Washlands by River Great Ouse

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インターテックリサーチでは、デマンドレスポンス、プライスレスポンシブデマンド、トランザクティブエネルギーと並行してKNXに関して現在関心を持っています。

KNXは、2014年9月現在、全世界37か国366社から、7000種類以上の製品が、これまで相互運用性に関する認定テストを合格した証のKNXロゴ付きで世の中に送り出されています。また、「KNXパートナー」と呼ばれるKNX技術認定に合格した技術者が、全世界で126か国43,323人おり、KNX製品を利用したハウス・ビルの構築などに携わっています。更に、そのようなKNXパートナーの教育・認定試験を行う、「KNX協会認定トレーニングセンター」が全世界55カ国に299あり、KNXの技術の普及に努めています。
KNXは、ハウス・ビル設備制御用のアプリケーション・プロトコルとして、既に欧州では支配的な地位を占めており、中国でも、ハウス・ビル設備制御用プロトコルの国家標準に選ばれました。しかし、米国では知名度がなく、日本でもあまり知られていませんでしたが、2014年2月、41番目の「KNX National Group」日本KNX協会が発足しました。 KNX協会本部(KNX Association International)は、KNXプロトコルの開発・改良と、普及促進のための環境整備(KNXデバイスによるハウス・ビル制御システム構築ツールの開発・改良・サポート、KNX協会認定トレーニングセンター用トレーニングマニュアルの整備など)を行うことを使命としているのに対して、「KNX National Group」は、国の状況に応じて如何にKNXを普及させていくかマーケティング活動を主眼とする組織で、不肖インターテックリサーチも日本KNX協会の事務局として微力ながらお手伝いをさせていただいています。

本ブログでも、「KNX、日本上陸に向けての動き」、「KNXの相互運用性確保に向けた仕組み」、「日本KNX協会発足」、「2014年上期KNX活動報告」と、KNXに関する情報をご提供してきましたが、来月10月17日に、関西地区で初めてKNXの活動「第1回大阪KNX住宅・ビル制御テクノロジー・アプリケーションフォーラム」を行うことになりました。そして、「お前も何か話をしろ」ということで、与えられた「お題」が「KNXとデマンドレスポンス」。両方とも興味を持っている話題ですので、話をさせていただくこと自体はやぶさかではないのですが、何をどのような順番で話せばよいか-から検討中です。そして、この際、このブログの場を借りて、話す内容をまとめていこうと思いついたのですが、このブログでは、デマンドレスポンスの方にご興味をお持ちの方が多いと思われますので、タイトルとしては、「DRとKNX」ということで話を進めたいと思います。

話の展開としては、
1)欧州におけるスマートグリッドに関する動向を概観し、
2)その中で、デマンドレスポンスは、どのような位置づけにあるのかを確認。
3)一方、KNXは、これまで果たしてきた、単体のハウス・ビルを制御するプロトコルとしての役割から、スマートグリッドの時代において何を目指しているのか?「KNX City」という、KNX版スマートシティに関する取り組みを紹介し、
4)最後に、そのKNX Cityの中において、KNXはデマンドレスポンスにどのように対応していこうとしているのか
という順にご紹介したいと思います。

では、はじめます。

1. 欧州におけるスマートグリッドに関する動向

1.1 欧州連合(EU)の法体系

欧州でのスマートグリッドに関する動向として、ここでは欧州連合(EU)の加盟国を調査対象とし、EUが行う施策の面から欧州のスマートグリッドの動向を見ていくことにします。年代を追ってスマートグリッドに関連したEUの施策を列挙しようと思いますが、その前に、EUの法体系について整理しておきましょう。

日本電気制御機器工業会によると、EUの規制には、規則、指令、決定、勧告及び見解の5種類があります。

1)規則(Regulation):EU加盟国の法令を統一するために制定されるもので、すべての加盟国の国内法に優先して拘束力を持ちます。

2)指令(Directive):EU加盟国の法令統一が目的ではなく、加盟国間の国内法の調整を目的とするもので、指令に従う場合、加盟国は自国の国内法を制定する必要があります。また、国内法への置き換えに際し、加盟国にはある一定の裁量権が与えられているので、すべての加盟国の法令が完全に同一になるわけではありません。逆にいうと、加盟国間の国内法の統一が困難な場合に指令が制定されるようで、特に、域内市場の分野において多用されています。(スマートグリッドの分野でも、指令が多いですね)

