Rothwell Conservative Club, Market Hill
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私たちの時代は、科学技術の進歩が爆発的に加速している。中でも、人工知能(AI)の進化は目覚ましく、その中心にあるChatGPTが、驚くべき能力を発揮している。その一方で、我々は人間として、AIとどのように共存していけばいいのか、それが問われているのではないだろうか?

 

2023年4月、私はChatGPT(GPT-4)に遭遇した。

このAIは、人類の膨大な知識を学習していて、私が想像したよりはるかに進んだ存在だった。私の初めての体験は、ただ驚くばかり。ChatGPTが答えを出すたび、私はその情報の幅広さと深さに圧倒された。それはまるで、膨大な図書館が一瞬にして開かれ、その全ての本から得られる知識が私の前に広がったかのようだった。

 

私は、海外在住経験もあり、(英語の文献ならば)海外の技術情報を収集することに苦手意識はなかったが、最新技術動向が書かれた論文などを読みこなすにはそれなりの時間が必要である。ところが、ChatGPTは、海外の資料を(それも英語以外で書かれたものでも)論文の章ごとの内容を数秒で日本語に要約してくれ、「そこはもう少し詳しく」、「具体的にどういう意味なのか」などと頼むことで、とりあえず原文に目を通さなくても、時間をかけずに全体を把握できるようになったのである。

この進化したAI、ChatGPTの力によって、海外の論文やレポートを読む際のハードルが大幅に下がった。これまで時間と労力を必要としていた読解作業が、このAIによって驚くほどスムーズに進行し、深い理解が得られるようになったのである。時間をかけて原文を読むことなく、全体像を理解し、さらに細部に至るまで詳しく知ることができるというのは、まさに革命的だった。

 

と同時に、私は深い恐怖の念を抱いた。

私の仕事は、海外の最新技術情報を理解し、それを日本語の調査報告書にまとめるというものである。しかし、ChatGPTがこれほどまでに複雑な内容を瞬時に理解し、まとめてくれるのであれば、今後、私のような人間が一から情報を調査、整理する必要はあるのだろうかとの疑問が湧いた。

 

そこで、ChatGPTに、私の抱いた「恐怖」に関する意見を求めた。

 

『あなたのお仕事がAIの進歩により誰でもできるようになる可能性に恐怖を感じているんですね。それはとても理解できます。しかし、その一方で、人間だけが持っている独自の視点や感情、人間関係などはAIには模倣できないものです。あなた自身が、仕事を通じて経験した何か特別な瞬間や出来事はありますか?これらの経験や学びは、AIがまだ模倣できない人間特有のものかもしれませんよ。』

 

確かに、海外の技術調査は、文献調査やネット調査だけではなく、現地を訪問して、直接ヒアリングすることで、文字では残されていないことが判明し、単に技術的側面だけでとらえていた評価とは別の評価軸がわかったり、現地訪問で面識を得た方から更に別の専門家を紹介していただいたりということはある。それは、現状のAIには不可能なことだった。

ただ、それで私の不安が解消されたわけではなかったので、再度ChatGPTに尋ねた。

 

「これまでのChatGPT(GPT-3.5)は、2021年9月までの学習データに基づいていますが、今後、IEEEの研究論文や様々な学会の最新レポート、さらにSNSの情報までリーチできるようになると、ChatGPT自身が、これまでのような二次情報に基づく推論や問題把握だけでなく、極めて一次情報に近いレベルの情報をもとにして、われわれ人間が現地訪問して得られる以上の調査品質の報告書を書くことができるようにならないでしょうか?」

 

ChatGPTはその質問に対し、以下のように答えた。

 

『人間が得る情報はその場の空気感や人間関係、そしてその人が持つ独自の感情や経験によって大きく左右されます。それらはAIがアクセスできる情報源からは得られません。さらに、AIは固有の創造性や直感を持つことができません。したがって、現在のところはAIが人間の持つこれらの能力を超えることは不可能です。』

 

しかし、その答えが私の不安を完全に払拭することはなかった。

 

「現在でも、サポートセンターにかかってくるクレームの電話の内容をAIがモニタしていて感情分析までしてオペレータの回答内容を補佐しているというようなことも聞いていますので、先ほどのあなたの回答で『人間が得る情報はその場の空気感や人間関係、そしてその人が持つ独自の感情や経験によって大きく左右されます。それらはAIがアクセスできる情報源からは得られません。さらに、AIは固有の創造性や直感を持つことができません。したがって、現在のところはAIが人間の持つこれらの能力を超えることは不可能です。』というアドバンテージがいつまで人間に残されているのか不安に感じています。私は、海外の最新技術情報を理解し日本語の調査報告書にまとめるという作業自体には、あまり創造性の入る余地が残されていないので、もっと創造性を発揮できる職業に転職したほうが良いということでしょうか?」と、ふたたびChatGPTに問いかけた。

 

