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昨年末(2012年12月20日)に、2012版の『Assessment of Demand Response & Advanced Metering Staff Report』がFERC(米国連邦エネルギー規制委員会)から発行されています。これは、2006年8月に発刊された初版から数えて、第7版となります。

米国のデマンドレスポンス(DR)とスマートメーター(SM)事情を知る上で非常に重要な情報がたくさん盛り込まれているのですが、下記の通り、年によって差はあるものの、かなりのページ数になるので、そのうちに。。。と思いながら、今までなかなかじっくり腰を据えて読む時間を取れませんでした。

2006年版 (2006年 8月発刊):240ページ
2007年版(2007年 9月発刊): 92ページ
2008年版(2008年12月発刊):139ページ
• 2009年版 (2009年 9月発刊): 18ページ
• 2010年版 (2011年 2月発刊):117ページ
• 2011年版 (2011年11月発刊): 24ページ
• 2012年版 (2012年12月発刊):130ページ

今回から何回かに分け、初版から7年間の米国におけるDRの変遷にフォーカスして、過去の版を含めて読み返し、まとめてみたいと思います。

その中で、

米国でDRが育ってきた中で、政府はどのような役割を果たしてきたのか?
これまで使われてきたDRプログラムタイプごとの負荷削減可能量の差は何を示唆するのか?
米国内でもDR普及に地域差があるとしたら、その阻害要因・促進要因は何なのか?

を明らかにしていきたいと思います。

そして、そこから、今後日本でもDRが米国ほど利用されるようになるのか?

もし、日本でのDRが伸びないとしたら、米国の例から見て、どのような阻害要因が考えられるか?
もし、日本でもDRを伸ばそうと思ったら、どのような米国の政策その他の促進要因が参考になるか?

を考えてみようと思います。

なお、これらの資料では、デマンドレスポンスとスマートメーターを同時に調査しているのですが、ここでは、とりあえずスマートメーターに関する部分はご紹介の対象外としますので、あしからずご了承ください。
また、これらの調査レポートのタイトルが長すぎるので、ここでは、SMの方を省略して「xxxx年版FERC DR評価レポート」あるいは単純に「xxxx年版」のように表記します。

まず今回は、FERCが「なぜこの評価レポートを作成し始めたか?」から2012年版の発刊に至るまでのDRに関するFERCの活動について、ご紹介し、連邦政府がどのような役割を果たしてきたを見ていきます。

では、早速はじめます。例によって、全訳ではないことと、独自の解釈および補足/蛇足/推測が混じっていることをご承知おきください。

 2005年エネルギー政策法(EPAct2005)がFERCに命じたこと

2005年に制定されたエネルギー政策法(EPAct2005)のセクション1252(e)(3)は、一般家庭から大口需要家まで、すべての消費者のDR資源について評価し、地域別のレポートを作成するようFERCに要請した。

具体的には、EPAct2005の中で、FERCに対して以下6項目の調査を指示している。
(A)DRに関連する通信技術、デバイスやシステムの浸透度
(B)使われているDRプログラムおよび時間帯別電気料金プログラム
(C)DR資源の米国内での年間のピーク削減における貢献度
(D)地域ごとの電力供給において、信頼性の高いリソースとして利用可能なDR資源量
(E)供給信頼度維持のため配電会社や送電事業者等がどれほどDR資源を利用しているか
(F)CPPプログラムへの顧客の参加しづらさ等、DRを普及促進させる上で制度上問題はないか

 2006年版FERCサーベイの実施

FERCは、2006年1月25日、ワシントンDCのFERC本部にてFERC技術カンファレンスを開催し、参加者から卸売市場/小売市場でのDR資源開拓の問題点・課題点などの情報をあらかじめ収集。更に、全米で実施されているDRプログラムを調査(2006年版FERCサーベイ)するため、調査フォームを作成して、関係者からのコメントを収集・反映した後、私営(investor-owned:投資家所有)、公営(municipal:町営/state:州営/federal:連邦営)、協同組合営(rural electric cooperative)の電力会社や、電力小売事業者(パワーマーケター)、DRアグリゲータに至るまで、米国内3365のあらゆる種類の電力供給関連会社に対してWebベースのアンケートを実施。
1850の組織から回答が寄せられ、2006年の時点で米国で実施されているDRプログラムの基礎データが得られた。

