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2022年10月のPJM予備力市場制度変更に関する調査の続きです。
前回、その2では、PJMの予備力市場制度変更が認められ10月1日から運用開始に至るまでの紆余曲折について紹介しました。その制度変更の内容に関しては途中経過を細かくご紹介しても・・・と思い、割愛しましたが、FERC eLibraryでDocket No. EL-19-58およびER19-1486のキーワードで検索すればご覧いただけますので、ご興味のお持ちの方は、そちらをご覧ください。
今回は、10月1日から運用開始された予備力市場の仕様を確認しようと思います。
さて、PJMマニュアルNo.11, 28, 29の変更点を翻訳して列挙することで、今回の予備力市場制度の変更点を示すことは簡単ですが、それだと今回の制度変更の全体像が分かりづらいので、いろいろ関連する資料を探してみました。
■予備力市場制度変更のアナウンス
まず、10月1日からの制度変更に関しては、PJMの9月21日のアナウンス「Reserve Price Formation – EMS Communication Element Changes」で、以下のように報じられています。
2022年10月1日より、PJM予備力市場制度に変更がある。変更点は以下の通り:
- Tier1とTier2の瞬動予備力(Synchronized Reserve)商品の統合(consolidation)、
- デイアヘッドとリアルタイムの予備力商品の調整(alignment)、
- リザーブサブゾーンの柔軟なモデル化など
- すべての変更は、FERCオーダーEL19-58000およびER19-1486-000に準拠したものである
- PJMは、既存のリザーブSCADAデータポイントの一部を再利用し、新しいデータポイントを作成する
- ただし、新制度での運用開始以降、当面は、従来通りMid-Atlantic/Dominion (MAD)サブゾーンのみとする
※ 今回の予備力市場制度変更に関して、PJMでは「Reserve Price Formation(RPF)と呼んでいます。
また、その1でご紹介しましたが、10月3日付けのPJM Inside Lines 「PJM Implements Reserve Price Formation Changes」で、制度変更の概要が紹介されています。
■ホームページの変更
PJMのホームページ「Ancillary Services」は、RPFに合わせて、
- PJMのアンシラリーサービス市場には、デイアヘッド市場とリアルタイム市場があり、
- どちらの市場でも、以下の3つの取引が商われる
- 瞬動予備力(Synchronized Reserve)
- 運用予備力(Non-Synchronized Reserve)
- 待機予備力(Secondary Reserve)
なお、リアルタイム市場では、この他に調整力(Regulation)の取引も行われる。
アンシラリーサービスに関する詳細はPJMラーニングセンターのアンシラリーサービス参照
とありましたが、2022年11月28日現在、ラーニングセンターのページの「Search the Learning Center」のkeywords欄に「ancillary service」を指定しても「Page Not Found」となるので、現在制度変更に合わせて更新中ではないかと思われます。
そして、その後に、従来はアンシラリーサービス市場の結果を公開するページへのリンクが1つだけあったのですが、従来 Ancillary Service Market Resultsとなっていたリンクが、「Real-Time Ancillary Service Market Results」と改名(とび先は同じですが、とんだ先で表示されるページタイトルも、「Ancillary Service Results」から、「Real-Time Ancillary Service Market Results」に変更になっています)されています。
また、デイアヘッドアンシラリーサービス市場での取引実績データがダウンロードできるページへのリンク「Day-Ahead Ancillary Service Market Results」が新たに設けられていました。
ところで、PJMのアンシラリーサービス市場への入札は人間が行うよりもコンピュータで行っている事業者も多いと思われますので、急に10月1日から制度変更すると知らされても、すぐには対応できません。そこで、「Reserve Price Formation」のキーワードでPJMのサイト内サーチをしたところ、PJMがFERCに最終的な仕様変更の「Compliance Filling」を行った2022年5月20日より1週間前の5月13日、「Reserves Price Formation Markets Gateway Education」の資料を用いて制度変更について関係者への説明会が開催されたようです。この資料によると、(その時点では、FERCが新制度での運用開始日をPJMの希望通り承認するかどうかわかりませんが)10月1日から新制度での運用を想定して、新制度での入札のトレーニング環境(Reserves Markets Gateway Train environment)を用意し、6月1日から画面インタフェースや入札者側の仕様変更した入札システムなどをテストできるようにしていたようです。
また、10月8日付けで「Frequently Asked Questions about Reserve Price Formation」が公開されていましたので、今回は、まず、このFAQから、PJMの予備力市場制度変更の外堀を埋めていこうと思います。
リザーブ・プライス・フォーメーション(RPF)に関するよくある質問
最終更新日 2022年10月7日
Q1:リザーブ・プライス・フォーメーション(RPF)とは何ですか。
A1:RPFの制度変更は、
(1) Tier1 と Tier2 の同期予備力(synchronized reserve)の統合、
(2) リアルタイム市場とデイ・アヘッド市場での、応動時間が10分位以内の予備力(10-minute reserve)と30分以内の予備力(30-minute reserve)調達の仕方に整合性を持たせる
(3) 単一サブゾーンに代わる柔軟なサブゾーンの追加使用
から構成されています。
Q2:RPFに関連したFERC Orderの現在の状況を教えてください。
A2:PJMは、2022年9月1日に最終承認を受け、2022年10月1日から新らしい制度に基づく予備力の市場調達が開始されます。詳細は、FERC Docket No.EL19-58-000、ER19-1486-000、EL19-58-012、EL19-58-014、EL19-58-015をご参照ください。
Q3:RPFの影響を受けるPJMアプリケーションは何ですか?
