応に反対

2015年9月10日

米国の原子力エネルギー協会(Nuclear Energy Institute:NEI)および天然ガス協会(America’s Natural Gas Alliance:ANGA)は、FERCオーダー745(O745)が非合法であるとして、最高裁判所に上訴趣意書を提出した。

その趣旨は以下の通り:

  • O745の施行は、原子力発電所の廃止時期を早め、ガス火力発電所設備新設の障害となりかねない。O745は、電力の安定供給を妨げ、さまざまなエネルギー資源を用いることでエネルギーセキュリティを確保するという国策をも台無しにしかねないものである。
  • O745は、連邦エネルギー法(FPA)での電力価格設定の規定に反するものであり、優遇価格で消費者の負荷削減を求める結果、電力市場価格を押し下げ、原発および天然ガス火力発電事業者の市場での立場を悪化させる。結果、O745は、いくつかの原子力発電所の早期閉鎖や、天然ガス発電所の新設を阻害しかねない。
  • これをこのまま放置すると、多くの発電事業者が電力市場からの撤退を余儀なくされ、電力取引市場での価格弾力性が失われて、系統逼迫時の電力価格高騰や、系統の信頼性低下が懸念される。また、原発が閉鎖に追い込まれればCO2削減に関しても悪影響がでる。

O745に関するこれまでの経緯の説明を省いてしまった結果、ものすごく短い記事になってしまいました。
DR反対陣営の主張はこれですべてだとは思えませんが、反対内容の1つ、「CO2削減に悪影響が出る」という件は、O745はCO2削減に効果のある原子力発電所がなくなるかもしれないということでそのような主張が行われている訳ですが、CO2削減という意味では、DRの方がより優れているのではないでしょうか?
また、日本でもDR資源に対する不信感が根強く、DR資源は系統の信頼性低下をもたらすのではないかという議論が聞かれますが、それでは、米国で一番系統の信頼性確保に関して責任を持つPJMやMISOといった系統運用者がなぜ、DR利用に積極的なのか?これを考える必要があると思います。
確かにDR資源の採用は、経済調達(ニュース記事にあるように、発電事業者の電力市場価格に対する市場行使力を抑制し、電力市場価格を押し下げる効果がある)という面があります。
しかし、「DRはどこへ向かうのか-その16」でMISOの統計資料をご覧いただいたように、今や米国では、予備力提供時の信頼性に関しては、発電機よりもDR資源の方が高くなってきています。
2009年1月~2012年2月までのMISOが調達した予備力に関する「月平均予備力提供未達率:Monthly Shortfall (%) of Deployment」の実績データによると、発電機の予備力提供未達率4%に対してDR資源の予備力提供未達率が1.2%。それも、2010年8月に通信回線の故障でDRシグナルが届かなかったトラブルが大きく足を引っ張っており、これを除くと、DR資源提供による予備力提供未達率は0.1%くらいだったのではないかと言われています。

ただし、そのような信頼性を確保するためには、EnerNOCのような大規模DRアグリゲータが必要十分なDR資源提供者を抱え込み、たとえどこかのDR資源提供者が約束通りDR資源を提供できなくても、すぐ予備のDR資源提供者にDRシグナルを出せるような仕組み・体制を整える必要があります。
あるいは、アルミ精錬会社ALCOAのように大量に電力を消費する会社がDRに理解を示し、自社製品の卸価格の市場変動と、系統へのアンシラリーサービス提供から得られる収益を勘案して自社の生産工程をダイナミックに変化させられるような仕組み・体制づくりを行えるように、国が支援して実証実験を行うといった努力が必要だろうと思います。

O745関連のお話はここまでですが、これではあまりのも寂しいので、その他、本業以外で最近のスマートグリッド関連の流れでかかわったことをいくつか取り上げたいと思います。

 

TEチャレンジのキックオフミーティング開催される

米国東部時間2015年9月10日8:30amから、NISTのBuilding 101で総会が開催され、その模様はWebcastされましたので、リアルタイムで見守っていました。(最後は睡魔との格闘でよく覚えていませんが。。。) アジェンダはこの通りです。キックオフミーティングなので、TEチャレンジのビジョン、そもそもTEとは何か、TEチャレンジの進め方の説明の後、チャレンジ参加者から、何に関心を持っていてどんなことをしたいかといった意思表明が行われていました。 Webcastの内容も、ここからご覧いただけますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
また、NISTホームページ内のTEチャレンジのページも整備されてきましたので、一度訪問してみることをお勧めします。

 

グリーンボタンアライアンス(Green Button Alliance : GBA)

先週、突然、GBAニュースレターなるものが届きました。内容はこれ。GBAのニュースレター第1号で、カリフォルニア州では、Googleクラウドや、SaaSプラットフォームを利用したグリーンボタンアプリが利用できるようになったこと、電気の利用状況だけではなく、ガスや水道使用量のデータダウンロードにもグリーンボタンの利用が広がっていることが書かれていました。ここまではわかるのですが、今後、この標準の用途をさらに拡大して、不動産売買のリスティングサービスに利用できないかーというようなことが書かれています! 弊ブログでは、OpenADEに始まって、NAEBSのESPI(Energy Services Provider Interface)に引き継がれ、グリーンボタンイニシアチブとなって広まってきた経緯をご紹介してきましたが、2015年になって、このグリーンボタンの規格の利用促進を図るNPO団体ができ、その規格が不動産売買の情報授受の標準データ規格に発展しようとは思いもよりませんでした!!

 

KNX25周年記念イベント開催予定

最後は、インターテックリサーチとしてではなく、日本KNX協会事務局としてのお知らせ/お願いです。 今年5月、弊ブログ「KNX生誕25周年記念イベント開催予告」にて、KNXが、その前身であるEIBというビル制御規格が世に出て今年で25年になるのを記念して全世界40カ国で同時記念イベントを開催することをご案内しましたが、いよいよそのイベント開催日の10月20日が近づいてきました。 日本でも東京会場にて、10月20日に記念イベントを開催するとともに、10 月21 日以降も、東京、大阪、福岡にてKNXロードショーとしてKNXのご紹介をさせていただきます。 プログラム/参加登録手続きに関しましては、ここからご覧いただけますので、是非、東京、大阪、福岡 お近くの会場に足をお運びいただきたく、どうぞよろしくお願いいたします。
#特に、10月27日(火)九州会場のイベントへのお申し込みが少ないので、このブログをお読みいただいている方で九州地域にお住まいの方のお越しをお待ちしています !!!

終わり