出典:http://www.iot2010.org/

先週(2010年9月15日~17日)、東京ビッグサイト東1ホールで第12回自動認識総合展が開催されました。その中で開催された自動認識セミナーの1つ(9/16午後のセッション:Session 08『自動認識の新たな可能性』)で、今回のタイトルとした、「Internet of Thingsに向けた自動認識技術の標準化動向」について、慶應義塾大学 環境情報学部 准教授/Auto-IDラボラトリジャパン 副所長 三次 仁 氏のお話を聞いてきました。
これを機に、RFIDから「モノのインターネット」への流れをまとめてみましたので、ご紹介したいと思います。

これまでの自動認識技術

  • 自動認識(Automatic Identification):人間を介さず、ハード、ソフトを含む機器により対象物を認識すること
  • 自動認識の対象:バーコードやRFIDを貼り付けたものや、顔や指紋など人体の一部や製品など対象物の画像
  • 技術開発の経緯:キーボードによるデータ入力に対し、入力速度と入力精度の向上を目的に開発され、その後、バイオメトリックスやマシンビジョンのように識別技術へと発展してきた
  • これまでの技術進歩:情報量の増加、認識距離の拡大、データの読込みだけでなく書き換え、一括読取りが可能になってきた

自動認識技術の種類

(参考:JAISA および AINIX Corporation

  • バーコード、2次元シンボル(Bar Code / Two Dimensional Symbology)
    幅の異なるバーとスペースの組合せにより、データをコード化したシンボルを光学的に読取る技術。
    2次元シンボルは、縦横両方向にデータを持たせたシンボルで、スタック型(マルチロー型)とマトリックス型がある。
    従来は、レーザスキャンやCCDスキャンのようにシンボルを走査することにより読取っていたが、最近は、カメラによる画像処理によって読取れるようになった。以下に、いくつかの適用事例を示す。

出典:DBパレット
  • RFID(Radio Frequency Identification)
    カード状またはタグ状の媒体に、電磁波(電波)を用いてデータを記録または読取りを行い、アンテナを介して通信を行う認識技術。
    タグにバッテリーを内蔵したアクティブ型と内蔵しないパッシブ型がある。電波を利用しているので、電波が透過すれば障害物があっても読取りでき、また、データの書き換えや複数同時読取りが可能。 ICタグ、電子タグとも呼ばれる。
    RFIDは、通常、モノに貼り付けてタグ(荷札)のかわりに利用されるものであるが、RFIDという言葉をそのまま解釈すれば、「無線」を使って「識別」できれば良いので、航空機の無線識別システムやJR東日本の交通乗車券Suica、ETCシステムなどもRFIDの一種といえる。 以下に典型的なRFID適用システム事例を示す。

出典:12MANAGE RFIDの技術
  • バイオメトリクス(Biometrics、生体認証)
    指紋、静脈、顔、網膜、虹彩、音声、サインなど、生物個体が持つ特性により認識する生体認識技術。指紋認証は、入退出管理やPCログインキーに、静脈認証は、ATMに良く使用されている。

出典:IPA教育用画像素材集:バイオメトリクス認証
  • 磁気ストライプ(Magnetic Stripe)
    カードなどに付けた磁気ストライプにデータを記録、読出す技術。代表的なものとして銀行のキャッシュカードやクレジットカード、定期券、テレホンカードなどがある

出典:トッパンTDKレーベル:磁気カード
  • OCR(Optical Character Recognition)/OMR(Optical Mark Recognition)
    OCR:光学的文字認識のことで印刷または手書き文字を光学的に直接読取り、認識する技術。代表的な印刷フォントは、OCR-AフォントやOCR-Bフォントがある。
    OMR:用紙の特定の場所を塗り潰すかチェックするなど、マークすることにより情報を記録し、それを光学的に読取る技術。試験用紙やアンケート用紙などで使用されている。

出典:SHOJUDO OCR・OMR帳票
  • マシンビジョン(Machine Vision)
    リニアセンサーやCCDカメラ等で取得した画像データからソフトウェア処理により物の特徴を抽出し、認識する技術。バーコード、OCR、バイオメトリックスを除く工業用の認識技術を指す。