A3:Markets Gateway(入札システム)のユーザおよびXMLインターフェース、PJM側の1日前市場での瞬動(Synchronized)/運用(Non-Synchronized)/待機(Secondary)予備力の割り当て処理、各市場の約定結果を提供する「Data Miner」の処理、EMS側の待機予備力(Secondary Reserve)の割り当て処理、市場清算処理などです。
Q4:RPFの仕様とビジネスルールに関する追加情報はどこにありますか。
A4:RPFの情報は、M11セクション4に記載されています。また、エネルギー価格形成タスクフォース(EPSTF)は、RPFに関する様々な参考会議資料を提供しています。
- https://www.pjm.com/~/media/documents/manuals/m11.ashx
- https://www.pjm.com/-/media/committees-groups/committees/mrc/2022/20220921/item-01a—4-manual-11-reserve-price-formation-revisions—redline—friendly-amendment.ashx
- https://www.pjm.com/committees-and-groups/task-forces/epfstf (2019年会議メモ・資料参照)
- https://www.pjm.com/-/media/committees-groups/task-forces/srdtf/2021/20210430/20210430-item-04-reserve-market-price-formation-enhancements.ashx
Q5:Market Gateway の詳細な変更点はどこで確認できますか?
A5:変更点の詳細なリストは、以下の参照先の Markets Gateway Tools ウェブサイトの「Reserves Documentation」の見出しにある「Markets Gateway Reserves Changes」という文書に記載されています。
https://www.pjm.com/markets-and-operations/etools/markets-gateway.aspx
Q6:RPFで、瞬動予備力のTier1とTier2が単一の瞬動予備力として統合された場合、エネルギー貯蔵資源(Energy Storage Resources:ESR)や水力発電でTier2にオファーしていたユニットは、どのようにして予備力を提供するのでしょうか?
A6:RPFでは、瞬動予備力(SR)市場のクリアリングにエネルギー市場のオファーを利用します。水力発電やESRは、エネルギー市場にオファーを出してください。エネルギーオファーが提出された中で、瞬動予備力を提供する資格がある資源は、瞬動予備力市場にオファーされたものとみなされます。流れ込み式水力発電のように“non-dispatchable”として提供された水力発電設備では、予備力専用のオファーパラメータ(稼働率、オファー MW、オファー価格)を提出しても、瞬動予備力には割り当てられません。
Q7:RPFでの運用が開始された後も、トレーニング環境(Reserves Markets Gateway Train environment)は使えるでしょうか?
A7:新制度での運用を開始してReservesが本番稼動した後、1カ月以内(2022年11月1日まで)に廃止される予定です。
Q8:予備力市場取引に参加する予定がない場合も、新制度移行への影響はありますか?
A8:いくつかの入出力フィールドの変更や、フィールド/画面自体の削除、および、既存画面へのフィールドの追加があるため、RPFの影響を受ける可能性があります。Q5でご紹介した「Markets Gateway Reserve Changes」資料をよくお読みください。最も顕著な変更点の一つは、日付の選択位置が画面の右上に移動したことです。
Q9:リアルタイム市場の運用予備力への報酬(Real Time Non-Synchronized Reserve Awards)のページが表示されなくなったのはなぜですか?
A9:Markets Gatewayは、1時間前ASOエンジン(hour-ahead ASO engine)で30分以上前にコミットされたリアルタイムでの予備力報酬(RT reserve award)のみを表示し、これには調整余力のない瞬動予備力(Synchronized Reserves)と柔軟性のない待機予備力(Secondary Reserves)が含まれます。運用予備力(Non-Synchronized Reserves)、調整余力のある瞬動予備力(Synchronized Reserves)や待機予備力(Secondary Reserves)はRTSCEDエンジンでコミットされ、それらのMWコミットは検針/ICCPと、Markets Gatewayの「Dispatch Lamba」ページで、通常5分ごとに通知されます。
Q10:会員向けの新しいICCPポイントの変更点は何ですか?
