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つい最近、NARUCのホームページに、非常に良質のスマートグリッド関連情報を見つけたのですが、みなさんは、NARUCという組織をご存知でしょうか?

Google検索するとFERC(米国連邦エネルギー規制委員会)の正式名称「(Federal Energy Regulatory Commission」のヒット件数は約462万件に対して、NARUC(米国法定公益法人協会)の正式名称「National Association of Regulatory Utility Commissioners」のヒット件数は約30万件と、一桁違います。 これらの正式名称に含まれる、“Regulatory” や ”Commission” という単語を共有する米国内の組織としては、この他に、Tennessee Regulatory Authority やCalifornia Public Utility Commissionのような各州の規制機関がありますが、これらはFERCやNARUCとどういう関係にあるのでしょうか?

また、FERCによく似た略称のNERC(North American Electric Reliability Corporation:北米電力信頼度協議会)や、ERCOT(Electric Reliability Council of Texas:テキサス電気信頼度協議会)の正式名称では、”Electric Reliability”という単語が共通していますが、これらの組織もスマートグリッドの話題によく登場します。

更に、スマートグリッドには系統運用も絡んできます。州ごとに電力自由化の進展具合が違う米国で、どの州で誰が系統運用を行っているのか?

今まで、スマートグリッドの説明の中で、いろいろな組織名に遭遇しても、その日本語訳を見て、だいたいどんな組織か想像し、それで満足していましたが、ふと疑問に思いだすと、気になります。

そこで、前回のスマートグリッド関連標準規格を制定している組織のまとめに引き続き、今回は、米国のスマートグリッドに関連する組織に関して整理を行いたいと思います。

整理を行うに当たって、JETRO 市川類氏の「ニューヨークだより2009 年2 月臨時増刊号:米国におけるスマート・グリッドを巡る動向」および、少し古いですが、同じくJETROの「技術情報 428号 2001年11月:米国における電気事業規格緩和の動向」が大変参考になりました。 また、消費者庁の第11回公共料金情報公開推進検討会(平成15 年2 月24 日開催)で配布された参考資料3「諸外国における消費者代表機関【II米国】」、および電気学会発行の「電力自由化と系統技術」も参考にさせていただきました。

では、はじめます。

 

  規制機関(regulator、regulatory agencyもしくはregulatory body)

公益事業には膨大なインフラ投資が必要となるので、歴史的に地域の共同体や州政府、地方自治体がインフラの建設・維持管理・サービス提供を行ってきました。それを民間の公益事業会社(IOU:Investor Owned Utility)に任せるに当たって、地域独占の弊害が出ないよう規制料金を制定し、IOUが不当な利益を得ていないか監視・監督するのが規制機関の役割です。 米国における規制機関の特徴として、連邦政府による規制と州政府による規制が存在し、連邦・州のそれぞれのレベルでも複数の機関が競合的に規制を行っていることがあげられます。 また、連邦レベル、州レベルともに、規制機関は議会によってオーソライズされ、組織としての独立性・中立性が保障されています。

  連邦エネルギー規制委員会:FERC(Federal Energy Regulatory Commission)

FERCに関しては、皆さんご存知でしょうが、米国エネルギー省(DOE:Department of Energy)に所属する連邦政府レベルの規制機関です。1978 年制定された天然ガス政策法および公益事業規制政策法により、電力会社および天然ガス産業に対する監督権、州際パイプラインの敷設許認可権並びに州際天然ガスの販売価格の統制権を持っています。電力に関する規制については、Office of Electric Reliability が担当しているようです。

  公益事業委員会:PUC(Public Utilities Commission)

州レベルの規制機関。規制対象候補には電気/ガス/水道/通信/鉄道/鉄道輸送/旅客輸送会社がありますが、州によって規制対象が異なっています。 州内の公共料金に対する監視や、消費者保護を目的とする各種の規制を行う他に、電力に関していうと、再生可能エネルギーの固定買取価格設定や、州内託送の規制(州際託送の規制はFERCの管轄)などは、州の公益事業委員会が行っています。 なお、規制対象だけでなく、規制機関の名称の付け方も州によって異なっています。代表的な名称は、カリフォルニア州公益事業委員会(California Public Utilities Commission)に見る、PUCですが、その他にも以下のような名称があります。