出典:SCHOTT MachineVision

これまでの自動認識技術の標準化動向

1) バーコード:適用分野は製造・運輸業の設備投資、医療・食品でのトレーサビリティ需要など多岐にわたり、それぞれで標準化が進んでいる

2) RFID:RFIDには、UID(Unique Item identification)と呼ばれるタグを一意に識別するための読取り専用のIDと、利用者が書き換え可能なユーザ領域(最大8KB程度)がある。このUIDに関する国際標準がEPC(Electronic Product Code)で、EPCの標準化は、EPCグローバル(旧Auto-IDセンター)によって推進されている。
国内ではEPCグローバルのほかに、YRP(Yokosuka Research Park)ユビキタスネットワーキング研究所のユビキタスIDセンターにおいて提唱されている、商品に限らずあらゆるものを対象としたucodeがある。ucodeはRFID以外に、アクティブチップ、IDチップ、バーコード、ICカードなども対象としている。ucodeは128ビット長のフォーマットで、128ビット単位の拡張が可能となっている。EPCの他に、JAN(Japanese Article Number)、UPC(Universal Product Code)、EAN(European Article Number)、ISBN(International Standard Book Number)などの既存の各種IDコードを格納できるメタコードの扱いが可能としている。
EPCグローバルとユビキタスIDセンターの主な仕様の相違は、下表参照

出典:@IT 標準化が進むRFIDと日本発ucode

RFIDに関するISO規格に関しては、下図参照

出典:富士総合研究所 RFIDを取り巻く現状と課題

これからの自動認識技術の方向性

1)欧州: RFIDから Internet of Things へ

  • 2006年3月ブリュッセルで開催されたカンファレンス「EU RFID Conference 2006: Heading for the Future」のワークショップ向けに用意された「policy framework paper」のタイトルが『From RFID to the Internet of Things』
  • 2007年6月ベルリンで開催されたカンファレンスでは、そのタイトル自体が『RFID: Towards the Internet of Things』
  • CASAGRAS(Coordination and Support Action for Global RFID-related Activities and Standardization:活動期間2008年1月末から2009年10月)の最終報告書『Final Report RFID and the inclusive Model for the Internet of Things』

方向性としては、アクティブRFIDタグから、更に高機能(高価)なコンピューティング機能を持ったチップを埋め込んだNED(Network Embedded Device)によるM2M、更に「モノのインターネット」の世界を目指している

2)米国:EPCグローバル

  • その前身であるオートIDセンターが研究開発を進めていた「オートID」と呼ばれる技術を用い、製品の製造、流通、販売、そしてリサイクルまでの過程を効率的に管理することを目的に標準化を進めている。
  • EPCグローバルの目的はモノの管理、いわばSCMの実現にあり、EPCのコード内にあらかじめメーカー番号や商品番号が割り当てられている。
  • EPCグローバルで用いられるタグはあくまでもICタグであり、バーコード・システムをICタグに置き換えるには、ICタグの低価格化や、導入コストに見合う明確な効果が求められる。

方向性としては、EPCグローバルのICタグは読取り専用にすることや、機能を絞ることで低価格化、実ビジネスとしての拡大を重視している。

 RFID は、現在普及しているバーコード・システムと比較して、認証作業の大幅な自動化・効率化が可能であり、またその応用範囲はバーコードでは適用不可能だった種々の管理システムや野生動物の調査等にまで広がっていくことが予想される。一方 RFID が更に普及していくための最も大きな課題はタグのコストであるといわれている。(参照:日本水晶デバイス工業会 解説記事13:近距離無線①)

3)IPSO (IP for Smart Objects) アライアンス

  • IPSOアライアンスは、センサーネットワークにおけるIP網の活用を推進する団体
  • ここでいうスマートオブジェクトには、センサーあるいはアクチュエーター、通信機能を搭載した小さなコンピュータが考えられている
  • アクティブRFIDタグも、スマートオブジェクトの1つで、IPSOアライアンスのチェアマンGeoff Mulligan氏によると、「モノのインターネット」の構成要素にもなると考えられている。(Active RFID tags could be part of the Internet of Things that IPSO and the IETF and 6lowpan are enabling. 出典:IETF Journal “A Talk with Geoff Mulligan of the IPSO Alliance”

アクティブRFIDタグは、自動認識される対象としてのタグから、スマートオブジェクトの一員として、ID以外の情報発信や、モノ同士で会話する方向に進む?

