Nature Desktop Backgrounds

GTMリサーチ社の調査レポート『2010年のスマートグリッド:市場セグメント、アプリケーションおよび業界のプレーヤー』の2章を翻訳しています。今回は2.2節をご紹介しましょう。

2.2 デマンドレスポンス/デマンド・サイド・マネジメント

2.2.1 はじめに

デマンドレスポンス(Demand Response、以下DRと略)は比較的単純な概念で、電力会社が、クリティカルピークタイム(電力需要が非常に逼迫する時間帯)にオンデマンドで電力消費を削減するよう奨励する仕組みである。事前に締結した契約で、電力会社(あるいは代行機関)が、どのような場合に、どのように需要家の負荷を軽減して良いか決めておく。今日までに、北米の業務用・産業用電力顧客のほとんどがDRに協力してきた。
そこにスマートグリッドの先進通信技術が登場し、一般家庭もだんだんDRプログラムに参加することができるようになって、DRが“リーチ”できる範囲が一挙に広がった。実際、DRを含まないスマートグリッドはスマートグリッドではないという業界専門家もいるほどである。

我々は、DRが市場に深く浸透する最初のスマートグリッド・アプリケーションになると予想している。DR市場は、今まさにゴールドラッシュ。業界アナリストは、今後5年間でこの市場が4倍に膨れ上がるだろうと予測している。その理由は簡単で、全米約4000万台のスマートメーター導入が進行中であり、多くの一般需要家に、初めてDRプログラムへの門戸が開放されるからである。電力会社大にスマートメーターを展開することで、エンド・ユーザーと電力会社を結ぶバックボーンができあがり、一部の大口ユーザー向けだったDRの普及速度は一気に加速することだろう。電力需要逼迫時の対応として、DRは、発電所より早くピーク対応でき、経済的、かつ、クリーンで信頼性が高い。環境問題への関心が高まる欧米において、電力会社と需要家双方にメリットをもたらすことが、DRプログラム普及の決め手となるだろう。
2007年のBrattle Groupの調査によると、米国のピーク需要がほんの5%低下するだけで、発電、送電および配電コストを大幅に節約できる。なぜなら、およそ625箇所の普段あまり使われないピーク対応発電所と、関連する送配電設備の運用・維持・管理の必要がなくなるからである。これは、毎年30億ドルの節約となり、今後20年間を考えると350億ドルの現在価値に相当する。

2.2.2 DR導入の背景

2006年、連邦エネルギー規制委員会(FERC)と米公益事業委員協会(NARUC)は、小売・卸売市場および発電計画とDRを統合するべく、州と連邦規制機関の間でDRに関する共同検討を開始した。
その動きが全米の公益事業委員会のDRへの関心を呼び起こし、以下のようなDRへのトレンドを生み出した:

    -DRプログラムへの参加の増加
    -DR対応可能な需要側資源のRTO/ISO市場への参加の増加
    -DRを促進するスマートグリッド開発への関心の増加
    -複数の州や、州と連邦にまたがるDRへの関心の増加
    -戦略的発電計画、州大の発電計画におけるDRへの信頼度の増加
    -小売り側(一般家庭用)のDRのアグリゲーターの増加

Thomas Weisel Partners社は、2007年のレポートで、今後5~10年の間にDR市場は毎年80億ドル規模で増大すると推測している。

我々は、米国のDR市場が2008年で既に15億ドルの価値があったと推測している。2008年末、FERCのJon Wellinghoff長官(共同検討を実施しているNARUCの副会長兼務)は、「DRがスマートグリッドのキラー・アプリであることは明白だ」と語った。FERCによれば、米国のエネルギー消費者の8%が、すでに何らかの形でDRプログラムに参加しており、潜在的なDR資源は41,000MW近く、米国ピーク需要の5.8%になろうとしている。

2.2.3 DR対ピーク電源

電力需要逼迫時、今日最もよく利用されるのは天然ガスを燃料とする発電所であるが、DRは、天然ガスを燃料としてピーク時のみ稼動させる発電所より安く、速く、クリーンで信頼性の高いソリューションである。天然ガス発電所が1MW発電するのに要する費用は約400,000ドルであるが、1MWのDR容量に必要な資本コストは、およそ240,000ドルと推測されている。また、DRは非常に短時間(5分以内)にピーク対応できるのに対して、ピーク対応の天然ガス発電所が100%稼動に達するまでに30分かかる。
さらに、DRでは、エネルギー需要を削減することで需給調整に必要な電気容量を確保するので、ピーク電源のように化石燃料を焚く必要がなく、非常にクリーンなソリューションである。

2.2.4 仮想ピーク電力は成長市場

DRソリューションのニーズは、電力需要のアグリゲーター(複数の需要家の需要を取りまとめて、需要家のための電力売買などのサービスを仲介する事業者)にとって巨大市場となっている。アグリゲーターは、その顧客のサーモスタットやインテリジェントな家電機器を遠隔制御し、電力会社に「仮想ピーク電力」を供給することができる。現在、米国の2大のアグリゲーターとしてComverge社とEnerNoc社があり、両社は現在2GW以上の電源を管理するとともに、DR容量として、4.5GW以上を管理している。これは、一つのアカウントとしては相当大きなエネルギー量である。(注: Comverge社およびEnerNoc社の株価は、現在、それぞれレポート作成時の2倍、3倍になっている。)

2.2.5 DRの課題

DRソリューションの成長を阻害する要因が3つある:

  1. 一般家庭向けの電気料金には、まだ時間帯別料金が少ないこと(定額の従量料金では、市場価格に基づいて電力使用量を調整するようなインセンティブが働かない)
  2. メーターデータにアクセスできる需要数家が限られていること(ホームエネルギー管理システム:HEMSやメーターデータにアクセスできるポータルがないばかりでなく、まだスマートメーターが普及していない)
  3. 経済不況の最中で、電力会社はDRソリューションのような大規模インフラ投資が難しい。

DRによって消費者の機器や設備を遠隔制御する点で、電力会社が独裁的にならないか少々心配な面もある。他方、(ホームエネルギー管理システム:HEMSのような)スマートグリッド技術の進展に加えて、電力会社からリアルタイム価格情報が届き、家庭で消費する電力/電気代が見えるようになるので、DRによって、消費者が電気代を節約するためエネルギー消費性向をダイナミックに調節するための環境が整う。すなわち、DRソリューションは需要家が使用する電力に関して主体的になれる仕組みでもある。

今回は、デマンドレスポンスの紹介でした。

ここでの説明では、電力会社からの要求に応じて需要を抑制することがデマンドレスポンスですが、2つ前のブログ記事(「スマートグリッド関連文献紹介)で、東京大学の横山先生は、近い将来日本では太陽光発電の大量導入で天気のよい日中逆潮流が発生するので、電力会社からの要求に応じて需要を増加させる必要があるとおっしゃっています。これも、需要(デマンド)が応答する(レスポンス)という意味で、デマンドレスポンスですね。また、Gridpoint社の電気自動車充電インフラ:Smart Chargingシステムには、風力発電の出力変動を補完するようにEV充電を制御するタイプの「デマンドレスポンス」機能があるようです。

次回は、2.3節 グリッド最適化/配電自動化をご紹介したいと思います。

終わり