• フロリダ州公益事業委員会:Florida Public Service Commission

• イリノイ州公益事業委員会:Illinois Commerce Commission

• アイオワ州公益事業委員会:Iowa Utilities Board

• テネシー州公益事業委員会:Tennessee Regulatory Authority

「規制」という観点から見るとPUCはFERCの下部組織のように見えます。しかし、規制範囲を考えると、FERCの規制対象がエネルギーの範囲であるのに対して、PUCは、いわゆる「公益事業」全般の規制にかかわっているので、PUCはFERCとは独立した組織であることがわかります。

  米国法定公益法人協会:NARUC(National Association of Regulatory Utility Commissioners)

さて、冒頭で言及した組織NARUCですが、州ごとの公益事業委員会をメンバとし、基本的にはFERCに対して州側の規制機関としての利益を代表する組織のはずですが、スマートグリッドに関してはFERCとの共同体:NARUC-FERC Collaborativeというのができています。 そのSmart Response Collaborativeというページがなかなか秀逸なので、今回それをご紹介したくて、このブログ原稿を書き始めた次第です。 以下、少し中身をご紹介しましょう。

• Smart Grid 101:LBNL(ローレンスバークレー国立研究所)で作成されたスマートグリッド入門書がダウンロードできます。

1)     Smart Grid Introduction (pdf) (pptx)

Chapter 1. Define Smart Grid Chapter 2. A Smart Grid Vision Chapter 3. Reliability

2)     Customer Interface Issues

Chapter 4. Metering (pdf) (pptx) Chapter 5. Rate Design (pdf) (pptx) Chapter 6. Demand Response (pdf) (pptx)

3)     Customer Response

Chapter 7. Customer Automation Technologies (pdf) (pptx) Chapter 8. Customer Data Access

4)     Security, Privacy, and Standards

Chapter 9. Privacy (pdf) (pptx) Chapter 10. Cyber Security Chapter 11. Standards

5)     Transmission, Distribution (coming soon)

Chapter 12. Distribution

6)     Smart Grid Implementation

Chapter 13. Transmission (pdf) (pptx)

• Webinars:NISTのスマートグリッド標準化過程の(当時の)最新状況が紹介されています

・Smart Grid Implementation Transition Planning (November 30, 2011: Webinar #7) Listen Here

・Privacy (June 10, 2011: Webinar #6) Listen Here

・Demand Response (May 4, 2011: Webinar #5) Listen Here

・Customer Automation Technology (March 30, 2011: Webinar #4) Listen Here

・Dynamic Pricing in a Smart Grid World (January 26, 2011: Webinar #3)

・Engaging the Customer (December 16, 2010: Webinar #2)

・Overview of the NIST Standards and Priority Action Plan Activity (December 1, 2010: Webinar #1)

元に戻って、次に、規制される側の組織を見てみましょう。

  公益事業:Public Utility

電気、水道、通信、運輸のような生活必需品/サービスを、政府が定めた規制料金で一般消費者に提供する事業。 米国エネルギー省の2009年末公開資料(“List of Covered Electric Utilities” under PURPA)には、2007年末時点の全米各州の規制機関名と、州内で年間500GWh以上の電力を販売する電力事業者名が掲載されています。

それによると、民間企業(Private Companies)184、共同事業体(Cooperatives)264、地方自治体(Municipals)178、そして州政府や行政区域ごとの団体30、合計656団体が電力事業者として登録されていました。

そのうち、規制機関の規制を受ける電力事業者は、民間企業を中心に、全体の半分以下の249社しかなく、共同事業体や地方自治体などが運営する電力事業者は、基本的に規制の対象外となっています。

ただし、州によっては、規制対象外の民間電力会社が存在したり、共同事業体・地方自治体が運営する電力会社でも規制対象となっているものがあったりして、結構州によってばらばらであることがわかりました。 詳しくは、上記のリストを規制機関ごとEXCELに分類・転記した表を作成しましたので、そちらを参照してください。

  Public Utility Regulatory Policies Act(PURPA:公益事業規制政策法)

これは、組織の名称ではないのですが、ついでに整理しておきたいと思います。 これまでも、インターネットで米国の電力会社を調べているとPURPAという略語によく遭遇するので、何の略かくらいは確認していました。ただ、その正式名称から、各州にPUC(あるいはPSC等)を設けて、その州に合わせた規制料金を設定しPUの監視監督を行わせるための法律か?(=各州に公益事業委員会を作るための法律)くらいに解釈していました。 今回改めて調べてみると、PURPA法は、1970年代初頭のオイルショックに対処するため制定された米国エネルギー法(National Energy Act)の一部として米国議会が1978年に定めたもので、大きな柱は3つ

