The Kings Arm, Ombersley

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前回は、カリフォルニア州エネルギー委員会(California Energy Commission:CEC)がカリフォルニア州のエネルギーに関する規制(California Code of Regulations Title 24、Part 6)を更新し、新築のビルの省エネ制御の標準プロトコルとしてOpenADR2.0aまたは2.0bをデフォルトの通信プロトコルに認定しようとしていることをご紹介しました。 デマンドレスポンスのプロトコルとして、OpenADR発祥の地カリフォルニアで「OpenADRいまだ健在なり」ということをお伝えした次第です。

今回は、直接デマンドレスポンスとは関係しないかもしれませんが、今後大いに関係するかもしれない、カリフォルニア州に端を発した?CCA(Customer Choice Aggregation)を取り上げたいと思います。

というのは、環境省のホームページで「平成28年度低炭素社会の実現に向けた中長期的再生可能エネルギー導入拡大方策検討調査委託業務報告書」というのを見つけ、その第3章「系統強化方策及びデマンドレスポンス等の需要能動化方策の提案とその効果把握」の「3.5 諸外国におけるデマンドレスポンスの活用状況」を読んでみると、デマンドレスポンスに関して非常によくまとまっていて、その中に恥ずかしながら自分の知らなかった取組を見つけたからです。
「3.5.2 米国における電力需給向けデマンドレスポンス活用状況」の「(2) 米国各地域におけるデマンドレスポンス・プログラム」の中の「3) その他の取組み」-「b. Community Choice Aggregation とデマンドレスポンス」-「イ)CCA におけるデマンドレスポンスへの取組」が、それです。
この報告書によると:

米国の Community Choice Aggregation(CCA)は、市郡(地方自治体等)が代表して地域内の家庭やビジネス、公共施設用の電力需要を購入する仕組みである。マサチューセッツ州、ニューヨーク州、オハイオ州、カリフォルニア州、ニュージャージー州、ロードアイランド州、イリノイ州でCCAを認める州法が採択された。
CCAの主体となるのは、市郡によって設立された非営利の電力事業者である。 Marin Clean EnergyのCCA事例を図3-71 に示す。CCAは地域の電力需要を束ね、電力会社に対する交渉力を高めることによる電気料金の削減だけでなく、デマンドレスポンス・プログラムを提供する場合もある。コミュニティ構成員の希望に応じて再生可能エネルギー発電による電力を選択するといった動きも見られる。
CCA管轄内にある全ての家庭は、明示的に拒否しない限り、自動的にCCAプログラムに登録されてサービスを受けなければならない。なお、CCAはCCA管轄内の非家庭需要家にサービスを提供することもできる。
また、カリフォルニアにおけるCCAと民間電力会社の役割を表3-90 に示す。CCAは発電の役割を担い、民間電力会社と連携して電力供給を行う。

となっており、この説明を見ると、「市郡(地方自治体等)が代表して地域内の家庭やビジネス、公共施設用の電力需要を購入する仕組み」という点では、電力購入の生活協同組合のようなもの。
CCA管轄内にある全ての家庭は、明示的に拒否しない限り、自動的に CCAプログラムに登録されてサービスを受けなければならない」という点では、なんだか、かつての企業内労働組合のにおいがします。
ただ、図3-71の事例を見ると、CCAの役割が「再生可能エネルギーの発電」、表3-90を見てもCCAの役割が「発電」と「配電(の一部)」となっており、自社で発電または調達した電気を電力会社(IOU)の送電線を経由し、IOUと連携して需要家に届けるということだと、日本でいうと、かつての「PPS」、現在の「新電力」とどう違うのか? などなど、CCAとは一体どのようなものか、茫洋としています。 

デマンドレスポンスに関係するものならば、CCAの実態を、しっかり、正確に認識しておかなくてはと思い、調べてみました。

まず、CCA発祥の地ですが、ネットでCCAに関する日本語で解説された記事を探すと「2002年のカリフォルニア州での導入を皮切りに、現在全米7州でCCAが。。。」と解説されていることが多かったので、カリフォルニア州かと思ったのですが、ロードアイランド州でした。
#その意味では、「DRはどこへ向かうのか?第3弾:カリフォルニア州の場合-その2」としてご紹介するのはおかしいのですが。。

