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前回は、VPPのビジネスモデルの事例として、H28年度バーチャルパワープラント構築事業費補助金(VPP構築実証事業)の採択事業者のうち、「関西VPPプロジェクト」以外でインターネット上情報公開されているものについて、調べた内容をご紹介しました。

今年度から始まった同補助金事業同様、弊ブログでも、VPPシステムの仕組みや、それに関連した制御プロトコルをご紹介するだけではなく、「エネルギーリソースアグリゲーション」による新たな電力ビジネスのビジネスモデルに焦点を当てようと思っています。
そこで、まず今年度VPP構築実証に採択された事業者のシステムとビジネスモデルをご紹介した次第です。

ところで、当初、VPPは工場などが自家消費するために設置した小型電源を束ねて遠隔制御することにより、大規模発電所に匹敵する電力を得ようとしたもので、VPPとして(アグリゲーションビジネスとして)独立したビジネスモデルではなく、あくまでも電力会社が電力調達手段の1つとして利用したものではなかったかと想像しています。

試しにドイツの4大電力会社のホームページを調べてみると、すべてにVPPに関する記述があり、例えばRWEでは、2010年までにシーメンスの協力のもと、小水力発電やコージェネ、非常用電源を束ねたVPPの実証実験で、その技術面、経済面での検証をし終え、2012年2月以降、RWEの子会社RWE Energiedienstleistungen GmbH が、同社のエネルギーサービス事業の一環として、VPPシステムで集約した電力をドイツの卸電力取引所であるEEX経由で販売しているとのことです。VPP資源は、そればかりでなく、予備力にも使われています。

E.onの「Virtuelle Kraftwerke(VPPのドイツ語)」のページの説明によると、同社では、「E.ON Connecting Energies」という事業部門がVPPサービスを扱っています。 需要家の施設(Ihre Anlagen)を見分して何がVPP資源として利用可能か判定し、需要家側もVPPサービスの加入に納得すれば、遠隔制御装置「E.on ComBox」を設置して、E.onが自社開発したVPPプラットフォームに接続するとともに、系統接続の適合審査に合格するためのサポートを行ないます。VPPカスタマーポータル(VPP-Kundenportal)やスマートフォンのアプリも用意されていて、需要家は電力消費状況/電気料金をモニタできるようです。更にエネルギー管理専門家用に、Smart ViewⅡというポータルが用意され、エネルギー消費のベンチマーク、トレース、検証ができるようですが、詳細は不明です。

 

EnBWはVPPサービスとして、再エネ発電事業者向けのエネルギー管理サービスに力を入れているようです。
ドイツでは、2000年、原発廃止に伴うエネルギー源の多様化と持続的供給をめざすために再生可能エネルギー法(EEG法)が制定されています。この法律で、電力会社には再生可能エネルギー設備で生産された電力を固定価格で買い取ることが義務付けられ、買取コストは消費者の電気料金に上乗せされたことから、再エネ導入拡大に伴って消費者の費用負担が急増。2014年の改正EEG法では、出力500kW以上の新規発電装置に関しては、再エネ発電事業者であっても、発電した電力を市場で直接販売することを義務づける「ダイレクト・マーケティング制度」ができました。 EnBWでは、分散型電源を集約して大規模発電所のように運用すること以外に、再エネ発電事業者が直接市場で発電した電力を販売しなければならないダイレクト・マーケティング処理の代行サービスをVPPサービスに加えているようです。

VattenfallのVPPのページは、更に趣が違っていました。

需要家のヒートポンプとコージェネをベルリンにあるVattenfallの地域暖房制御センターが遠隔制御することで、系統接続された風力発電が需要を上回る場合はヒートポンプに指令を出して風力発電の余剰分を吸収し、風力発電が需要を下回る場合はコージェネ(CHP)に指令を出して不足分を補うというようなことが書かれてていました。別のVattenfallのVPP資料では、このVattenfallのVPPに参加できる設備をVHP(Virtual Heat & Power)と呼んでいるようです。

 

今回、お盆休みを利用して調査したのですが、思ったほど時間が取れず中途半端になってしまいました。もっと調査をしてからブログで公開することも考えたのですが、次は、いつアップできるかわからないので、とりあえず調べた範囲で公開させていただきます。
以上は、電力会社自体(か、その子会社)がVPPのリソースアグリゲーションを行なうビジネスモデルでした。同じドイツでも、電力会社以外がVPPビジネスを成功させている例として、弊ブログシリーズの「その5」でもご紹介したNext Kraftwerke社があるのですが、それは次の機会に譲りたいと思います。

終わり