4)日本の動向:

  • 2010年9月の自動認識展で、慶應義塾大学 環境情報学部三次仁准教授が、「Internet of Thingsに向けた自動認識技術の標準化動向」と題して講演
  • 2010年10月の第2回 トロン/ユビキタス技術研究会では、「ユビキタスから Internet of Things へ」と題して東京大学大学院 情報学環の越塚登教授が講演予定

EPCとucodeはいずれも、RFIDタグを識別するためのコード体系だが、そもそもの成り立ちや目的、構造が異なる。
EPCは、オートIDセンターが研究開発を進めていた「AutoID」をベースにしたもので、「商品」に付与することで流通の効率化を目指す意味合いが強い。一方ucodeは、あらゆる「モノ」や「場所」を識別することに特化している。推進母体も異なり、EPCではEPC Globalが普及・啓蒙活動を、慶應義塾大学も含め世界の7つの大学に置かれたAuto ID Labsが技術開発を担当。ucodeでは、東京大学大学院の坂村健教授が主催するT-Engineフォーラムに設置されたユビキタスIDセンターが標準化を進めてきた。
とかく「対立」の構図でとらえられがちな両仕様だが、慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授談
• 『VHSかβか』というふうに言われるけれども、問題の本質はそこではない。新しい技術を持って人間社会をどのように変えていくかということ
• 日本こそこの分野における先端的な役割を担うべきであり、世界に対してアピールしていく役割を果たすべきだ
Auto-IDラボラトリジャパン 副所長 /東京大学の越塚登准教授談
• RFIDを日本という国の産業力強化に結びつけ、ひいては社会インフラ、国家インフラとしていきたい
• インターネット系の技術と組み込み系の技術がともに手を組み、今後も取り組んでいく
出典:IT Media 複数のRFIDコードを1つのシステムで、ORF 2006で実証実験

5)中国の動向:

  • 2010年6月、「2010年中国国際ICカード・RFID博覧会」および、「第8回中国(北京)R FIDとモノのインターネット国際サミット」を開催。「科技日報」によると、中国のICカードおよびRFIDの市場規模はそれぞれ、世界1位と3位。

2010年8月、中国の国家標準「サプライチェーン監視制御用コンテナ電子封印応用技術規範」を基礎として中国が提起・制定したコンテナ貨物運送のタグシステムに関する一般仕様書(PAS)がISOから正式に発表された。規格の正式名称は「ISO/PAS 18186:貨物コンテナ・RFID貨物輸送タグシステム」で、IOT分野で中国が制定した国際規格が初の文書化されたことになる。同タグシステムは、RFID(電波による個体識別)とインターネットを融合させたもので、貨物所有者、港、船舶運営企業、税関、商品検査などの機関が、コンテナ輸送情報をリアルタイムで知ることができる。コンテナ輸送情報を従来の「通知」から「感知」へと変革し、コンテナの安全度と輸送効率の向上に向け、重要な意義を持つ。
出典:人民網日本語版「IOT分野で中国が制定した国際規格が初の文書化

以上、RFIDから「モノのインターネット」への流れをご紹介しました。

IPSOアライアンス参加企業を別にすると、とりあえず、流通業務など現場の課題解決を優先する米国に対して、欧州では、将来のインターネットに焦点を当てて今後のRFIDの方向性を考えていると言えそうです。
日本は、その両方を睨みながらも、ucodeでは、この分野でイニシアチブをとるポジションにいます。
また、今回のタイトルにした「自動認識技術の標準化」という意味では、今後ますます中国の国際規格に対する影響力が無視できなくなると感じました。

なお、冒頭の絵は、今年の暮れ東京で開催される予定の「Internet of Things 2010 Conference」のHPのものです。

終わり