Autumn leaves near Shaw’s Bridge, Belfast – November 2016(1)

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前回は、今年(2020年)9月17日に発令されたFERCオーダー2222に関するいくつかのニュース記事の見出し及びハイパーリンクをご紹介し、おおむね今回のFERCオーダーが好評を博していることを確認するとともに、関連記事の1つとしてUtility Diveの記事をかいつまんでご紹介しました。

FERCオーダー841は、蓄電池などのエネルギー貯蔵設備に卸売電力市場への門戸を開放させるものだったのに対して、今回のオーダー2222は、広く分散電源の卸売市場への参加を促すものであることがわかりましたので、今回は、オーダー841発行後の経緯と、オーダー2222の内容について、少し詳しくご紹介したいと思います。

まず、FERC Online eLibraryで、オーダー2222のDocket No. RM18-9をさかのぼってみると、正しく、2018年2月15日に発行されたオーダー841(162 FERC ¶ 61,127 18 CFR Part 35 [Docket Nos. RM16-23-000; AD16-20-000; Order No. 841])が出てきました。

そのSUMMARYの中で、以下のように述べられています。

In the Notice of Proposed Rulemaking (NOPR), the Commission also proposed reforms related to distributed energy resource aggregations. While we continue to believe that removing barriers to distributed energy resource aggregations in the RTO/ISO markets is important, we have determined that more information is needed with respect to those proposals; therefore, we will not take final action on the proposed distributed energy resource aggregation reforms in this proceeding. Instead, the Commission will continue to explore the proposed distributed energy resource aggregation reforms under Docket No. RM18-9-000.

FERCとしては、「当初分散型エネルギー資源全てにRTO/ISO市場参入を許可しようと思っていたが、そこまで踏み切るには情報不足だったので、新たにDocket No.RM18-9-000として分散型エネルギー資源アグリゲーション(以下DERアグリゲーション)に関して継続審議することにした」ということのようです。

そこで、オーダー841を発行したその日に、2018年4月10/11日に、RTO/ISO市場におけるDERアグリゲーションの参入障壁を取り除くための技術カンファレンス(NOTICE OF TECHNICAL CONFERENCE)開催案内が出されています。

2日間の技術カンファレンスの議事録(10日分211ページ11日分249ページ)も公開されていますが、ちょっと目は通せていません。その後、4月27日には、この技術カンファレンスに関するPOST-TECHNICAL CONFERENCE COMMENTS募集案内が出され、国会議員からの意見書を含め、6月末までに60件弱のコメントが寄せられています。

普通なら、これらのコメントをベースとして数か月後(少なくとも年内)にFERCオーダー2222が発行されてもよさそうなものですが、eLibraryを見る限り動きが見えず、意見収集期限から8カ月余りたった2019年2月、コメントを提出していた国会議員から早急な対応を求めるとともに、3月1日までに現状を明らかにするよう要望書が提出されていました。それに対して2019年6月5日付けでFERCのChatterjee委員長から「技術カンファレンスでのコメントに加えて、たくさんのPost Conference Commentsが届いたため、FERCとしては、Final Rule策定に向けて現在鋭意努力中であります(FERC staff is diligently reviewing the record)」という返事が返されていました。
「蕎麦屋の出前」も顔負けの対応ですね

動きがみられたのは9月に入ってからで、FERCのエネルギー政策&イノベーション事務局(Office of Energy Policy and Innovation)から9月5日付けでPJMはじめCAISO、ISONE、MISO、NYISO、SPPに対して分散型エネルギー資源の市場参入に関する11項目からなる質問票を送付しています。(当然ながら?ERCOTには送付されていません)
これに対して10月初旬に寄せられた回答もeLibraryに登録・公開されており、11月には回答を寄せたRTO/ISO管内の電力会社からも回答に対する補足・コメントが寄せられています。
eLibrary上は、その後動きがみられず、10か月後の2020年9月17日付けでFERCオーダー2222 Final Ruleの発表とニュースリリーズ(Fact Sheet)となっています。

 

さて、オーダー2222(Final Rule、291ページ)のご紹介ですが、まずは、オーダーと同時にFERCが発行したFact Sheet「FERC Order No.2222:A New Day for Distributed Energy Resources」で概要をご紹介しましょう。


FERCオーダーNo.2222は、RTO/ISOが運営するCapacity市場、エネルギー市場、アンシラリーサービス市場において、分散型エネルギー資源(DER)が公平な競争の場で競争することを妨げる障壁を取り除くことで、未来の電力網を実現し、電力市場での競争を促進することに貢献するものである。