JouleCommunity Powerの「WHAT IS CCA?」によると、CCAは、地方自治体管轄区域内の個々の住民や企業の電力購買力を集約し、購買者を代表して発電事業者と価格交渉等を行ない、安い電気や環境負荷の少ない電気を管轄区域内の需要家に提供することを可能とする州法改正により出現したシステムで、ロードアイランド州では1996年、マサチューセッツ州では1997年、オハイオ州では1999年、カリフォルニア州では2002年、ニュージャージー州では2003年、イリノイ州では2009年、そしてニューヨーク州では2014年に、それぞれCCAのビジネスが認可されたようです。
カリフォルニア州サンフランシスコの北部ミルバレーを本拠とするCCAのLEAN ENERGY USによると、1996年に定められたロードアイランド州のCCAに関する法律は、その後2002年に改訂され、それまではほぼ100%管轄区域の需要家の参加が強制されていたのに対して、オプトアウト(不参加)が許されるようになり、CCAの管轄区域内であっても、他の電力会社から電力供給を受けることが可能となったようです。
これで、2番目の「かつての企業内労働組合のようだ」という印象に関しては、少なくともロードアイランド州の現在のCCAには当てはまらないことがわかりました。

次に、日本の「PPS」、「新電力」とどう違うのかという点ですが、米国立再生可能エネルギー研究所(National Renewable Energy Laboratory: NREL)のCCAに関する資料「Community Choice Aggregation (CCA) Helping Communities Reach Renewable Energy Goals」の絵がわかりやすかったので、再掲させていただきます。

まず、CCAによっては、自ら発電所を保有することがあるのかもしれませんが、基本的に、CCAは電源を調達するだけで発電はしないことと、「PPS」や「新電力」は米国のIOUと同じく営利企業ですが、CCAは、その管轄区域の地方自治体によって管理されている点が違います。
では従来から存在している地方自治体営の電力会社(Municipal Utility)と何が違うのかと言うと、同じく地域に根差した電力ビジネスですが、送配電設備を持たない点が異なっています。

ということで、CCAは、一義的には、州法で認可された、地方自治体が直接あるいは間接的に経営に関与する「電力購入の生活協同組合のような」非営利の小売電力事業者と考えれば良いのではないかと思います。

ついでに、このNRELのCCAに関する資料から紹介すると、2017年時点で、環境省から出された報告書に記載された7州(地図の緑の州)の他にも6つの州がCCAに関して検討しており、2015年時点で全米のCCAが調達した再生可能エネルギーは7.4MWhで190万需要家に供給していること、2014年から2015年の1年間でカリフォルニア州におけるCCA市場の成長率が顕著で29%も参加者が増えたということです。

その他、この資料に示されたCCAの特徴を箇条書きすると、以下の通りです:

  • カリフォルニア州は垂直統合型の大電力会社(IOU)を擁したままの部分自由化状態でCCAビジネスが行われているが、その他のCCAが認可されている州は、電力完全自由化が行われている
  • CCAビジネスを行なうには、州法の改正が必要である
  • CCAビジネスを認可するにあたって州政府がCCAビジネスの枠組みを決定し、基本的にCCA管轄区域の地域住民は自動的にCCAのサービスを受けることが前提となっている
  • ただし、オプトアウトすることもでき、オプトアウトした需要家は従来の電力会社から電力提供を受けることができる
  • CCAが提供するサービスは、CCAによって異なる
  • CCAは、一般的に、再生可能エネルギー開発の支援、エネルギー効率の改善、競争力のある電気料金の提供、温室効果ガス排出の削減など、地域住民の嗜好を反映した複数のサービス(例:少々高くつくが再生可能エネルギー100%のスーパーグリーン電力、50%が再生可能エネルギーの、安いグリーン電力等)を提供する
  • CCAから電力提供を受ける需要家に関しても、送配電線はIOUの設備が使われ、設備の維持管理はIOUの責任で行われる

なお、CCAは送配電設備も電力使用量を計測するメーターも所有していないため、CCAからの電力供給サービスに切り替えた場合も、電力料金は、CCAへ移行前の電力会社から請求されるようです。その電力料金には、上記の送配電設備の維持管理など、電力会社の取り分と、CCAの取り分が含まれていて、電力会社が一括して電気料金を徴収した後、CCAの取り分をCCAに渡します。
#この部分は、カリフォルニア州の3大私営電力会社の1つであるSCE(Southern California Edison)社の「CCAに関するFAQ集:CCA FAQsV 4.0」から情報を得ています。

