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前回は、2018年2月15日にオーダー841(162 FERC ¶ 61,127 18 CFR Part 35 [Docket Nos. RM16-23-000; AD16-20-000; Order No. 841)が発行されてからオーダー2222が発行されるまでの経緯と、FERCオーダー2222 Final Rule(最終規則)の内容について、その概要、目次構成、オーダーがRTO/ISOに求めている事項をご紹介しました。

なお、このオーダーの中で、「官報公表(Federal register)日から270日以内に、Final Ruleに基づいたCompliance Filingを行うよう」RTO/ISOに求めていましたので、2021年6月ごろまでRTO/ISOによるDERの市場参加に向けた詳細なルールはわからないものと思っていましたが、先日(2020年11月13日)Advanced Energy Economy (AEE)が、日本時間では早朝5時~6時、FERCオーダー2222に関するWebinarを開催され、聴講しました。今回はその内容を一部ご紹介します。


AEE Webinar: FERC Order No. 2222: Opening the Door to DERs in Wholesale Markets

1)Jeff Dennis:AEE Managing Director and General Counsel

FERCオーダー2222発行までの経緯

前回このブログでご紹介したように、オーダー2222発行までの経緯とともにオーダー2222の概要が説明されました。

  • これまでもRTO/ISOはBTM(Behind the meter)のDERをDR資源の延長として一部取り扱ってきたけれども、RTO/ISOごとに取り扱い範囲や参加できる市場に制限があった。オーダー841が電力貯蔵装置に関してRTO/ISOの運営するあらゆる市場に従来の電源と同等に参加できることを求めたように、オーダー2222は、DERがRTO/ISOの運営するあらゆる市場に従来の電源と同等に参加できることを求めたものである
  • DERとしては、配電網に接続される再エネから、BTMの太陽光パネル、蓄電池、蓄熱装置、省エネ機器やEV充電器やDR資源等が対象である
  • DERアグリゲータがそれらのDERを束ねてRTO/ISOの市場に参加できるように、既存の「participation model」の変更、あるいは新たな「participation model」を制定してCompliance Filingしなければならない
  • DERの物理的特性や運用特性に従った「Distribution factor」や入札パラメタを規定しなければならない
  • DERごとの個別計量の必要性などの要件を定めなければならない
  • 配電網下やBTMのDERがRTO/ISO市場に参入するに際して、RTO/ISO、DERアグリゲータ、DSO、州規制機関の間の調整を行わなければならない
  • 2021年7月19日までにCompliance Filingを行わなければならない

2)Kristin Swenson:MISO Senior Advisor, Market Development

以上のオーダー2222の説明に対して、北米のRTOとして、北はカナダの一部から南はテキサス州の一部までPJM以上に広大な地域をテリトリーとするMISOの、Compliance Filingを行わなければならない側からの課題が紹介されました。

  • アグリゲートするDERの範囲をどのように規定すればよいか
  • 複数の州どころか国をまたがった規制機関との調整が必要
  • 広大なテリトリー内の電力会社とDERアグリゲータがMISOの市場に提供するリソースに二重計上がないかどうか確認が困難
  • Compliance Filingに至るまでに、多分100~200回のStakeholder Meetingの開催が必要

Compliance Filingまでのスケジュール

3)Christopher Hargett:ConEdison Energy Policy & Regulatory Affairs

次に、NYISO管内の電力会社ConEdisonが、オーダー2222に関するUtilityサイドの役割と責任に関して説明がありました。
朝早かったこともあり、この辺りで一旦緊張が途切れてプレゼンの音声が右の耳から左の耳に直通状態だったのですが、こんな画面で説明が行われていました。

ユーティリティの役割と責任

なお、NYISOが予定通りCompliance Filingを行ったとしても、NYISOの全市場でDERを取り扱えるようになるのは、2022年第4四半期だろうということでした。また、NYISOとCAISOの市場が、他のRTO/ISOの市場より早くオーダー2222に基づいて市場をすべてのDERに開放できるようになるだろうとの見通しが示されていました。

4)Bruce Campbell:CPower Director of Regulatory Affairs

最後は、現在、ISONE、NYISO、PJM、MISO、ERCOT、CAISOの電力市場にDRアグリゲータとして参加しているCPowerが、消費者およびDERアグリゲータの立場からのオーダー2222にどのようなメリットがあるかの説明がありました。
こちらも詳細は割愛します。


「例えばPJMでは、オーダー841発行よりずっと以前からDRアグリゲータが一日前市場、アンシラリー市場、容量市場に参入してDR資源を提供してきましたし、PJM側もDR資源が参入しやすいように最低入札量をいち早く100kWにしたのに、今更なぜオーダー2222か?」 ― この疑問について自分自身の中で回答が見つからないままここまでFERCオーダー2222をご紹介してきましたが、今回AEEのWebinarを受けて思ったのは、

  • 米国では、DER市場参加ルールは、これまでRTO/ISO市場ごとに場当たり的に発展してきてFERCのコントロール下にあるRTO/ISO間で統一が取れていない。
  • 一方、欧州では、欧州委員会が2009年に採択した「第3次エネルギーパッケージ」に含まれる規制に基づき、欧州全域の市場統合および自由な電力取引の実現を目指して、欧州全域共通の系統要件である「欧州共通ネットワークコード」の策定が進められていて、配電網への接続に係る技術要件としてCENELECがEN 50549を定め、EU各国はこれをベースとして自国のグリッドコードを作成した
    例えば、ドイツでは、EN 50549に対応する規格として、
    VDE-AR-N4100:LV(低電圧)配電網への顧客設備の接続技術規定、
    VDE-AR-N4105:LV(低電圧)配電網への分散型発電プラントの接続技術規定、
    VDE-AR-N4110:MV(中電圧)配電網への顧客設備の接続技術規定
  • FERCオーダー2222は、欧州におけるEN 50549に相当し、FERC管轄下のRTO/ISOの市場に参入するDER向け標準的なグリッドコード策定を目論むものではないか

という印象を持ったのですが、如何でしょうか?
読者貴兄のご意見を賜れば幸いです。

今回は以上です。

 

終わり