ここで、分散型エネルギー資源(DER)とは、従来の電力システムに代わる/強化することができる小規模な発電または蓄電技術(通常は1kWから10,000kWまで)のことで、電力会社の配電システム、配電システムのサブシステム、または顧客の電力メーターの後ろ(施設内)に設置される蓄電池や、太陽光パネルや風力発電、分散型電源の他、デマンドレスポンス、省エネ機器、蓄熱装置、電気自動車とその充電装置も含まれる。

オーダーNo.2222は、RTO/ISO市場において、従来の資源と並んでDERがアグリゲーションを通じて参加することを可能にし、競争による価格低下、グリッドの柔軟性と弾力性の向上、電力業界のイノベーションなど、さまざまなメリットがもたらされる。

この規則は、異なるタイプの分散型エネルギー資源が、それぞれが個別には満たすことができない市場参入障壁(最小入札サイズや性能要件)をクリアすることを可能にするものである。


次に、オーダー2222自体ですが、冒頭にSYMMARYとして、このオーダーは、RTO/ISOが運営する容量市場、エネルギー市場、アンシラリーサービス市場への分散型エネルギー資源の集合体(以下、DERアグリゲーション)の参加に対する障壁を取り除くためのものであり、本日から60日後(2020年11月17日)に発効する。各RTO/ISOは、この最終規則の要件を実施するために必要な料金表の変更を、官報公表日から270日以内(2021年6月ごろ?)に提出しなければならないーとなっています。

次に目次を見ると、
Ⅰ.Introduction
Ⅱ.Procedural History
Ⅲ.Need for Reform
Ⅳ.Discussion
Ⅴ.Information Collection Statement
Ⅵ.Environmental Analysis
Ⅶ.Regulatory Flexibility Act Certification.
Ⅷ.Document Availability
Ⅸ.Effective Date and Congressional Notification
Appendix A: Abbreviated Names of Commenters

という構成で、IV. Discussionの章には、これまで寄せられたコメントを項目別に整理し、
A. Commission Jurisdiction
B. Definitions of Distributed Energy Resource and Distributed Energy Resource Aggregator
C. Eligibility to Participate in RTO/ISO Markets through a Distributed Energy Resource Aggregator
D. Locational Requirements
E. Distribution Factors and Bidding Parameters
F. Information and Data Requirements
G. Metering and Telemetry System Requirements
H. Coordination between the RTO/ISO, Aggregator, and Distribution Utility
I. Modifications to List of Resources in Aggregation
J. Market Participation Agreements
K. Compliance
L. Issues Beyond the Scope of this Rulemaking
の12項目それぞれに関して、

  • NOPR Proposal:分散型エネルギー資源のRTO/ISO市場参加障壁低減に向けて2016年にパブリックコメントを求めるためFERCが作成した提案
  • Comments:寄せられたコメント
  • Commission Determination:オーダー2222としてFERCの決定事項

の形で整理されています。

本当に具体的にどのような制度になるのかは、来年6月ごろに本オーダーに対して、PJMなどのRTO/ISOが提出する内容を見なければわかりませんが、オーダー2222がRTO/ISOに求めている事項を箇条書きでまとめました。

  • RTO/ISO、DERアグリゲータ、配電事業者、及び、関連する州規制当局間でどのように調整するかを規定する
  • DERのRTO/ISO市場への参加を可能にし、DERアグリゲータを市場参加者として位置付ける
  • RTO/ISOの市場に参加するDERアグリゲータのための市場参加協定を定め、DERアグリゲータの役割と責任を定義する
  • DERアグリゲータは一度資格を取ると、制御するDER集合体の内容が変化しても、再登録・再資格認定の必要がなく、DER集合体の資源リストを変更すればよいようにする
  • DER集合体の物理的特性・運用特性を考慮したモデルを確立する
  • DER集合体の最小規模に関する要件として100kWを超えないようにする
  • DER集合体の立地要件を定める(技術的に可能な限り広範であることを条件にDER 集約体内のDERの位置に制限を設ける)
  • DER集合体のための潮流分流係数(distribution factor)及び入札パラメータを規定する
  • DER集合体に関する情報及びデータの要件を定める
  • DER集合体の測定及び遠隔測定の要件を定める

今回は以上です。

 

終わり