さて、肝心のCCAとデマンドレスポンスの関係について考えてみましょう。

基本的に、CCAの使命は、管轄区域内の需要家の需要(デマンド)をアグリゲートし、需要家向けの電源調達を行うことにあります。

  • 以前から大口需要家が電力会社から安く電力供給を受けていたのと同様、地域住民の電力購買力を集約して、個々人の電力購買力とは比較にならない大きな購買力に物を言わせ、
  • 複数の発電事業者から、安くてクリーンな電力を提供する発電事業者を需要家に成り代わって選定し、
  • そうして調達した電力を、IOUを介して需要家に提供する

ということで、CCAは、「デマンド・アグリゲーター」ではありますが、電力会社/系統運用者の要望(DR指令)に従って需要家が削減した負荷(=デマンド・レスポンス)をネガワットとしてアグリゲートする「DRアグリゲーター」ではありません。

ただ、SEPA(Smart Electric Power Alliance)の記事で面白いものを見つけました。 「CCA Update: How New York and California are planning for the future of community choice aggregation:ニューヨーク州とカリフォルニア州は、将来CCAをどのようにしようと考えているのか」というもので、その中の一節の見出しが「Aggregating demand vs. aggregating supply:需要のアグリゲーション対供給のアグリゲーション」です。以下は、その部分の抄訳です。

#今更ですが、全訳ではなく、また、例によって超訳となってしまっているかもしれないことをお含みおきください

CCAは、従来の地方自治体営の電力会社と同じではなく、管轄区域内の需要家がエネルギーサービスを選択する際の自由度を根本的に変えた。CCAの本質は、管轄区域の顧客の電力需要を集約し、バルク割引を受ける機会を提供することにある。
ところが、ニューヨーク州では、州のエネルギー目標達成の道具としてCCAの枠組みを利用しようとしている。すなわち、CCAが集約する需要をグリッド資産として活用し、デマンドレスポンス・プログラムに適用しようとしているのである。このニューヨークのCCAビジネスモデルは、以下の点で注目に値する:

  • ニューヨーク州では、正式なCCA設立プロセスを定め、地域の電力会社や住民・企業など関係者に対しての透明性を高めた。単に公聴会に参加して、CCAとしてどのようなプログラム・料金のサービスを提供するのかを理解するだけでなく、電力会社やCCAの需要家が、CCAの提供するプログラムや料金決定に参加できる機会を与えることで、より良い、CCAと電力会社の関係性構築に向けて門戸を開いた
  • ニューヨーク州においても、CCA設立の焦点は管轄区域の顧客の電力需要を集約することにあるが、CCA設立に当たって、当該地域に電力を供給している電力会社を巻き込むことによって、電力会社とCCAの電源調達の重複を回避し、顧客が、より安い電力価格のサービスや、再生可能エネルギーによって生成される電力を多く含む料金メニュー等、所望のサービスを確実に受けられるようにすることができる
  • CCA設立ガイドラインには、消費者保護に関する条項が明記されていて、たとえば、CCA実施計画には、組織の目標や付加価値サービスの計画、事業展開計画、顧客への書面による説明(CCAが顧客データの不適切な販売を防止するためのセキュリティ・プロトコル等)や、顧客データの保護を如何に保証するかについての詳細規定を含むデータ保護計画の策定が必要とされている。これは、CCAが州の公益事業者や他の電力サービス提供者と同じ顧客保護基準を保持すること要請したものである

ニューヨーク州のCCAのビジネスモデルは、昨今の電力業界で進行している「顧客ファースト」の流れをくむものであり、コミュニティのニーズに基づいて最適化した電力サービスを提供する「顧客関与プラットフォーム」となる可能性を秘めている。

ということで、少なくとも、ニューヨーク州のCCAでは、デマンドレスポンスもCCAが提供するメニューの1つとなることがわかりました。 ニューヨーク州で3番目に出来上がったCCAであるGood Energy – NYは、全米ですでに約250のコミュニティのCCAに対して経営コンサルを実施しているGood Energy, L.P.(有限責任会社)が手掛けるニューヨーク州で最初のもので、Utility Diveの記事「New York regulators greenlight third CCA program」によると、顧客サイトのエネルギーストレージを分散電源とするVPPビジネスも視野に入れているようです。

以上、今回は特にカリフォルニア州に限ったDRの方向性の話ではありませんでしたが、CCAという新たな電力小売事業者が、その事業の一部として、今後DRやVPPビジネスに大きく関わってくるかもしれないというお話でした。

おわり