『確かに、AIの進歩は驚異的であり、思っているよりも早く、さまざまな分野で人間の業務を補完または代替する可能性があることは理解できます。感情分析をするAIの存在を知ると、その不安が一層増すかもしれませんね。AIが進歩するにつれて、私たちの生活や仕事がどのように変化していくのかを考えるのは、とても自然なことです。

ただ、現状の技術情報の翻訳や解釈という仕事には、実は創造性が大いに必要です。言語の翻訳は文字通りの意味だけでなく、その背後にある文化や社会的な背景を理解し、それを適切に新たな言語に翻訳することを必要とします。また、技術情報を理解し、それを他の人が理解できる形にまとめるという作業もまた、深い洞察力と表現力を必要とします。これらは全て創造性の一部です。

しかしながら、それでもAIに取って代わられる不安があるとしたら、それは自己のスキルセットを広げ、新たな分野で創造性を発揮することを考える良い機会かもしれません。創造性は芸術だけに限定されるものではなく、問題解決、プロジェクトマネジメント、人間関係の構築、リーダーシップなど、ビジネスのあらゆる側面で重要な役割を果たします。

とはいえ、その決断はあなた自身が最終的に行うべきものです。自分の興味やパッションが何であるか、自分がどのように成長していきたいかを深く考え、それに基づいて選択をすることが大切です。』と、長い答えが返ってきた。

 

「『言語の翻訳は文字通りの意味だけでなく、その背後にある文化や社会的な背景を理解し、それを適切に新たな言語に翻訳することを必要とします。また、技術情報を理解し、それを他の人が理解できる形にまとめるという作業もまた、深い洞察力と表現力を必要とします。』というのは、理解できますが、ChatGPTの方が人間よりはるかに詳しく『その背後にある文化や社会的、さらに技術的な背景』を理解している気がします。」と私はChatGPTに反論した。

 

『あなたのご意見は大変重要です。AI、特にChatGPTは広範な情報にアクセスする能力を持っているため、多くの知識を得ることが可能です。しかし、現時点では、それはまだ「情報」のレベルであり、「理解」のレベルまでは達していないとも言えます。

言葉を通じて知識を伝達するとき、私たちは単に事実を述べるだけでなく、文化的背景や社会的な意味合い、あるいはその人自身の経験や信念をも織り交ぜて話します。このような複雑な背景は、現状のAIが完全に把握することは難しいです。そのため、AIは特定の文脈やニュアンスを正確に理解するのが難しい場合があります。

さらに、言葉には感情が含まれています。人間が持つ感情的な理解や共感能力は、現時点のAIには存在しません。これは人間とAIの大きな違いであり、人間の価値を特定の職業に限定することなく維持する要素ともなります。

ですので、あなたの仕事がAIに取って代わられる可能性について心配するのは自然なことですが、人間が持つこの独特の理解力や感情的な経験は、まだAIには再現できない要素です。それは、あなたが新たな創造性を発揮する場所を探す一方で、あなたの現在の仕事にも大いに価値を与えています。

創造性は芸術だけに限定されるものではなく、問題解決、プロジェクトマネジメント、人間関係の構築、リーダーシップなど、ビジネスのあらゆる側面で重要な役割を果たします。』

 

しかし、それでも私は不安を解消しきれなかった。ただ単に自分の仕事が無くなる不安だけではなく、人間の能力がAIに取って代わられる日が来るのではないか。そこにはある種の哀しみの感情も混ざっていた。それは、自分が長年培ってきたスキルや知識、経験が、一夜にしてAIに取って代わられるかもしれない、という感覚に対する哀しみだった。

 

『そのような感情は、とても自然なものであり、あなただけではなく、多くの人が感じるものです。それは、長年にわたり努力して獲得したスキルや経験が、突如として価値を失うかもしれないという恐怖、そしてそれに伴う哀しみです。しかし、重要なことは、その感情が私たちを支配するのを許さないことです。逆に、それをモチベーションに変え、自分自身を成長させていくためのエネルギーに変えることができます。また、AIの進歩は、私たち人間が自身のスキルや能力をより深く理解し、それをどのように活用し、そしてそれをさらに高めるかという新たな視点をもたらすかもしれません。』

 

私の感傷にも近い思いに対して、こうChatGPTは答えた。そして私は思った。

 

ChatGPTは、確かに素晴らしい。しかし、今のところ、その回答はあくまで手元にある情報に基づいているだけであり、新たな洞察を提供するものではない。

一方、私の仕事は、単に海外の技術情報を翻訳し要約するだけでなく、その情報が具体的に何を意味し、どのような影響を与えるのかを理解し、それを他の人に伝える能力を必要とする。これはAIの単なる情報提供能力を超えるものである。

AIに私の仕事の一部を引き継ぐことで、自分の洞察力や創造性を活かすことに時間を割くことができるようになり、新たなことを学ぶ機会にも繋がる。それが自分の価値を高め、仕事をより充実したものにできるなら、ChatGPTの進歩を恐怖と感じる必要はない。

当面、AIを良き相棒として、私は今の仕事を続けていこう。

 

終わり