“The Dawn Mist” at Sonning

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前回は、2006年9月29日に公開された和解合意書「2 of 4」の「Settlement Agreement And Attachments」に掲載されていたMOPRに関する記述をご紹介しました。また、「和解合意書」という名前から、これで少なくとも大筋が決まったのかと思いきや、その後も和解合意書の内容に関する賛否両論のコメントがFERCに寄せられており、2006年12月22日付けでFERCは、条件付きで和解合意書の内容を承認したところまでをご紹介しました。

今回は、MOPRの内容が2007年6月の第1回目のRPM容量オークション実施後、どのような変遷をたどったかご紹介する予定ですが、FERC Online eLibraryを検索すると、2006年12月22日にFERCが和解合意書に関して条件付きのGOを出したことを不服として、翌年1月に入って、和解協議に参加していた Mittal Steel USA社等5団体が和解合意書への署名を撤回する旨を報告、Public Service Electric and Gas(PSE&G)社等8団体からは、12月22日のFERCオーダーの再審議/執行停止/無効化/取消しを求める嘆願書が提出されています。
翌年2月6日、PJMはこれらの申立てに対して反論を展開していますが、それでも反対を抑えきれなかった(2月12日、Mittal Steel USAは、PJMの反論を認めないようFERCに申し入れています)ようで、2007年2月21日、FERCは「ORDER GRANTING REHEARING FOR FURTHER CONSIDERATION」を発令しています。

オーダーのタイトルを直訳すると、「(RPM制度設計に関して)更なる検討のための再審議要求を許可する命令」ということになるでしょうか?ただ、オーダーの内容を見ると:


2006年12月22日に出したFERCオーダー(再審議拒否と条件付きでの和解合意書の承認)に対して翌年1月早々再審議要請が出されたが、連邦規則集第18編第385.713条(2006年)に基づき(30日以内にFERCが再審議実施の決定を行わなかった場合、再審議要求は拒否されたものとみなされる)、提起された/提起されるべき事項を検討する限定的な目的の再審議要求なら、当該FERCオーダーの再審議を認めるが、これまでに提出された再審議要求は検討しないこととする。今回のオーダーに基づいて提出された上記の命令の再審議要求は、将来対処する。


といった内容になっており、「再審議を認める(GRANTING REHEARING)」というFERCオーダーのタイトルとは裏腹に、要するにFERCは2006年12月22日のFERCオーダーに関して巻き起こった紛糾に関して事実上の幕引きを図ったもの?と考えられます。
#事実、それ以降、FERC Online eLibraryで調べた限り、PJMが第1回RPMオークションを開催するまで、本件に関連する再審議要求は出ていませんでしたので、後はPJM側でマニュアルM18の作成および料金表の改定を含めて、RPM制度による容量市場の実運用に必要な更なる詳細化を粛々と進め、第1回のRPMオークションに臨んだということではないかと思われます。

 

ということで、やっと、MOPRのその後の変遷についてご紹介するところまで辿り着きました。

紆余曲折を経て、2007年からRPM制度の下での容量市場オークションが開始されましたが、「その5」の冒頭部分でお話ししたように、少なくともMOPRのルールに抵触した事例はしばらくなかったようです。ところが、2011年になって急にMOPRに注目が集まります。 

まずは、2011年のMOPRルール変更から見ていきましょう。

 

■2011年のMOPRルール変更

2011年2月1日、PJMの電力供給者グループ(PJM Power Providers Group、以降、P3)は、現行のMOPRが不当かつ不合理であると主張し、FERCに苦情を申立てました。

その理由として、ニュージャージー州で成立した容量調達法により、今後、州の開発援助を受けた新設電源がPJMの容量市場に参入し、容量市場価格を押し下げる可能性があるので、当初のMOPRにある「州規制機関もしくは州議会の決定に応じて開発された発電計画容量資源に対するMOPR適用除外」の条項に関して再検討して欲しいというものでした。

PJM管内のいくつかの州で、ニュージャージー州と同じような電源調達プログラムの実施が予定されていたので、2月11日、PJMは、その対応策とともに、RPM制度の下での容量市場運営で気になっていた不都合な点への対応策を含めて、RPM制度の改定案をFERCに提出。これに対してFERCは4月12日、「ORDER ACCEPTING PROPOSED TARIFF REVISIONS, SUBJECT TO CONDITIONS, AND ADDRESSING RELATED COMPLAINT」を発令し、MOPRに関連して下記の修正を承認しています:

  • コンバインドサイクル発電(Combined Cycle:CC)および燃焼タービン(Combustion Turbine:CT)の指標価格(Net CONE)算定基準値の変更
  • MOPRに抵触するかどうかの判定基準をNetCONEの80%未満から90%未満に引き上げ
  • MOPRに抵触するかどうかの判定基準から、ネットショートポジションを持つという前提条件を撤廃
  • MOPRに抵触した場合実施していたインパクト・スクリーニング(MOPRに抵触した入札価格は最低入札価格に入れ替えて再度容量市場決済価格を計算した値が市場価格に与える影響が小さい場合、もとの入札価格を正とする)を廃止
  • 州規制機関もしくは州議会の決定に応じて開発された発電計画容量資源に対してはMOPR適用除外としていた例外電源規定を廃止
  • $0/MW入札を認める電源の種類として、従来の原子力、石炭、統合ガス化複合サイクルや水力発電の他に、風力・太陽光電源を追加
    ただし、それが既存施設の追加・増強に当たる場合は$0/MW入札は認めないこととする
  • サンセット条項(「その5」でのMOPR紹介で一番解釈に困った6番目の「新規電源に関して正の純需要」が認められた場合。。。とあったものです)の廃止