 2006年版FERC DR評価レポートの作成・公開

集められたデータを元に、2006年現在全米でどのようなDRプログラムのタイプがあるのか、それが地域ごとにどのように展開されているのかの分析が行われ、DRの浸透度ならびに電力需給に対する貢献度(需要削減可能量)が集計され、評価レポートとして8月に公開されている。
レポートでは、その他に、DRプログラムの全体トレンドや各地での進展状況、DR利用の阻害要因なども分析された。

 2007年版FERC DR評価レポートの作成・公開

2006年版は、初版ということもあり、それ以降の版とページ数を比べてもわかるように包括的なDR調査レポートだったが、2007年版は、2006年のサーベイ以降の差分にフォーカスした、100ページを切るレポートを作成、2007年9月に公開している。
2年ごとにサーベイを行い、サーベイを行った翌年は、一般公開情報と市場関係者および業界のエキスパートからの情報を元にした分析を行い、その結果を評価レポートにするという調査パターンがこの年にできあがっている。

 2007年度FERCが実施したその他の DR関連の活動

2007年度、FERCはDRに関連して、以下の2つの最終規則(Final Rule)を公布している。

• FERC Order No.890:オープンアクセス送電料金(Open Access Transmission Tariff:OATT)の規定を改定し、送電サービスプロバイダは、送電計画策定時にDRも考慮し、できればアンシラリーサービス調達にも、通常電源と同等にDRを利用するよう勧告

• FERC Order No.693: FERCは北米電力信頼性協議会(NERC)が定めた信頼性基準83項目を米国内で法的拘束力のある基準として承認したことをこのOrderで公示したが、その際、DRに対しても相応の信頼性基準確立の必要性を認識し、NERCに今後の改定を要請

更に、個々のISO/RTOに対して、いろいろDR関連の注文(認可/勧告)を行っている。その中からいくつか紹介する:

• CAISO MRTU Order:カリフォルニア州の系統運用機関であるCalifornia ISOが運営している一日前市場、リアルタイム市場およびアンシラリー市場にDR機能が提供できる大口需要家を参加させるよう、市場の再設計と技術革新(Market Redesign and Technology Upgrade:MRTU)に関する勧告を実施

• ISO-NE FCM:ニューイングランド地域の系統運用機関であるISO New Englandに対して、先渡容量市場(Forward Capacity Market:FCM)取引においてDR資源が電源と対等に競争できる清算方式を認可

• PJM RPM:米国北東部地域の系統運用機関であるPJMが新たに導入した、系統の信頼性を維持するための価格モデル(Reliability Pricing Model:RPM)に基づいたオークションにDR資源も参加可能なことを確認し、参加に当たっての阻害要因となるようなものがないか検討するよう指示

 2008年版FERCサーベイの実施

2008年前半、FERCは、UtiliPoint International社の協力の下、全米50州、3407の電力供給関連会社に対してアンケートを実施。DRに関しては1889の組織から回答が寄せられ、2008年の時点で米国で実施されているDRプログラムの基礎データが得られた。

 2008年版FERC DR評価レポートの作成・公開

2008年版FERCサーベイ結果を、2006年同様、分析・評価するとともに、2008年版では2006年FERCサーベイで得られたデータとの比較分析も行い、評価レポートとして12月に公開している。

 2008年度FERCが実施したその他の DR関連の活動

2008年10月17日、FERCは卸売電力市場に関する最終規則(FERC Order No.719:Final Rule on “Wholesale Competition in Regions with Organized Electric Markets”)を公布した。その中で、FERCは、DRが公正な電力卸売価格の形成と系統運用の信頼性確保に不可欠であるという認識のもと、FERC管轄下にある全ISO/RTOに対して以下の要求を行っている:

• 州法あるいは州の公益事業委員会で禁止されているのでなければ、アンシラリーサービス市場の一部に、電源と対等な立場でDR資源の入札が認められるべきである

• 系統逼迫時等緊急事態発生時は、電力小売り事業者が一日前市場で調達した電力量より使用電力量を控えることに対してペナルティを課すべきではない

• 州法あるいは州の公益事業委員会で禁止されているのでなければ、DRアグリゲータが消費者になり代わって、負荷を集約したネガワットを卸売電力市場で入札するのを許可すべきである

 (通常運用ではネガワット取引を禁止している場合も)運用予備力が不足している期間は、(卸売取引価格の暴騰を阻止するため)ネガワット取引導入により市場価格安定化を図るような市場取引ルールを検討すべきである

• DRの卸売市場への参入障壁を無くすため、更なる市場改革が必要かどうか調査すべきである

また、個々のISO/RTOに向けてもDRに関連してFERCはいろいろ注文を付けているが、以下にその一部を紹介する:

• MISO:従来卸売電力市場しか運営していなかった中西部の系統運用機関であるMidwest ISOに対して、DRの参加を含めて一日前およびリアルタイムのアンシラリーサービス市場の立ち上げを認可

• NYISO:リアルタイムに電力使用量を計測でき、発電設備に求められていた指令への応答特性や技術仕様と同等の機能を有するDR資源についてアンシラリーサービス市場(予備力市場及び周波数調整市場)への参入を許可するという、ニューヨーク州の系統運用機関であるNY-ISOの申請を条件付きで認可

 PJMおよびISO-NE:これらの卸売市場に参加が許されているDRプログラムを悪用して、DR資源提供者が不当な利益を上げる可能性があることに対して懸念を表明(し、検討・対応を求めた?)

 2009年版FERC DR評価レポートの作成・公開

2009年版は、2007年版同様、前年のDR評価レポート公開後の差分にフォーカスしたものとはいえ、18ページという破格の少なさである。
実は2007年に発効したエネルギー独立性及び安全保障法(Energy Independence and Security Act of 2007:EISA2007)のセクション529には、「18か月以内に米国内で実施されているDRの評価を完了せよ:complete a National Assessment of Demand Response within 18 months of enactment」というFERCに対する指示が記載されており、調査内容が重なるため、2009年版は簡潔にまとめたものを作成し9月に公開している。
EISA2007の「宿題」の方は、The Brattle Group、Freeman, Sullivan & Co、Global Energy Partners, LLCの協力のもと、6月に完成し、『A National Assessment of Demand Response Potential』(全250ページ)として公開されている。

 2009年度FERCが実施したその他の DR関連の活動

2009年7月16日、FERCはスマートグリッドに関連する装置やシステムの開発に優先順位をつけ、スマートグリッド技術への投資を促進するため、スマートグリッドに関する政策大綱(Final Smart Grid Policy)をまとめ、発表している。
その中で、FERCは出力変動の大きな再生可能エネルギーが今後大量に系統連携されることが予見され、系統の信頼性を保持する上でDRが重要であることを強調。系統運用者とDR資源間のコミュニケーションに関して、相互運用性を担保するための標準規格の開発が重要であり、DR、特にDispatchable(制御可能)なDRや(CPPのような)ダイナミック価格を利用したDRのユースケース、シナリオの開発に取り組むべきだとしている。
FERC Order No.719に関連しては、2009年7月および12月No.719-Aおよび719-Bを発行し、ISO/RTOが運営する卸売電力市場への参加条件に関する補足を行っている。具体的には以下のとおりである:

• 州法あるいは州の公益事業委員会で禁止されているのでなければ、ISO/RTOは、前年度400万MWhより以上電力供給を行った電力供給関連会社が、一般家庭の需要を集約して提供するネガワットの入札を許可しなければならない

• 州法あるいは州の公益事業委員会で許可されているのでなければ、ISO/RTOは、前年度400万MWh以下しか電力供給を行っていない電力供給関連会社が、一般家庭の需要を集約して提供するネガワットの入札を許可してはならない

この他、3月にはCAISOのParticipating Load Programという新たなDRプログラムの実施を認可。7月には、米国南西部地域の系統運用機関であるSPP(Southwest Power Pool)の、リアルタイム需給バランシング市場でのDR資源利用を許可している。