3)決定(Decision):(すべてのEU加盟国にではなく)特定の対象者(加盟国、会社または個人)に対して具体的な行為の実施あるいは廃止等が直接的に適用します。決定の採用のための立法手続きは、課題となる事項により、共同決定、賛成、コンサルテーションの3つに分類されます。国内法の制定は不要です。

4)勧告(Recommendation):加盟国、企業及び個人等に一定の行為の実施を期待することを欧州委員会が表明するもので、拘束力はなく、加盟国の立法の準備を目的とする間接的な法律文書です。

5)見解(Opinion):特定のテーマについて欧州委員会の意思を表明したもので、拘束力ありません。

ここまでが、日本電気制御機器工業会によるEUの法体系の説明ですが、スマートグリッドに関する施策に関してECから公開されてきたものを調べると、他にもう2つの種類が見受けられます。

6)コミュニケ(Communication):ECから欧州連合理事会(Council)、欧州議会(European Parliament)、経済社会評議会(European Economic and Social Committee)その他の委員会に提出するドキュメント。

7)標準化指令(マンデート:Mandate):ECが欧州の3つの標準化団体(ESO)であるCEN(欧州標準化委員会)、CENELEC(欧州電気標準化委員会)、ETSI(欧州電気通信標準化機構)に対して発令するもので、強制力はなく、各標準化団体は拒否することもできる。

※ これまで、M/441、M/490というECから発行されたスマートグリッド関連の「マンデート」という言葉を聞くたびに、EU指令と何が違うのかと疑問に思っていましたので、上記のとおりまとめてみました。

1.2 欧州におけるスマートグリッド関連の施策

では、欧州におけるスマートグリッドに関連する施策を以下に列挙してみます。

※ 以下では、総務省が平成24年3月に公開している「スマートグリッド関連サービスにおけるプライバシー・個人情報保護に関する調査研究報告書」、JISC(日本工業標準調査会)の「2013年欧州におけるスマートグリッド標準化の動向<JETROブリュッセル>」を参考にさせていただきましたので、あらかじめお断りしておきます。

1996年12月:第一次電力自由化指令(Directive 96/92/EC)を発令し、小売の部分自由化と送配電部門の会計分離等を提唱。
2003年6月:第二次EU電力自由化指令(Directive 2003/54/EC)を発令し、送電部門の法的分離と小売り全面自由化を要請。
2005年5月:EUの研究総局(Directorate General for Research)の下で、スマートグリッド導入に向けた欧州テクノロジープラットフォーム(ETP Smartgrids:European Technology Platform for SmartGrids)が活動を開始。
2006年4月:エネルギーサービス指令(Directive 2006/32/EC)を発令し、エネルギー消費を正確に反映できるようなメーターの設置を要請。また、「スマートグリッド構想の展望(Vision of SmartGrids)」を発表。
2007年11月:「戦略的エネルギー技術計画(SET Plan: Strategic Energy Technologies Plan)(COM(2007) 723 final)」を発表。
2009年6月:再生可能エネルギー指令(Directive 2009/28/EC)を発令。
2009年7月:第三次EU電力自由化指令(Directive 2009/72/EC)を発令し、少なくとも送電部門の所有権分離を要請。
※この第3次EU電力自由化指令は、スマートメーター導入の費用対効果を2012年9月までに行い、費用対効果が認められれば2020年までに最低80%スマートメーターを導入するよう要請されており、スマートグリッド関連技術であるスマートメータリング促進に関連した指令となっています。
2009年11月:スマートグリッドタスクフォース(SGTF:Smart Grids Task Force)を設立。
2009年3月:欧州標準策定機関(ESO)に対してスマートメーターに関する相互運用性を確保するためのマンデート(標準化指令)M/441発令。欧州標準制定機関ESO(CEN、CENELEC、ETSI)は、共同作業を実施するため、SM-CG(Smart Meter Coordination Group)を組織し、作業を開始。
2010年4月:「スマートグリッド戦略開発文書(ETP SmartGrids Strategic Deployment Document)」発表
2010年6月:EEGI(欧州電力網イニシアティブ:European Energy Grids Initiative)創設。
2011年3月: ESOに対してスマートグリッドに関する相互運用性を確保するためのマンデート(標準化指令)M/490を発令。継続的な規格の策定と技術変革の促進を可能にする枠組みをつくり、2012年末までに報告書を作成することを要請。欧州標準制定機関ESO(CEN、CENELEC、ETSI)は、共同作業を実施するため、SG-CG(Smart Grid Coordination Group)を組織し、作業を開始。
2012年10月: EUエネルギー効率化指令(Directive 2012/27/EU)発令。その第15条第8項(Article 15.8)で、欧州のバランシング市場、予備力市場、その他アンシラリーサービス市場でのDR利用促進を欧州各国の規制機関に呼びかけ、DRアグリゲータおよび消費者と協力して、これらの市場にDR資源が参加しやすくするための技術仕様の整備を要請。