※ 質問に対する回答が細かすぎるので、回答部分の翻訳省略
Q11:予備電源の Eco Max と異なる Synch Max 値を提出する資格を、自分のユニットに与えるにはどうしたらよいですか?
※ 質問に対する回答が細かすぎるので、回答部分の翻訳省略
Q12:サブゾーンの追加情報はどこに掲載されるのですか?
A12:Markets Gatewayのパブリックセクションに新しい画面が設けられ、アクティブなサブゾーンがリアルタイムで表示されます。さらに、新しいData Minerフィードがそれぞれのサブゾーンに関連するpnodeを表示します。
フレキシブルリザーブサブゾーンを使用する機能は、RPFの主な変更点の1つです。フレキシブルリザーブサブゾーンは、マニュアル11に定義された基準に基づいて、PJMが複数のリザーブサブゾーンを事前に定義できるようにするものです。一度にアクティブにできるリザーブサブゾーンは1つだけです。
<途中省略>
サブゾーンの切り替えやリソースマッピングは、すべてMarkets Gatewayを介して伝達されます。
中部大西洋/ドミニオン(MAD)サブゾーンはデフォルトのサブゾーンとなり、2022年10月1日の以降、数カ月間使用される唯一のサブゾーンとなる予定です。
<以下省略>
Q13:”Tier2 SR”の新しい名称は?清算プロセスの “Tier2 SR”のタイムラインは変更されますか?
A13:これまで”Tier2 SR”と呼ばれていたものは、リアルタイム瞬動予備力(Real-Time Synchronous Reserves)に名称変更されます。清算に関するタイムスケジュールは、これまでの “Tier2 SR”のクリアリングプロセスと変わりません。現在のクリアリング・プロセスについては、Q9を参照してください。
Q14:デイアヘッドの瞬動予備力(Synchronous Reserve)、運用予備力(Non-Synchronous Reserve)、待機予備力(Secondary Reserve)は、1日前市場で清算価格を持つのでしょうか? その場合、これらの価格はどこで公表されるのですか?
A14:清算価格は、新しいData Miner 2フィード、Day-Ahead Ancillary Service LMPs、Markets Gatewayに掲載される予定です。詳細は、Q5をご参照ください。
Q15:10月1日の本稼働に向けて、いつからオファーが出せるようになりますか。
A15:10月1日の新予備力市場の稼動日の7日前からオファーを提出することができます。したがって、10月1日のオファーは9月24日の深夜から提出できます。さらに、(9/24以降)Markets Gatewayで10/1 Market Dateを選択すると、新しいリザーブマーケットに関連する新しい変更と画面が表示されます。Markets Gatewayで選択された日付が10/1より前であれば、現行/レガシーの画面が表示されたままです。
Q16:VACAR Reserve Sharing Agreementはいつ終了するのですか?
※ 質問に対する回答が細かすぎるので、回答部分の翻訳省略
Q17:Intelligent Reserve Deployment(IRD)は、RPFの本番前に承認されたのか?
※ 質問に対する回答が細かすぎるので、回答部分の翻訳省略
Q18:Data minerでのアンシラリー製品の正しい呼称は何ですか?
A18:
Dataminer |
Abbreviation |
Description |
Primary Reserve |
NSRMCP |
Non-Synchronized Reserve Market Clearing Price |
Synchronized Reserve |
SRMCP |
Synchronized Reserve Market Clearing Price |
Thirty Minutes Reserve |
SecRMCP |
Secondary Reserve Market Clearing Price |
Q19:PJMから予備力イベントが呼び出されると、”100% Synchronized Reserve Event has been initiated by PJM RTO region “というメッセージが表示されるようになりました。この通知は、10分間の商品(同期および非同期)の両方が応答すべきことを示しているのでしょうか、それとも、非同期商品が必要な場合は、別のメッセージが送信されるのでしょうか? PJM が二次予備力(10分以上30分未満)を配備する必要がある場合、補足メッセージが送信されるでしょうか。
A19:PJM が予備イベントを発令すると、音声による一斉通報では、利用可能なすべてのリソースに対して配備が必要な予備力について、具体的に説明されます。
以上、今回は、RPFに関するQ&A部分をご紹介しました。次回は、いよいよ、それぞれの予備力市場制度変更点を見ていきたいと思います。
終わり
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- PJM, アンシラリーサービス市場, 予備力市場
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