 2010年版FERCサーベイの実施

2010年前半、FERCは、Z, INC.社およびKEMA社の協力の下、全米50州、3358の電力供給関連会社に対してアンケートを実施。1755の組織から回答が寄せられ、2010年の時点で米国で実施されているDRプログラムの基礎データが得られた。

 2010年版FERC DR評価レポートの作成・公開

2010年版FERCサーベイ結果を、2006年、2008年同様、分析・評価するとともに、2010年版では2006年および2008年のFERCサーベイで得られたデータとの比較分析も行い、評価レポートとして翌2011年2月に公開している。

 2010年度FERCが実施したその他の DR関連の活動

前出のEISA2007のセクション529は、FERCに対して「米国内で実施されているDRの評価レポート完成後1年以内にDRに関する行動計画を作成せよ:Within one year after the completion of the report FERC shall develop a National Action Plan」というもう1つ「宿題」を与えていた。
そこで、The Brattle Group、GMMB、Customer Performance Group、Definitive Insights、Eastern Research Groupの5社の協力を得て『National Action Plan on Demand Response』の報告書を作成、2010年6月17日に公開している。

この他、RTO/ISOが運営する卸売電力市場間でDRプロバイダへの報酬格差があることに対して、

• 構造的な問題がないか、

• それがDRの進展を阻害していないか(発電事業者に比べて弱者の立場にあるDRプロバイダに不利益を与えていないか)

• ISO/RTOは全時間帯にわたって、DRプロバイダが提供したネガワットに対して市場価格のフルレートで支払うべきではないか?

に関して、2010年3月18日にパブリックコメントをもとめるNOPR(Notice of Proposed Rulemaking)を発行。収集したコメントを元に9月13日に技術カンファレンスを開催して、この問題に関して議論した後、更なるパブリックコメントを募集している。

この他、FERC Order No.719に準拠するように市場制度変更を行ったISO/RTOからの制度変更承認依頼に対して、内容を吟味し、承認/部分的拒否を実施している。

 2011年版FERC DR評価レポートの作成・公開

2011年版は、前年のDR評価レポート公開後の差分にフォーカスしたものとはいえ、2009年版同様、24ページという少なさで、2011年11月公開されている。

 2011年度FERCが実施したその他の DR関連の活動

2011年3月15日、FERCはISO/RTOが運営する卸売電力市場においてDRへの報酬に関して定めた最終規則FERC Order No.745(Final Rule on Demand Response Compensation in Organized Wholesale Energy Markets)を公布した。これは、卸売電力市場において需給バランスに貢献でき、(電源と比べても)コスト対効果で遜色がないDR資源が一日前市場およびリアルタイム市場に参加する場合、(電源と対等な)地点別限界価格(locational marginal price:LMP)を支払うよう勧告したものである。

2011年7月21日には、送電事業者並びに送電運用を実施している公益事業者に対して送電計画と原価配分に関する最終規則FERC Order No.1000(Final Rule on Transmission Planning and Cost Allocation by Transmission Owning and Operating Public Utilities)を公布した。これは、FERC Order No.890の内容を再確認するもので、送電計画策定において、送電と(DRの実施により送電量を打ち消すような)非送電を対等に扱うよう要求したものである。

その他にも、PJMのAnnual DRおよびExtended Summer DRという、どちらも、従来のピーク削減対策の範囲を超えた「新たな電源」としてのDR資源利用を目指したDRプログラムの実施を許可するなど、個々のISO/RTOに関してもDRに関する対応を実施している。

※ 2011年版FERC DR評価レポートには記載されていないが、2011年10月20日、FERC Order No.755(FERC Final Rule on Frequency Regulation Compensation in the Organized Wholesale Power Markets)を公布している。これは、卸売電力市場を運用するISO/RTOが、周波数調整取引でDRに対する不当な差別を撤廃し、DRプロバイダにも差別なく公正な報酬が支払われることを要求したものである。

 2012年版FERCサーベイの実施

2010年春、FERCは、Z, INC.社およびDVN-KEMA社の協力の下、全米50州、3349の電力供給関連会社に対してアンケートを実施。1978の組織から回答が寄せられ、2012年の時点で米国で実施されているDRプログラムの基礎データが得られた。

