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6月24日付のGreentechgridの記事「Google Kills PowerMeter」が気になったので、ご紹介します。

2011年6月24日 Michael Kanellos

Google、PowerMeterサービスを中止

『目的は達成した』と、米検索大手の会社は語り、Misfit Toys(不適格なおもちゃ)の国を後にした。

グーグルは、そのブログで、実験は大成功で、ユーザーからいろいろ有益なフィードバックを得られたが、家庭でのエネルギー消費を監視・管理するGoogle PowerMeterのサービスを中止することを明らかにした。サービスは9月16日公式に打ち切られる。

以下は、そのブログから:

我々は、当初、Google.orgプロジェクトとして、エネルギー利用にまつわるデータに人々がアクセスできることの重要性を認識してもらおうとGoogle PowerMeterを始めた。
調査によると、このように単純に個人の使用したエネルギー情報にアクセスすることで、消費者は最大15%省エネできることがわかっていた。このエネルギー情報へのアクセスを広げることで、世界的に省エネを支援することができると考えたが、残念ながら思ったほどのスピードでサービスは拡大しなかった。
そのため、PowerMeterとして、このアクセスの重要性を実証するのを支援し、具体的なモデルを提示できたことは喜ばしい限りだが、我々はこのサービスから撤退することにした。
PowerMeterのユーザーは、2011年9月16日までデータへのアクセスが可能で、計測・蓄積された自分のエネルギー利用に関するデータをダウンロードできる。

我々は、PowerMeterでなしえたことを誇りにしており、エネルギー情報を更に容易にアクセス可能にする技術革新を起こし、この重要な新しい市場機会を追求する者が現れ、この分野が更なる発展を遂げることを期待するものである。

このブログの内容は、企業ブログの常として、自らのなしえた成果について、多少誇張がある。

消費者が最大15%省エネできるというのは、Google PowerMeterのプレゼン資料の常套文句だったが、実際の数字は、それよりもはるかに低いものだった。
OPower(電力会社と組んでSaaS型の省エネサービスを提供している会社)は、エネルギー利用情報による節電効果はせいぜい3%としている。 一方、EcoFactor(エネルギー管理の自動化サービスを提供している会社)は、自社の提供するサービスが、デマンドレスポンスよりも効果が高く、約17%節電になるといっている。EcoFactor成功の鍵は、人間ではなく機械が多くの管理タスクを実施することである。
PowerMeterは、人々にエネルギー管理の重要性を喚起することに役立ったが、Googleは省エネ分野の多数の企業のうちの1つでしかなかったということだ。それでも、Microsoft Hohmよりは長くもった。Microsoftは、この3月、ホーム・マネジメントサービス:Hohmの看板を下し、もとのオフィス分野に専念すると発表している。

電力会社、ソフトウェア・ベンダー、家電機器メーカーは、こぞって一般家庭の省エネに関心を持っている。しかし、省エネのために時間と金をかけ、家電機器などを統合管理するよう、消費者を誘導するのは楽ではない。この業界のリーダーの1つであるTendril社は、大規模のホームオートメーション・サービスを近々発表するようだが、どうなることか?依然として、苦しい戦いが強いられるようだ。

このような状況にもかかわらず、ベンチャーキャピタルの資金は、この分野につぎ込まれている。
最近、iControl社は$5000万の資金調達を行った。また、Matt Rogersその他元アップル社員からなる実体不明のベンチャー企業Nest Labsに相当の資金が流れている模様で、省エネ用のiPhoneインターフェースを開発していると噂されている。

以上、Microsoft Hohm、Google PowerMeterが相次いで一般家庭向け省エネビジネスから撤退したというニュースでした。
今後のスマートメーターや、HAN/HEMS用ホームゲートウェイの位置づけにどう影響するのか気になるところです。

 

ところで、このブログでは、このところ、IEAによる世界各国のCHP/DHCの調査・評価報告書をご紹介しています。前回の「IEAによる各国の地域冷暖房の取り組みの評価-その5」では米国のCHP/DHC事情をご紹介しただけで終わってしまったので、最後に、そのフォローをしておきます。

米国のCHPに見る毀誉褒貶

CHPを実現する上での技術は進歩してきていますが、そのベースとなる「使用する場所、またはそれに近い場所で、単一の燃料またはエネルギー源から生産した熱および電力を同時に利用する」というアイデアは不変です。
それにも拘わらず、「その5」でご紹介したIEAの報告書「米国におけるCHP/DHC発展の歴史」では、その時々の、他の発電技術や、CHPの運転コストと系統電力の電気代+暖房費用との差、電力会社の経営戦略、国/州のエネルギー政策や環境問題に関する戦略等によって、CHPという技術自体が良い評価を受けたり、見向きもされなかったりと、CHPの毀誉褒貶の歴史が語られていました。
日本においてCHP(およびDHC)が、これまでどのような評価を受けてきたのか興味のあるところです。

法律が制定・施行されたことと、実際にその法律通りに物事が運ぶかは別物

2007 年エネルギー自給・安全保障法(EISA)に当時のブッシュ大統領がサインし議会の承認を得たのは2007年12月。ところが、「その5」でご紹介した米国のCHP/DHC評価レポート(2008年10月作成)の「IEAからの政策提言」の中で、「CHP/DHCへの優遇策実施のため、早く予算をつけるよう」提言されています。したがって、同法案で定められたCHP/DHC優遇策は、少なくとも10か月近く店晒しになっていたことになります。では、いつごろ予算が承認されたのか調べてみました。

Wikipediaの情報になりますが、2009年10月、約2年遅れで米国エネルギー省(DOE)のChu長官がArpa-eとして、EISAの予算が成立したことをアナウンスしています。

In October 2009, Secretary Chu announced a new program, Arpa-e, which will fund grants authorized under the Energy Independence and Security Act of 2007

このArpa-eというのは、米国防総省のARPAとは別物で、エネルギー技術分野でのハイリスクな研究開発を担当する 「先端研究プロジェクト庁:Advanced Research Projects Agency – Energy」として2007年8月制定された「米国競争力法: America COMPETES Act」のもとで、DOE内に新設されたようです。

日本の事業仕訳でのスーパーコンピューター関連予算ではないですが、先端研究・先端技術関連予算というのは、洋の東西を問わず削られやすいもののようですね。

 

なお、IEAによる世界各国のCHP/DHCの調査・評価報告書ですが、次は、日本編をご紹介することにして、現在まとめ作業中です。少し時間がかかると思います。

終わり