• 一定の条件を満たせば、誰でも小規模な発電所を創業できる。(この法律により認定された新しい発電所は「適格発電所」と通称される)

• 既存の大手電力会社は、この新しい発電所から電気の買い取りを要求された場合、拒否できない。

• 各州に公益事業委員会を設け、買電価格など、法律の運用に必要な細目を決める。

ということです。

単に公益事業委員会の制定を促す法律ではなく、日本でも太陽光発電の買取制度として注目されている法律でもあった訳で、かつ、そのような法律が米国では30年以上前に制定されていたというのは、1つの発見でした。

以上、いわゆる規制機関と、規制される側の整理を行いましたが、この他に、北米系統での電力安定供給を目指して、ある種の規制を行う組織がありますので、それを見ていきましょう。

  北米電力信頼性協議会:NERC(North American Electric Reliability Corporation)

NERCは、2005年のエネルギー政策法(EPACT2005)で系統の信頼度強化のため設置が定められた組織ERO(Electric Reliability Organization)として、FERCから認定を受けた組織です。

その起源をたどると、1965年米国北東部で起きた大停電を受けて、1968年に、北米各地に電力を安定供給するための自主規制の制定・監視を目的に電力業界が設立したNational Electric Reliability Council(略称はNERCですが、米国内のみの系統の信頼度強化が目的)を母体としています。

その後、1981年、系統接続しているカナダの参加を機にNorth American Electric Reliability Councilと改名。EROの認定を受けた後、2007年1月1日より現在の組織名称となったようです。

NERCの策定した系統信頼度標準(Reliability Standards)は、FERCおよびカナダ州政府規制当局で審査・承認され、米国本土ばかりでなく、カナダの一部の大規模電力系統の所有者(送電事業者、系統運用者、系統利用者)に対して法的拘束力を持ち、更に、カリフォルニア半島にあるメキシコの一部も、規制対象範囲としてカバーしようとしています。

スマートグリッドに関連していうと、NERC重要インフラ保護基準(CIP:Critical Infrastructure Protection)が定められ、電力事業者は、そこで定められたサイバーセキュリティ基準を満たすことが求められています。

では、次にNERCと「Electric Reliability」で関連がありそうなERCOT相当の組織について見てみます。

  北米の同期系統とNERC下部機関

米国の系統は、下図の通りテキサス系統、西部系統、東部系統の3つの同期系統(北米としては、ケベック系統を入れて4つ)に分けられ、テキサス系統ではERCOT、西部系統ではWECC、東部系統の下には、6つの地域信頼度協議会(Regional Entities)があり、各々が信頼度の取りまとめを行っています。 出典:ERCOTホームページ 「NERC Interconnection

ただし、現在NERCに所属する地域信頼度協議会名は、以下の8つ。

1) Florida Reliability Coordinating Council (FRCC)

2) Midwest Reliability Organization (MRO)

3) Northeast Power Coordinating Council (NPCC)

4) ReliabilityFirst Corporation (RFC)

5) SERC Reliability Corporation (SERC)

6) Southwest Power Pool, RE (SPP)

7) Texas Reliability Entity (TRE)

8) Western Electricity Coordinating Council (WECC)

ERCOT(Electric Reliability Council of Texas)は、テキサス州の地域信頼度協議会だと思っていたのですが、実はテキサス地域の地域信頼度協議会は、ERCOTではなく、TREとなっています。

おかしいですね。では、ERCOTは、いったい何をする組織なのでしょうか?

その答えは、TREのホームページAbout Usに見つかりました。

The regional entity functions and protocol compliance were previously performed by Texas Regional Entity, a functionally independent division of the Electric Reliability Council of Texas (ERCOT). Texas Reliability Entity took over all responsibilities of Texas Regional Entity on July 1, 2010.