FERCはこのオーダーで、PJMと、IMM(Independent Market Monitor:2008年にPJMの市場監視部門が独立してできたMonitoring Analytics社のこと)がMOPRに抵触した入札価格を提示した電源に関して、ユニット別コストの正当化を検討できるようにする料金改定案作成(第1回目)を指示し、PJMは5月12日に提出しています。

そして、2011年に開催された2014/2015年向けBRA(BASE RESIDUAL AUCTION)では、2件の入札がこの改訂版MOPRのルールに抵触したようです。

ところが、これでMOPRに関して「一件落着」したのかというと、さにあらず!

FERCのOnline eLibraryを見ると、

  • 2011年4月12日のFERCオーダーに対しても、5月12日のP3を皮切りに、10社以上から再審議要求が出ています。
  • これに対して6月13日、FERCは「ORDER GRANTING REHEARING FOR FURTHER CONSIDERATION AND ESTABLISHING TECHNICAL CONFERENCE」の中で、それらの再審議要求で指摘された事項について議論するため技術カンファレンスの開催を予告。
    ※7月28日にカンファレンスが開催された模様ですが、議事録はeLibraryにアップされていなかったので、どの様な話し合いが行われたか詳細はわかりません。
  • その後も、「Post-Technical Conference Comments」が多数寄せられており、11月17日、FERCは「ORDER ON COMPLIANCE FILING, REHEARING, AND TECHNICAL CONFERENCE」を発令しています。このオーダー中で、FERCは5月12日PJMが提出した料金改定案を一部承認一部否認、様々な利害関係者から提出されていた再審請求で指摘されてきた内容に関しても一部承認一部否認し、PJMには料金改定案の再提出を求めました。
  • PJMは、これに対して12月19日再検討した料金改定案を提出(第2回目)しています。
  • が、同日、FERCの11月17日のオーダーに関しての再審議要求がP3その他から提出されており、正にMOPRのルール変更は泥沼の様相。
  • 2012年3月15日、FERCは「ORDER ON REHEARING」を発令し、2011年11月17日のFERCオーダーの再審議要求を拒否しています。
    その結果、再審議を要求していた団体は、係争の場を高等裁判所に移し、2011年4月12日及び2011年11月17日のFERCオーダー自体が無効であることを訴えました。
    #その結末が気になりますが。。。とりあえず、その後の経緯を見ていきましょう。
  • なお、2012年4月4日、FERCは「ORDER ON COMPLIANCE FILING AND REQUEST TO SUPPLEMENT THE RECORD」を発令、その中で、再度PJMの料金改定案の内容についてMOPR対象電源に関して誤解が生じないよう検討して再々提出を求め、PJMは5月4日料金表を再々提出(第3回目)しています。

 

■ 2013年のMOPRルール変更

2012年5月の容量市場開催結果に対して、市場参加者から入札案件がMOPRに抵触するかどうかの判断プロセスが不透明である等の苦情が多数PJMに寄せられました。そこで、PJMは7月上旬、PJM管内の供給者側や需要家側、州規制機関など同一の利害関係のAdHOCグループを作り、PJM、IMMを交えて会合を開き解決策を検討することを提案。約3か月の検討を経て出来上がった各グループから合計6つのMOPR改定案を、2012年11月29日にPJMのMRC(Market & Reliability Committee)にかけて、まとまった結果を新MOPR改定案として2012年12月7日、FERCに提出しています。

これに対して、FERCは、2013年5月2日、「ORDER CONDITIONALLY ACCEPTING IN PART, AND REJECTING IN PART, PROPOSED TARIFF PROVISIONS, SUBJECT TO CONDITIONS」を発令し、MOPRに関連してPJMが提出した下記の修正を承認しています:

  • MOPR適用対象を、燃焼タービン(CT)、コンバインドサイクル(CC)、統合ガス化複合サイクル(IGCC)技術のみに変更する。埋立地ガス発電ユニットや、適格施設(QF)として認証または自己認証されているコージェネレーションユニットは除外する。
  • MOPRに抵触するかどうかの判定基準をNetCONEの90%未満から100%未満に引き上げる。
  • MOPR適用対象でユニットに関しては、MOPRに抵触する場合、BRAにおいてユニット固有の最低入札価格への付替えを行う。
  • 送電システムへの単一の相互接続ポイントにおいて、すべてのユニットを合わせ20MW以上の設置容量(あるいは設備容量を増強した場合)の電源をMOPR適用対象とする。
  • 燃焼タービン、コンバインドサイクル、IGCC技術に基づくプラントのリパワリングの全能力を含むように適用可能性を変更する。
  • MOPRの適用対象地域を、制約のあるLDAのみからRTO全体に広げる。

 

やっと、2回目のMOPRのルール変更のところまで辿り着きましたが、まだまだ先が長いので、今回はここまでとします。

おわり