Lowther Hill
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今年初めての投稿です。少々遅いご挨拶になってしまいますが、本年も当ブログをどうぞよろしくお願いします。

ここ数年ブログの更新が滞りがちですが、昨年を振り返ると、PJMのPRD (Price responsive Demand)の(再)紹介に始まり、ビッグデータ、AIおよびデジタル・ツインといった第四次産業革命の道具立てがいよいよエネルギー業界に浸透してきたこと、および、2017年6月末に公開されたPJMのペーパー「Demand Response Strategy」をご紹介した後、当ブログとしては特集「DRはどこへ向かうのか?」シリーズの第2弾として、PJMのケース、カリフォルニア州のケースを取り上げました。また、その中で、米国の エネルギービジネスにCCA (Community Choice Aggregation)という新たなステークホルダが登場したことをお知らせしましたが、夏以降現業が忙しくなり、VGI(Vehicle Grid Integration)のご紹介を中途半端にしているうちに年明けとなってしまいました。

なお、その間に、一度、日経新聞の記事「だれでも電気売買できる時代来る みんな電力取締役」について、彼らのやりたかったこと(電源の発電量を需要家の使用量に振り分ける)を実現するために果たしてブロックチェーンを使う必要があったのか?と問題提起させていただきました。昨年初めまで、ブロックチェーンは、どうやら自分が注目しているトランザクティブ・エネルギーの実装の片棒を担ぐ重要な技術になりそうだと考え、時間が取れない中、アンテナだけは張り巡らせていたのですが、Satoshi Nakamoto氏が標榜するパブリックブロックチェーンの仮想通貨BitCoinが通貨として流通するのではなく投機対象にしかなっていない現実を目の当たりにし、その中でPoW(Proof of Work)に費やされる膨大なコンピューティングパワーは、コンピュータに魅入られてITビジネスの世界に入った自分としては、「コンピューティングパワーの無駄遣い」ひいては「電気代の浪費」としか考えられないこと。かといって、プライベートブロックチェーンは、BitCoinが目指したブロックチェーンの「角を矯めて牛を殺す」行為そのものにしか見えないこともあって、ブロックチェーンをどう評価して良いものやら、完全に思考停止してしまいました。

今年こそは、ブロックチェーンに対して自分なりの評価を下したいとは思っているのですが、何分、どんどんブログ更新のための仕込みの時間が取れない中でどこまでできるか自信はありません。

気を取り直して、とりあえず、今年もPJMの話題から取り上げてみたいと思います。

PJMは2017年1月に公開した「Implementation and Rationale for PJM’s Conditional Neutrality Regulation Signals」で、応答速度の早い電源用の起動指令(RegD signal)のルール変更を発表しています。これに対して、エネルギー貯蔵装置メーカーの団体であるエネルギー貯蔵協会(Energy Storage Association:ESA)は、連邦エネルギー規制委員会(FERC)に苦情の申し立てを行っています。

まずは、その辺りの状況を、2017年4月20日付けのUtility Diveの記事「Storage companies file FERC complaint against PJM regulation market rules」で確認しておきましょう。


エネルギー貯蔵企業、FERCにPJM周波数調整市場制度に関する苦情を申し立て

DIVE Brief:

エネルギー貯蔵協会(ESA)は、周波数制御に関するPJMのRegD信号の規則変更に関して、連邦エネルギー規制委員会に以下の通り苦情を申し立てた。

・PJMのRegD信号の規則変更は、FERCのレビュー・承認なしに行われたもので、FERCの先例に反している。

・FERCは、RegD信号の規則を元に戻し、今後とも周波数応答処理方法の変更を行なう場合はあらかじめFERCに申請するようPJMに要求することを求める。

DIVE Insight:

PJMは2011年発行されたFERCオーダー755に従って、エネルギー貯蔵企業に周波数調整市場の門戸を開放した最初の系統運用者だが、その結果、PJMの周波数調整市場参入を目的としたエネルギー貯蔵プロジェクトが急増し、応答速度の早い電源用の起動指令(RegDシグナル)に従うリソースと、従来の発電機のような応答速度の遅い電源用の起動指令(RegAシグナル)に従うリソースのバランスが崩れ、周波数調整の運用上の問題が顕著になってきた。

そこで、PJMは周波数調整市場制度に2つの変更を加えた。1つは 2015年にRegDリソースの量の上限を定めたこと、もう1つは2017年1月に、エネルギーの中立性を維持するためのReg Dシグナルに対する制約を取り除いたことである。

#この2番目の変更が、冒頭で触れた「Implementation and Rationale for PJM’s Conditional Neutrality Regulation Signals」です。

ESAの主張は:

  • これらの変更によりPJMは応答速度の遅い電源により多く依存するようになってしまった。
  • 2017年1月のルール変更で、ESAのメンバーは、PJMからのRegD信号をフォローするためにほぼ毎日釘付けになっている。
  • 今回の変更は、FERCオーダー755を実現すべく作成された、RegD信号に追随するエネルギー制限のある資源の運用上の特徴を無視したものである。
  • PJMは、これらの制度変更に伴に、RegDリソース提供者への対価の改定を一切行わなかったが、ESAとしては承服しがたい。
  • PJMは、この周波数調整市場制度変更に際してFERCの承認を受けるべきである。

以上が、Utility Diveの記事のご紹介ですが、この内容を理解するためには、PJMがRegDシグナルを設計した時の「Energy Neutrality」とはどのようなものだったのか?それが2017年1月の制度変更でどのように変更されたのか?を知る必要があります。

そこで、次回から、(多分何回かに分けて)「Implementation and Rationale for PJM’s Conditional Neutrality Regulation Signals」の内容をご紹介したいと思います。

今回は以上ですが、本年もご愛読のほど、よろしくお願いいたします。

おわり