すなわち、2010年7月1日から、上記のTRE( Texas Reliability Entity)が、テキサス州の地域信頼度協議会の機能をERCOT内のTRE(Texas Regional Entity)という部門から引き継いだ-とあります。 ERCOTのホームページAbout Us-Historyを見ると、

• 1941年、第2次大戦の開始を機にテキサス州のいくつかの電力会社が結集してTIS(Texas Interconnected System)を形成。戦後もそのままテキサス州内への電力供給を続けていましたが

• 1970年、NERCの前身であるNational Electric Reliability Councilの要請に応えてTIS内にElectric Reliability Council of Texas (ERCOT)という組織を作ったそうです。(メンバは、電力会社を退職した方2名のみだったそうです)

• 1995年、テキサス州議会は、州内の卸売電力自由化を決定。1981年からすでにTISの系統運用を任されていたERCOTは、(組織名称は変えずに)1996年9月11日、PUCT(Public Utilities Commission of Texas)から正式に米国内初の独立系統運用者(ISO)に任命されました。 これ以降、ERCOTは、テキサス州のISOであるとともに、地域信頼度協議会の役割も担ってきたのですが、2010年6月末を持って、地域信頼度協議会の役割をTREに委譲したということです。

NERCの各機関である地域信頼度協議会についてまとめると:

•  テキサス州以外は、複数の州で1つの地域信頼度協議会しかない。

• 特に西部系統(Western Interconnection)では、全体で1つの地域信頼度協議会(=WECC)しかない。

• テキサス州を(ほぼ)カバーする地域信頼度協議会は、現在ではERCOTではなく、TREである。

• よく見ると、テキサスの州境と、TREのカバー範囲は少しずれていて、テキサス州の一部は、WECC、SPPおよびSERCの地域信頼度協議会がカバーしている。

• ERCOTは、地域信頼度協議会ではなく、ISOとして機能している。

ということがわかりましたので、ついでに、ISO(およびRTO)についても整理しておきましょう。

  米国の系統運用形態と関連組織

洋の東西を問わず、電気事業においては、発送配電一貫体制による垂直統合型事業者が管轄区域内に電力供給を行う形態がとられてきましたが、様々な公益事業の規制緩和の流れの中で、米国では1990年代に電力自由化の動きが起こっています。

そして 1996年4月のFERCオーダーNo.888の中で、電力自由化時代の新たな送電運用形態として、独立系統運用者:ISO(independent System Operator)という組織形態が推奨されました。

発電・小売供給部門への競争原理が導入される中、系統運用の中立性を担保する望ましい姿としてISOの設置が提唱されたのですが、実際に電力自由化が進むと、卸電力取引増加による送電線混雑の多発や、卸電力価格の高騰等の問題が発生。FERCは1999年12月、オーダーNo.2000として、より広い地域で一元的に系統運用・計画を行う地域送電機関:RTO(Regional Transmission Organization)の設立を提唱しました。

ただし、ISO、RTOとも、そのような組織の設置を義務付けるようなものではなかったため、現状では、ISOが系統運用を行っている地域、RTOが系統運用を行っている地域、従来通りの垂直統合型の電力会社が系統運用を行っている地域が存在しています。(下図参照)

出典:ISO/RTO Council

なお、上図の出典であるISO/RTO評議会:IRC(ISO/RTO Council)は、北米での市場競争と電力の安定供給の両立を目指して、効率的なプロセス、ツール、標準的な技術開発を目指して2003年に設立された業界団体で、現在の構成メンバは以下の通りです。

1)     AESO(Alberta Electric System Operator)

2)     CAISO(California Independent System Operator)

3)     ERCOT(Electric Reliability Council of Texas)

4)     IESO(Independent Electricity System Operator)

5)     ISONE(ISO New England)

6)     MISO(Midwest Independent Transmission System Operator)

7)     NBSO(New Brunswick System Operator)

8)     NYISO(New York Independent System Operator)

9)     PJM(PJM Interconnection)

10)   SPP(Southwest Power Pool)

ISOとRTOが行うことの区別は、それほどないようですが、一見ISOの1つと思われそうなMISOはISOとしてではなく、RTOとして2001年12月FERCから承認されています。ERCOTは、先述の通り、ISOであって地域信頼度協議会の機能を持っていませんが、SPPは、系統運用者であるとともに地域信頼度協議会の機能も併せ持っています。

 

以上、今回は、スマートグリッドに関連する米国の組織を整理してみました。 興味のない方には全くつまらないトピックだったかもしれませんが、自分なりにはいろいろ発見がありました。 最後に、今回整理したスマートグリッド関連組織のカバーエリアを下図にまとめましたので、ご覧ください。

終わり