1.3 標準策定機関の動きから見た、その後のスマートグリッド関連の動向

※ 以下の文章では、東芝レビューVol.68 No.8 (2013)「スマートグリッドの最新の標準化動向と東芝の取組み」を参考にさせていただきましたので、あらかじめお断りしておきます。

ECからの標準化指令M/490の要請により、欧州の3標準化団体のCEN(欧州標準化委員会)、CENELEC(欧州電気標準化委員会)、ETSI(欧州電気通信標準化機構)からなる合同スマートグリッド関連標準整備団体として組織されたSG-CG(Smart Grid Coordination Group)は、ECからの要請に応えて2012年12月に「First Set of Standards」と題した報告書を完成させ、公開しています。

これは、文字通り、欧州の電力系統および通信網の現状を踏まえた欧州版スマートグリッドシステムの開発を支援するための標準規格集-第1版な訳ですが、ただ単に関連する標準をリストアップしたものではありませんでした。スマートグリッドに関する(コンポーネント/通信/インフォメーション等の)どのレイヤのシステムを作るかによって、検討すべき標準規格群が提示される、セレクションガイドを提供することが目指されていたのです。

なお、SG-CG内には、本報告書を纏め上げたSG-CG/FSS(First Set of Standards)というサブグループの他に、欧州版スマートグリッド参照モデルを検討したSG-CG/RA(Reference Architecture)、スマートグリッド時代に必要となる情報セキュリティを追求するSG-CG/SGIS(Smart Grid Information Security)と、持続可能なプロセスを検討するSG-CG/SP(Sustainable Processes)の3つのサブグループがあり、本報告書は、他の3つのサブグループの成果も含まれています。更に、別途、ECのM/411標準化要求により組織された、欧州標準策定機関の合同スマートメーター関連標準整備団体であるSM-CG(Smart Meter Coordination Group)の成果についても考慮されています。

内容を簡単にご紹介すると、以下の通りです。

 First Set of Standards

現時点で利用可能な国際標準や欧州標準それぞれの、SGAMフレームワーク(後述)における位置づけとともに、それぞれの標準文書の整備状況が示されています。本報告書では、欧州標準や国際標準のほかに、IEEE(電気電子技術者協会)やIETF(Internet Engineering Task Force)などの標準が400種以上参照され,AMI(Advanced Metering Infrastructure)システムや分散電源システムといった、スマートグリッドを構成する24種類のシステムごとに、SGAMフレームワークにおける標準文書の位置づけが示されている。

 Smart Grid Reference Architecture

SG-CG/RAサブグループが定義した欧州版スマートグリッド参照アーキテクチャで、NISTの「スマートグリッドの相互運用性に関する規格のフレームワーク及びロードマップ」でのGWACスタックと同じ位置づけと考えればよいのではないでしょうか?ここでは、GWACスタックの代わりにSGAM(Smart Grid Architecture Model)が登場しています。
SGAMは、下図に示すような3次元構造をしていて、スマートグリッドを構成する機器間の相互接続性を議論するために使用されます。

