Church Cottage, Bishop’s Cleeve

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前回は、カリフォルニア州の3大私営電力会社の1つであるSDG&E(San Diego Gas & Electric)がEV充電を対象として新たに始めたTOU電気料金メニューに端を発して、カリフォルニア州で発展してきたVGI(Vehicle-Grid Integration)をご紹介しました。

カリフォルニア州のVGI Roadmap Stakeholder Workshopでは、VGIのVとして電気自動車(EV)またはプラグイン電気自動車(PEV)のみを対象にしていますが、EVGI(Electric Vehicle-Grid Integration)ではなく、ただのVGI(Vehicle-Grid Integration)という限りは、例えば燃料電池車(FCV)のオーナーが電力系統ひっ迫時に系統に電気を戻すようなケースも含めて良いと思います。ユースケース(1)を読み替え、「個別の車両と系統の間で、統一された方法により単一方向に電気が流れるケース」とすると、この場合系統からEVへの単一方向ではなく、FCVから系統への単一方向になりますが、ユースケース(1)の事例に含めて良いのではないかと考えます。
※V1Gの定義も、「EVから系統側への単一方向の電気の流れ」ではなく、「車両と系統間の単一方向の電気の流れ」とした方が良い気がします。

さて、本日はEPRI(米国電力中央研究所)のVGIへの取り組みであるOVGI Platform(Open Vehicle-Grid Integration Platform)のご紹介です。 この件に関して、2014年7月29日にEPRIがプレスリリースで発表したようなのですが、EPRIのホームページからプレスリリースのページが削除されてしまったようで、以下は 「Green Car Congress」というニュースサイトの記事の抜粋です:

EPRIと、自動車メーカー8社、電力会社15社がプラグイン電気自動車(PEV)のオープンなグリッド統合プラットフォーム(open grid integration platform)を構築
2014年7月29日

EPRI(米国電力中央研究所)、8社の自動車メーカー、15の公益事業者は、プラグイン電気自動車(PEV)とスマートグリッド技術を統合したオープンプラットフォームの開発と実証を開始した。このオープンプラットフォームにより、V2G通信を簡素化および合理化し、種々のPEV/充放電機器が電力系統向けのサービス提供を可能とすることで、PEVの価値向上を目指すものである。

クラウドベースで稼働するVGIプラットフォームを開発することにより、DR等の系統側から受信する要求を変換して標準化し、指定された地域の様々なPEV/充放電器に中継することができるようになる。

実証プロジェクトに参加する自動車メーカーは、アメリカホンダモーター、BMWグループ、クライスラーグループ、フォードモーター、ゼネラルモーターズ社、メルセデスベンツ北米R&D部門、三菱自動車工業株式会社と北米トヨタ自動車エンジニアリング&マニュファクチャリングで、ソフトウェア/ハードウェア開発と実証に参加する電力会社および通信会社は、DTE Energy Company、Duke Energy、PJM Interconnection、CenterPoint Energy、Southern Company、Northeast Utilities、Southern California Edison、Pacific Gas & Electric、San Diego Gas & Electric、Commonwealth Edison、TVA、Manitoba Hydro、Austin Energy、Con EdisonとCPS Energyである。

このオープンVGIプラットフォームは、自動メータリングインフラストラクチャ(AMI)、ホームエリアネットワーク、BEMS(ビルエネルギー管理システム)、商業用/産業用電力顧客のEMS(エネルギー管理システム)とインタフェースしてEVを含めた電源リソースを集約するアグリゲーターなど、複数の通信経路にわたって統合を可能にするもので、その第1フェーズとして、EPRIと参加企業は標準化されたDRソリューションの開発に取り組む。

住友電工は、本プロジェクトの第1フェーズでコアプラットフォーム技術を開発する予定となっている。 なお、本プロジェクトで開発するソフトウェアプラットフォームは、カリフォルニア州で進行中の「Vehicle Grid Integration(VGI)Roadmapイニシアチブ」や、IEEE、IEC / ISO、SAE、OpenADRアライアンスの標準に準拠しており、全世界で適用可能である。

https://www.itrco.jp/images/line085.gif

カリフォルニア州でのVGIの動きに関しては、ある程度認識していたのですが、EPRIのVGIに関する動きは把握していず、しかも、住友電工がプラットフォームのシステム開発に携わっているというのは初耳でした。

EPRI主導で、様々な標準を意識して開発されたオープンVGIプラットフォームで、かつ、住友電気工業が開発に関わっているとしたら、今年始まった経産省のVPP構築実証補助金事業の「B-2事業:V2Gアグリゲーター事業」で、この成果を利用しない手はないと思うのですが、如何でしょうか?

EPRIの2014年10月24日付けプレスリリース(これも、EPRIのホームページ上には情報が残っていないので、Green Car Congressのサイトの記事です)によると、EPRIは、住友電気工業と共同開発したオープンVGIプラットフォームのソフトウェアシステムのテストを終え、10月16日9時からSMUD(Sacramento Municipal Utility District)のカスタマーセンターで公開デモを行うとアナウンスしています。

(多分)そのデモ結果も含めて、2014年12月にEPRIから「Open VGI Platform – Phase1 Development Update」の資料が公開されていますが、残念ながらUS$15,000の有償ドキュメントなので、目を通せていません。

2015年12月には、同じく「Plug-In Electric Vehicles as Distributed Energy Resources – Technology Update」の資料が公開されていますが、こちらもUS$2,500の有償ドキュメントでした。

下図は、無料でダウンロードできた2016年7月公開の「Open Vehicle-Grid Integration Platform: General Overview」に掲載されていた、オープンVGIプラットフォームのスコープです。

また、次の図は、2018年6月TRB WorkshopでEPRIのDan Bowermaster氏が「The state of the EV market and smart charging」と題して講演した資料の一部で、オープンVGIプラットフォームを含めて、ISO/DSOがDRリソースを調達する中でのEVリソースの位置づけがわかるものとなっています。

また、以下の図は、2017年3月開催されたEPRIのInfrastructure Working Council (IWC) Meetingで発表されたオープンVGIプラットフォーム フェーズ1のデモと、フェーズ2開発・実証チームの構成図です。

7種類のPEVに、異なるタイプのEVチャージャーで充電している模様がうかがえます。

また、フェーズ2の実証においても、住友電工がITソリューション開発担当として参加していることがわかります。

今回は以上です。

 

おわり