 2012年版FERC DR評価レポートの作成・公開

2012年版FERCサーベイ結果を、2006年、2008年、2010年同様、分析・評価するとともに、2012年版では2006年、2008年および2010年のFERCサーベイで得られたデータとの比較分析も行い、評価レポートとして2012年12月に公開している。

 2012年度FERCが実施したその他の DR関連の活動

2012年4月24日、FERCは卸売市場におけるDRの実行結果の計測と検証に関するパブリックコメントを募集(Standards for Business Practices and Communication Protocols for Public Utilities ~ A Proposed Rule by the Federal Energy Regulatory Commission on 04/24/2012)している。これは、北米エネルギー標準委員会(NAESB)卸売電力市場担当部門(Wholesale Electric Quadrant:WEQ)が作成した「デマンドレスポンスの計測と検証(DRのM&V)」に係わる実務規格(WEQ-015)をNAESBが改定したことに伴い、2010年旧版をFERC Order No.676-Fとして米国内標準に認定した関係上、NAESBの新ルールを追認するかどうかの手続きに従ったものである。集まったパブリックコメントはNAESBにフィードバックされ、6月15日にコメントを反映したものがまずNAESB内で業界標準として承認され、翌2013年2月21日、FERC Order No.676-Gとして公布されている。

この他に、公布済みのFERC Order No.719、No.745に準拠するように市場制度変更を行ったISO/RTOからの制度変更承認依頼に対して、内容を吟味し、承認/部分的拒否を実施している。

いかがでしたか?

以上、FERCがDR(とスマートメーター)の米国内での普及状況について、単に事後分析・評価を行ってきただけでなく、DRの意義をしっかりとらえ、大きな政令から各ISO/RTOの動きに関する細かな勧告に至るまで、政策面でもDRの普及に向けて活動してきたことをご紹介しました。

今回は、FERCの活動紹介がメインなので、評価レポートの分析・評価結果の詳細には立ち入りませんが、最後に、FERCがどのようにDRを定義しているのかについてだけ、ご紹介したいと思います。

2006版において、FERCは、米国エネルギー省(DOE)が2006年2月議会に提出した報告書の中で用いられた以下の表現をDRの定義として正式に採用しています:
Changes in electric usage by end-use customers from their normal consumption patterns in response to changes in the price of electricity over time, or to incentive payments designed to induce lower electricity use at times of high wholesale market prices or when system reliability is jeopardized.

その前に、独自のDR解釈として、以下のように述べています:
Demand response refers to actions by customers that change their consumption (demand) of electric power in response to price signals, incentives, or directions from grid operators.

デマンドレスポンスとは、価格シグナル、インセンティブ、あるいは系統運用者の指示に応じて顧客が電力消費(需要)量を変更する行為のことである。

この表現の方が簡潔で分かりやすいと思われませんか? また、DOEのDRの定義と、この定義には決定的な違いが存在します。
すなわち、DOEでは、何らかの報酬に応じて顧客が需要を抑制することを想定しているのに対して、FERCの上記の表現の「or」以降の意味するところは、経済的な損得だけでなく、系統運用者の指示/要請に応じて消費量を変更するというのもアリだという点です。

2012年夏日本が達成した「節電」は、単に節電がうまくいっただけで、「日本全体でDRを実施した」という認識はなかったと思いますが、FERCの解釈によるDRそのものだったということができるのではないでしょうか。

もう1点、2006年版の「Role of Demand Response in Retail and Wholesale Markets」の記述を見ると、この時点で、DRの用途として、ピーク需要削減だけではなく、卸売電力市場の価格高騰や系統の予備力不足への対応という面がすでに認識されていたことを、指摘しておきたいと思います。

日本では、現在でも「DR=ピーク削減」というとらえ方がされることが多いですが、DRの用途はそれにとどまらないということをFERCは7年前に見越していたということですね。

以下の図は、今回ご紹介したFERCの活動を踏まえ、今後のDRのトレンドとしてここ最近考えていることをまとめたものです。

次回から何回かに分けて、FERC DR評価レポートの内容紹介に入っていきたいと思います。

おわり