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今回から、何回かに分けてOpenADR2.0をご紹介しようと思います。

オープン標準の開発・統合・採用を推進する非営利国際コンソーシアムOASISのエネルギー相互運用技術委員会(Energy Interoperation Technical Committee)は、2012年2月18日付けでエネルギーの相互運用に関するいくつかの標準をまとめ、Energy Interoperationバージョン1.0(以降、EI1.0と略)として公開しました。

OpenADR2.0は、このEI1.0の中で、OpenADRプロファイルとして規定されていると、OpenADRアライアンスの公開ドキュメント『The OpenADR Primer』の中で指摘されています。(下記部分です)
The work to create version 2.0 of the OpenADR standard is being performed by OASIS through its Energy Interoperation (EI) Technical Committee (www.oasis‐open.org/committees/energyinterop/) with assistance from the UCAIug OpenADR Taskforce.

ただ、EI1.0はOpenADRを中心とした標準規格ではなく、電力需給に係る2者間で執り行う電力価格情報や系統の安定度に関する情報/緊急状態などの情報交換についての標準となっており、OpenADR2.0で何ができるようになるのか-といった視点での説明は一切ありません。

今回は、電力業界の国際ユーザグループUCAIugのOpenSG、その中のOpenADRタスクフォースがOpenADR2.0の要求仕様を検討し、2011年9月に公開された「OpenADR2.0ビジネス&ユーザ要求仕様書:OpenADR2.0 Business and User Requirements 1.0」から、OpenADR2.0の要件についてご紹介します。

例によって、全訳ではないことと、場合によっては超訳になっていることをご承知おきください。

では、はじめます。

OpenADR2.0ビジネス&ユーザ要求仕様

ここでは、UCAIug-OpenSGのOpenADRタスクフォースチームがまとめたOpenADR2.0としての要求仕様を概説する。

 OpenADR2.0のスコープ

OpenADR2.0では、デマンドレスポンスに関して以下のエリアを対象に加えている。
• プラグインEV(PEV)
• 高速デマンドレスポンス(FastDR)
• 分散型電源(DG)
• セキュリティ
ただし、OpenADRのセキュリティの要求仕様とユースケースについては、SG-Security(旧UtilSec)チームと共同で検討・作成し、この要求仕様書には含まれていない。

 OpenADR2.0の機能範囲

以下に、OpenADR2.0の機能範囲(IN欄が×のもの)を示す。

表.1 OpenADR2.0の機能範囲

 OpenADR2.0のビジネス要件

以下に、OpenADR2.0のビジネス要件を示す。

表.2 OpenADR2.0のビジネス要件

 OpenADR2.0のユースケース

• PEV関連のユースケース

表.3 PEVメインユースケースシナリオ

※ Note欄にある、use case E、U1、U2、U3、U4は、SAE J2836/1™で定義された一般ユースケースおよび、「utility enrollment」ユースケースを参照したことを示している。


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図.1 電力会社またはESCO事業者が提供するPEV料金制度への登録を行う際のアクティビティ・ダイアグラム

• FastDR関連のユースケース

高速デマンドレスポンス(FastDR)は、DRイベントでの指示を受けてから4秒~数分で負荷削減に応じなければならない高速のデマンドレスポンスで、以下の用途での利用が考えられている:
・系統制御における「しわとり(Regulating Reserve)」用
・系統負荷追従(Load Following)やリアルタイム市場調達(Fast Energy Market)用
・待機容量市場(Spinning ReserveおよびNon-Spinning Reserve)用
・リザーブ市場(Replacement や Supplemental Reserve)用

これに関連して、以下の3つのユースケースが考えられている。

1)非同期型FastDR
2)相手指定型(Polled)FastDR
3)遠隔計測型(Telemetory)FastDR


図.2 FastDRにおける3種類のインタラクション

以下に、それぞれの場合のユースケースを示す。

• 非同期型FastDRのユースケース


図.3 2者間の非同期型FastDRのシーケンスダイアグラム


図.4 仲介者経由の非同期型FastDRのシーケンスダイアグラム


図.5 DRアグリゲーター経由の非同期型FastDRのシーケンスダイアグラム

• 相手指定型FastDRのユースケース


図.6 2者間の相手指定型FastDRのシーケンスダイアグラム


図.7 仲介者経由の相手指定型FastDRのシーケンスダイアグラム


図.8 DRアグリゲーター経由の相手指定型FastDRのシーケンスダイアグラム

• 遠隔計測型FastDRのユースケース


図.9 2者間の遠隔計測型FastDRのシーケンスダイアグラム


図.10 仲介者経由の遠隔計測型FastDRのシーケンスダイアグラム


図.11 DRアグリゲーター経由の遠隔計測型FastDRのシーケンスダイアグラム

• 分散電源(DG)関連の総合ユースケース

これまでのデマンドレスポンスでは、需要家側の負荷削減の制御を対象としていた。
ところが、分散電源を保有する需要家は、最早、電力を単に消費する消費者(Consumer)ではなく、電力を供給することもできる(Prosumer)ようになった。そこで、消費者側の分散電源から逆に系統側に供給される電力を、負の負荷と考え、DRの仕組みに取り込んでいる。
また、DGは、DRによるアンシラリーサービスの対象としても考えられている。

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図.12 分散電源関連の総合アクティビティーダイアグラム

DG/蓄電池を保有する家庭にDRシグナルが届いた時も、状況によって、4種類のアクションを取るケースが存在することが示されている。

• DRシグナル受領に対して、家庭内の電気の使用をローカル発電に切り替えて系統に対しての負荷削減に協力するか、系統電力を使い続けるためにOpt-outするかを示すユースケース

図.13 ローカル発電/Opt-Outする場合のアクティビティーダイアグラム

• 売電価格によってローカル発電した電気を蓄電池にためるか/売電するか判断するユースケース

図.14 蓄電/放電に関するアクティビティーダイアグラム

• CPP価格によって、ローカル発電した電気を蓄電池にためるか放電して売電するか、更に負荷削減を行うか判断するユースケース

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図.15 蓄電/放電に関するアクティビティーダイアグラム

• DRイベント中ローカル発電した電気を蓄電池にためる量を調節するユースケース

図.16 蓄電量調整に関するアクティビティーダイアグラム

• 再生可能電源の出力変動に応じて絶えず変化する売電価格/DRシグナルに即応して、余分な系統電力を逐電したり、逆に放電したりするユースケース

図.17 再生可能電源の出力変動に対応するアクティビティーダイアグラム

以上、長くなってしまいましたが、今回はOpenADR2.0の機能範囲について、「OpenADR2.0ビジネス&ユーザ要求仕様書:OpenADR2.0 Business and User Requirements 1.0」をご紹介しました。

終わり