Clare Bridge and a punt
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前回は、2013年5月2日、FERCが、MOPRに関する2回目の大きな変更を承認したところまでをご紹介しました。

MOPR適用対象は、当初から燃焼タービン(CT)とコンバインドサイクル(CC)の新設発電プラントに限られてはいなかったんですね。また、当初は出力規模に関する縛りもなかったので、例えば定格発電出力が10MWの大型コージェネも3年以内に運用開始までこぎつけられるならRPM容量市場への参加が可能だったと考えられます。

 

さて、今回は、その後のMOPRルール変更を見ていきたいと思いますが、FERC Online eLibraryを検索すると、案の定、5月2日のFERCオーダーに関してもIllinois Commerce Commissionはじめ7団体がFERCに再審議要求を提出しています。

※ これらに対して、(ずいぶん時間が経っていますが)2015年10月15日、「ORDER ON REHEARING AND COMPLIANCE」の中で、FERCは5つの再審議要求事項に関して、それぞれ理由を付して再審議を拒否しています。そこで、FERCに再審議要求を出していたNRG Power Marketing LLC、GenOn Energy Management LLC、P3(PJM発電事業者グループ)は、ワシントンDCの控訴裁判所にFERCの2013年5月及び2015年10月のオーダー内容が、FERCの権限を越えているとして訴えました。

時間を戻して2013年6月3日、PJMは5月2日のFERCオーダーに従って料金表(MOPR関連部分)を改定。以降も、FERC Online eLibraryを見る限り、2014年、2015年、2016年、2017年と、RPM制度に関して種々の見直しが行われているものの、MOPRに関しては変更なく容量市場が運用されてきたようです。

 

が、2017年7月7日、先のワシントンDCの控訴裁判所に控訴していた件で判決(No.15-1452)が下りました。判決内容を見ると、5月2日のFERCオーダーのタイトル「ORDER CONDITIONALLY ACCEPTING IN PART, AND REJECTING IN PART, PROPOSED TARIFF PROVISIONS, SUBJECT TO CONDITIONS」の後半「PROPOSED TARIFF PROVISIONS, SUBJECT TO CONDITIONS」が問題とされたようです。大筋は以下のような感じでした。

PJMが利害関係者のAdHOCグループと議論を重ねて出来上がったMOPR修正案の一部に関してFERCは独自の提案を行い、PJMはそれに従ってMOPRのルールを変更した。
これに対して複数の発電事業者からの訴状では、FERCの修正提案は連邦電力法第205条に基づくFERCの権限を超えていると主張しており、控訴裁判所はその主張を認めるものである。
よって、FERCオーダーが無効であるという主張を認め、本件に関してFERCで再審議を行うよう差戻しとする。

これを受けて、2017年10月23日、PJMは、「MOTION OF PJM INTERCONNECTION, L.L.C. FOR ORDER ON REMAND」で、控訴裁判所が「FERCの越権行為」と判断した箇所に関して考察を加え、その解決策として、2013年版MOPRのベースとなった2012年12月7日付けのPJMのMOPR改定案をそのまま採択することを提案。控訴裁判所に提訴していたOld Dominion Electric Cooperative、 P3、Calpine Corporation、Cogentrix Energy Power Management LLC、Dynegy Inc.、Eastern Generation LLC、American Municipal Power Inc. 、NRG、PSEG Companiesがそれに対する意見を公開しています。11月末までかけて、PJMが彼らの意見に回答した結果を踏まえて、2017年12月8日、FERCは「ORDER ON REMAND」を公開しています。

ところが、内容を見ると、「FERCとしても2012年12月7日付けのPJMのMOPR改定案を見直した結果、PJMの提案が正当かつ合理的でなかったがゆえに利害関係者からの反対が出たものであり、12月7日のPJMのMOPR改定案を全面却下することとした。ついては、30日以内にPJMは今回のFERCのオーダーを踏まえて料金表の改定を含むコンプライアンス申請書を提出すること」ということでした。

今度はPJMの提案を素直に認めるのかと思いきや、「お前のためにFERCオーダーにケチがつき、メンツがつぶされた。今度はしっかり検討して出し直せ!」という感じだったのでしょうか?ヤレヤレですねー。部下が関係各所と調整して作成した企画書に自分の判断でちょっと手を加えて社長に提出したところ、自分が手を加えた部分について酷評され、部下に企画書の作り直しを命じている部長といった光景が浮かんできました。

また、この12月8日のFERCオーダー自体に対しても2018年1月8日付けで再審議要求が出されていますが、2018年2月7日、FERCは「ORDER GRANTING REHEARINGS FOR FURTHER CONSIDERATION」を発行して、「30日ルール」によって再審理要求への幕引きを図っています。

少し時間を戻して、1月9日、PJMはFERCの顔を立てた形で料金表の改定案を提出しています。そして、2018年の容量市場オークションは、MOPRのルール変更を含め、この時点のルールで行われた模様です。

 

では、最終的に2013年版MOPRはどのような形に落ち着いたのか?

確認しておきたいのは、ワシントンDC控訴裁判所が、2013年のMOPRに関する2回目の変更に関するFERCオーダーに関して無効判決を下したことで、MOPRのルールが一気に2011年の第1回目の変更時点まで戻されたわけではなかったという点です。

詳細は見切れていないのですが、1月9日にPJMが提出した料金表改定には以下が含まれているようです。

  • 料金表第1項(MOPRの定義)、
  • 料金表別紙M-付録(PJMの独立市場監視部門IMMのMOPR審査規定)
  • 料金表別紙DD、第11項(PJMが定める一定の掲示要件)と第5.14項(h)(MOPR規定本体)の改訂

他に気づいた点として、MOPR適用対象電源からIGCCがなくなっていました。

ここで細かく列挙しても、オリジナルのMOPRにあった「サンセット条項」のように、2日も原文の翻訳の仕方に悩んでいたものが改定時にアッサリ削除されてしまうこともあるので、先に進みたいと思います。

 

こうして、2013年の第2回目のMOPRルール改定に関するワシントンDCの控訴裁判所の判決(No.15-1452)への対応は決着しましたが、またまたMOPRのルール変更が必要になってきます。2011年のMOPRルール変更は、州政府による容量確保のための新規電源への補助金支給が引き金になっていましたが、今回は、既存電源に対する補助金が引き金になったようです。

まだまだMOPR改定の話が続きそうなので、今回は、ここまでとします。

これまでのMOPR改定の流れ図「MOPR改定の経緯-その1」を作成しましたので、「紆余曲折」を画にかいたようなMOPR改定のここまでの経緯をご確認ください。

 

おわり