• ドメイン(Domain):電力系統を構成する機器を発電(Generation)、送電(Transmission)、配電(Distribution)、分散電源(Distributed Energy Resources:DER)、及び大口需要家構内/家庭(Customer Premises)の領域を示しています。

• ゾーン(Zones):制御対象範囲を表現していて、制御される機器(電力を扱う機器,例えば変圧器など)を制御対象とするプロセス(Process)ゾーン、それらの保護を行う機器を制御対象とするフィールド(Field)ゾーン、変電所などの、複数の横器から構成される拠点を制御対象とするステーション(Station)ゾーン、複数の拠点をまとめた電力系統を制御対象とするオペレーション(Operation)ゾーン、運用者視点での電力系統管理(例えば資産管理や顧客管理)を制御対象とするエンタープライズ(Enterprise)ゾーン、並びに、電力市場を制御対象とするマーケット(Market)ゾーンから構成されています。

• 相互接続レイヤ(Interoperability Layer):ビジネス(Business)レイヤ(市場構造や規制を配置)、ファンクション(Function)レイヤ(スマートグリッドで実現されるサービスを物理的実装から独立に配置)、情報(Information)レイヤ(物理的実装やファンクションの間でやり取りされる情報構造を配置)、通信(Communication)レイヤ(機器間の情報転送のためのプロトコルや機構を配置)および機器(Component)レイヤ(機器の物理的実装を配置)の、相互接続が求められる5つのレイヤから構成されています。

 Sustainable Process

ユースケースを起点とした標準作成プロセスが示されています。ユースケースを起点にすることで、開発する標準の適用範囲を明確にすることができます。なお、今後、標準の開発に伴ってユースケースの数も増大することが想定されるので、それらを管理するためのデータベースとして、IEC Component Data Dictionary(CDD)の適用に言及されています。

本報告書に限らず、SG-CGの報告書群の特徴として、Flexibilityという概念の採用があります。需要家の機器が電力を使用する時間や量を変更可能な場合、それをFlexibilityとして表現し、電力系統はFlexibilityを参照しながら電力の供給を調整する。各需要家機器の需要パターンをFlexibilityとして仮想化することで、機器の種別によらず一貫した手法で電力供給を制御できるようにすることを狙っているとのことです。

 

本日は、ここまでとします。

SGAMというのは、GWACスタックを3次元に展開したような感じですが、デマンドレスポンスは、欧州版スマートグリッドでどういう位置づけになるのか?

実は、最後のパラグラフに登場しています。

需要家の機器が電力を使用する時間や量を変更可能な場合、それをFlexibilityと表現

ここです。次回は、欧州版スマートグリッドにおけるデマンドレスポンスの位置づけについて確認しようと思います。

 

最後に、KNXの宣伝をさせていただきます。

先日(7月4日)、台場日航ホテルにおきまして、第2回KNX住宅・ビル制御テクノロジー・アプリケーションフォーラムを開催させていただきましたところ、30数社70名以上の方にご参加いただき盛況のうちに終えることができました。
それを受けまして、今般、下記の通り大阪ではじめてKNXのイベント開催を企画いたしました。
この機会に是非、KNXについてのご紹介をさせていただきたく、下記の通りご案内申し上げます。

第1回大阪KNX住宅・ビル制御テクノロジー・アプリケーションフォーラム
~ 現代都市生活のためのエコで快適な省エネ環境づくり ~

2014年10月17日(金) – 13:30開始

会場: ザ・リッツ・カールトン大阪

参加方法
フォーラム参加は無料です。案内状のダウンロードはこちらをクリックしてください。
職場や取引先の方にご自由に転送・配布していただいて結構です。

なお、席数は限られておりますのでご了承ください。準備の都合上、10月15日までに参加ご登録いただけますと幸いです。

KNXテクノロジー・アプリケーションフォーラムへの皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

終わり