第四次産業革命に関連した日本国内の取組み

Horizontal Steam Engine, Quarry Bank Mill

The engine which was originally installed in this position was scrapped in 1906. It was a horizontal engine which is more efficient than a beam engine because the piston moves forwards and backwards rather than up and down which uses more energy.

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前回は、世界経済フォーラム創設者:クラウス・シュワブ氏の著書に記された「第四次産業革命」の特徴を確認し、それがもたらす近未来予想の内容をご紹介しました。 今回は、第四次産業革命に関連した日本の取り組みを概観します。 では、はじめます。

3.国内省庁の動き

シュワブ氏の著書では、「第四次産業革命」が、単に技術の進歩がもたらす産業構造の変化にとどまらず、社会構造、経済構造、文化構造、ひいては我々の暮らしにまで影響をもたらすものであると記されていた。

そこで、日本政府の機関で、産業構造の変化に直接かかわる経済産業省だけでなく、他に関係しそうな首相官邸、内閣府、総務省、国土交通省、文部省の各ホームページ上で、第四次産業革命/第4次産業革命関連のキーワード検索を行ったところ、様々な会議体やイベントが見つかった。
#他にも、農林水産省や厚生労働省等、関連する部署があったかもしれないが、今回、調査期間が短かった(4月~6月)ので、割愛した。

どのような会議体が、いつ頃どのような議論をしていたかの詳細を見るにはここをクリック

そこから、部門ごとに、第四次産業革命に関連して議論している主な会議体同士の関連と主な成果物を図にまとめると、以下のようになった。
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以下では、これらの政府関係機関の内、内閣府、日本経済再生本部と経済産業省の第四次産業革命に関連した動きを紹介する。

内閣府:ソサエティ5.0 (Society5.0)

「ソサエティ5.0」とは、「超スマート社会」の実現に向けた一連の取組に関する名称で、内閣府内に設置された総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)で検討され、2016年1月に閣議決定された「第5期科学技術基本計画」の中で使われているものである。

「第5期科学技術基本計画」は、2016年度から5年間の科学技術政策の基本指針をまとめたもの。同計画の「第2章 未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出の取組」の目次に、「(2)世界に先駆けた「超スマート社会」の実現(Society 5.0)」として、ソサエティ5.0の名称が使われている
「超スマート社会」とは、「必要なもの・サービスを、必要な⼈に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる⼈が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、⾔語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会」と定義されている
「ソサエティ5.0」の5.0という数字に関しては、①狩猟社会、②農耕社会、③工業社会、④情報社会に続く、5番目の「科学技術イノベーションが先導する」社会という意味が込められている
具体的には、サービスや事業の「システム化」、システムの⾼度化、複数のシステム間の連携協調が必要であり、産学官・関係府省連携の下、共通的なプラットフォーム(超スマート社会サービスプラットフォーム)構築に必要となる取組を推進するとしている

そのプラットフォームとして、当面、総合戦略2015で定めた11システムのうち「高度道路交通システム」「エネルギーバリューチェーンの最適化」「新たなものづくりシステム」をコアシステムとして開発し、他システムと連携協調を図り、新たな価値・サービス創出の基となるデータベースの整備と基盤技術(AI、ネットワーク技術、ビッグデータ解析技術等)の強化を図るとしている。

出典:内閣府 CSTI「我が国の科学技術イノベーション戦略-Society5.0実現に向けてー」

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また、官民対話や他省庁プロジェクト等と連携を強化するとともに、以下のように産業界とともに、推進策を具体化しているとしている。  
出典:内閣府 CSTI「我が国の科学技術イノベーション戦略-Society5.0実現に向けてー」

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内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が中心となってまとめられたソサエティ5.0に関して、関係省庁の対応を概観すると、以下のとおりである:

・総務省:情報通信審議会の情報通信政策部会およびIoT政策委員会が調査・審議を⾏ない、施策目標、検討・実施の主体、スケジュールを明確化した上で整理した「IoT総合戦略」としてとりまとめ
・ 文部科学省:平成28年版科学技術白書第1部第1章で『「超スマート社会」の到来』というタイトルで、ソサエティ5.0の目指す未来像を示すとともに、第2章で『スマート社会の実現に向けた我が国の取組(Society 5.0)の方向性』で「超スマート社会」で活躍する人材の育成・確保まで含めて検討

