OpenADE1.0 - その3

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OpenADE-その6およびOpenADE-その7で『OpenADE 1.0 System Requirements Specification』 をご紹介しました。

以前ご紹介したOpenADRとOpenADEの要求仕様書を比較すると、OpenADRの当初の仕様書である、『OPEN AUTOMATED DEMAND RESPONSE COMMUNICATIONS SPECIFICATION (Version 1.0)』は本文120ページ、Appendixを入れると214ページの大作でした。これをベースとして、様々な電力会社や需要家側の異種EMSなどが相互運用可能となるオープンなDRシステムを構築するための要求仕様書としたものが『OpenADR 1.0 System Requirements Specification』です。それでも全文63ページ。かつ、ユースケースは仕様書とは別に『OpenADR Functional Requirements and Use Case Document』(全53ページ)にまとめられています。
それに対して、今回ご紹介したOpenADE1.0の要求仕様書は、本文22ページ、関連するユースケースなどの詳細を記載した関連ドキュメント『OpenADE Business and User Requirements Document (Version 1.00)』も23ページしかありません。そこで、他にないか調べたところ、OpenADE-その6でご紹介したように、以下の4つの関連文書が見つかりました。

1) OpenADE 1.0 Service Definition – Core Draft v0.8 : 19ページ
2) OpenADE 1.0 Service Definition – Common v0.97 : 18ページ
3) OpenADE 1.0 Service Definition – REST Extension Draft v0.93 : 15ページ
4) OpenADE 1.0 Service Definition – Web Service Extension Draft v0.9 : 12ページ

OpenADE準拠のシステム作りに興味のある方以外は、あまり詳細な情報には興味を持たれていないと思いますので、今回は、これらの補足ドキュメントの内容をさらりとご紹介したいと思います。

では、はじめましょう。

OpenADE 1.0 Service Definition – Core Draft v0.8

COREドキュメントは、OpenADEのサービス定義のうち、計測データ(MeterReadings)、オーソライゼーションの定義にフォーカスしたものである。
OpenADEでデータ交換する計測データ本体のデータ構造は以下の通りである。

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IECのCIMオブジェクトモデルを採用し、メッセージ・ドキュメント形式としてCIMベースのXMLを用いる。以下に計測データ本体の例を示す。

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登録(Register)手順

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オーソライゼーション(Authorize)手順

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オーソライゼーション内容の変更(Modify Authorization)手順

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OpenADEのサービス・インタフェース

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上図でService Providerは電力会社、Service ConsumerはTPSP(第三者サービスプロバイダー企業)
また、サービス・リソースの定義は以下の通り。

計測データのXMLスキーマ

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OpenADE 1.0 Service Definition – Common v0.97

COMMONドキュメントは、OpenADEのサービス定義のうち、エネルギー利用情報(EnergyUsageInformation)の定義にフォーカスしたものである。
OpenADEでデータ交換するエネルギー利用情報のデータ構造は以下の通りである。

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IECのCIMオブジェクトモデルを採用し、メッセージ・ドキュメント形式としてCIMベースのXMLを用いる。以下に、エネルギー利用情報のXMLメッセージ例を示す。

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エネルギー利用情報のXMLスキーマ

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OpenADE 1.0 Service Definition – REST Extension Draft v0.93

本ドキュメントは、OpenADEの共通仕様を、SOAP ベースや WSDL (Web Services Description Language) ベースの Web サービスに代わる REST (Representational State Transfer) によって定義された一連のアーキテクチャーの原則に従って設計することにフォーカスしたものである。
汎用のデータ同期を行うためにAtomPubを機能拡張したオープン仕様であるGDataをベースとし、AtomPub XML形式のリクエストおよび情報の授受にHTTPを用いて、発見可能(discoverable) で RESTful なデータ・サービスを定義している。
IECのCIMオブジェクトモデルを採用し、メッセージ・ドキュメント形式としては、AtomPubプロトコルの拡張バージョン(GData)を用いる。以下に、いくつかのメッセージ例を示す。

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OpenADE 1.0 Service Definition – Web Service Extension Draft v0.9

本ドキュメントは、OpenADEの共通仕様を、WS-I Basic Profile 1.1ベースのWebサービスとして実装することにフォーカスしたものである。
XML形式のリクエストおよび情報の授受にSOAP over HTTPを用いて、発見可能(discoverable) なデータ・サービスを定義している。
IECのCIMオブジェクトモデルを採用し、メッセージ・ドキュメント形式としては、SOAP (Simple Object Access Protocol)を用いる。以下に、メッセージ例を示す。

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発見(Discover)手順

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通知(Notification)手順

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サービス・インタフェース

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以上、簡単に4つの関連ドキュメントをご紹介しました。Webサービス(特にAtomPub、REST)は不勉強で、絵ばかりになってしまいましたが、雰囲気は感じていただけたでしょうか?

さて、OpenSGのホームページの2010年8月付けアナウンス:OpenADE 1.0 moving to NAESB SDOによると、業界標準OpenADE1.0として作成されたこれらの成果物は、NAESB(North American Energy Standards Board:北米エネルギー規格委員会)に引き継がれています。

NAESB内でのその後の流れを調べると、OpenADE1.0をESPI(Energy Services Provider Interface)の北米標準策定へのインプットの1つとみなし、スマートグリッド・アプリケーションのセキュリティに関する要求を取りまとめていたASAP-SG(Advanced security acceleration project for smart grid)の成果物『Security requirements profile for third party data access (3PDA)』とともに評価を行い、2011年Q2を目途にNAESB ESPI1.0という実装可能な標準インタフェース(implementable standard interface)の定義を行っています。(下図参照)

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また、2010年11月2日付けのOpenADE-TFの資料『OpenADE:Roadmaps, OpenADE 2.0 Scope』によると、OpenADE2.0の要求の取りまとめを2011年Q2~Q3で行い、Q4には「NAESB:ESPI2.0?」となっていました。

OpenADE2.0(=ESPI2.0)が、SEP2.0などと連動して直接消費者データを取り出せるなら、セキュアで個人情報保護もしっかりしたデマンドレスポンス用インフラとしてかなり期待できますが、全貌が明らかになるまでは、いましばらく時間がかかるようですので、OpenADEのブログ・シリーズは、一旦これで終了します。

終わり