※ ソサエティ5.0は、まとめられた時期から見て、ダボス会議で再定義された「第四次産業革命」ではなく、インダストリー4.0で考えられていた「第4次産業革命」を参考にしたものと考えられる。

日本経済再生本部:日本再興戦略中の第四次産業革命の捉え方

「日本経済再生本部」下に設置された「産業競争力会議」では、日本経済の『失われた20年』を取り戻すべく、2013年以降、毎年「日本再興戦略」を立案/改定し、実行に移しているが、2016年6月に発表された「日本再興戦略2016」では、副題が「第4次産業革命に向けて」となっている。

その中で『GDP600兆円を実現するための「官民戦略プロジェクト10」』が定義され、トップに「第4次産業革命の実現」が挙げられている。http://www.itrco.jp/images/IR4-3-3.jpg

出典:首相官邸:「名目GDP600兆円に向けた成長戦略

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  • このプロジェクトのタイトルは「第4次産業革命の実現」となっているが、内容的には、「スマート工場」や「サプライチェーン全体の在庫ゼロ」、「即時オーダーメード生産」といった、インダストリー4.0/インダストリアル・インターネットの色合いの濃いものから、クラウス・シュワブ氏の提唱する「第四次産業革命」でも取り上げられている「個別化健康サービス」、「介護ロボット活用」や「自動走行」、「FinTech」などが「データ活用プロジェクトの推進、中堅中小企業への導入支援」の項目に入れられているとともに、「新たな規制・制度改革メカニズムの導入」、「イノベーションの創出」から「チャレンジ精神にあふれる人材の創出」まで、広く第四次産業革命の実現に必要な分野がカバーされている
  • ただし、「第4次産業革命は、技術、ビジネスモデル、働き手に求められるスキルや働き方に至るまで、経済産業社会システム全体を大きく変革する」という認識のもと、「新たな社会システムや産業構造、就業構造の将来像を共有し、それに向けた目標を目指」して何をすべきかに主眼が置かれており、第四次産業革命が既存業界にどのような(悪)影響をもたらす可能性があるかについては言及されていない  

経済産業省:Connected Industries

経済産業省内に設置された「産業構造審議会」の下部組織である「新産業構造部会」では、第四次産業革命へ的確に対応するための官民の羅針盤を示すべく、2016年4月27日に「新産業構造ビジョン-中間整理」を公開した。

中間整理を実施した背景として、『「第4次産業革命」とも呼ぶべきIoT、ビッグデータ、ロボット、人工知能(AI)等による技術革新は、従来にないスピードとインパクトで進行しています』と述べられており、日本が欧米のインダストリー4.0やインダストリアル・インターネットに後れを取っていることへの焦りが感じられる中間整理となっている。

出典:経済産業省「【60秒解説】第4次産業革命-日本がリードする戦略-」

  • この時点では、第四次産業革命はインダストリー4.0やインダストリアル・インターネットと同義と捉えられている
  • ただし、「3.第4次産業革命による社会の変革と産業構造の転換」では、シュワブ氏が言及しているように、第四次産業革命が雇用にどのような影響が出そうかも検討されていることが判明した

2017年5月30日、中間整理以降の議論を反映した「新産業構造ビジョン - ⼀⼈ひとりの、世界の課題を解決する⽇本の未来」が公開された。
その中では、「成⻑戦略第2ステージの課題は、第4次産業⾰命の技術(IoT、ビッグデータ、⼈⼯知能、ロボット)を社会実装し、ソサエティ5.0を実現すること」とし、「技術⾰新をきっかけとする第四次産業⾰命を踏まえ、⽬指すべき未来社会像であるSociety 5.0を実現するための産業の在り⽅、多様な⼈、組織、機械、技術、国家がつながり、新たな付加価値を創出し、社会課題を解決していく」新たな産業構造として、Connected Industriesというものを導入している。

出典:経済産業省:「新産業構造ビジョン - ⼀⼈ひとりの、世界の課題を解決する⽇本の未来」

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この図から、「新産業構造ビジョン」の中では、第4次産業革命は、技術の面からしか捉えていないことがわかる。

以上、今回は、第四次産業革命に関連する日本政府関係機関の主な動きをご紹介しました。

次回は、第四次産業革命が日本のエネルギービジネス(とりわけ電力ビジネス)にどのような影響をもたらすのか検討するにあたっての前提条件を整理しようと思います。

終わり